任務のために、大きい街にやってきた。
 こういうところは何処にアクマがいるか解んないから要注意よね。
 なんて言ってるそばから、なにやってんだろ。





Gentleman -紳士-






 なるべく人が多いところには行かないようにしてる。
 これはラビの受け売り。
 私一人で十分な任務なのに、何故かラビが隣に居たりする。


「・・・ねぇ、大丈夫だから帰っていいよ?」
「いや、は絶対迷う!」
「うっ゛・・・」
 まぁ私は確かにフラフラいろんなところに行きたがる。
 前科はいっぱいあるけど任務だけはこなすってば。
 ・・・ま、そう言ってもラビのことだから付いてくるんだろうなぁ。
 だから私はこれ以上言わなかった。



 この街の中にたくさんのアクマがいるという情報を受け、私たちはやってきた。
 アクマがたくさんということは、イノセンスが何処かにあるのかもしれない。
 ・・・だけど、ラビの“とてもよく当たる予感”では
「此処にはねェと思うけどさぁ?」って言ってた。



 大通りじゃないにしても、やっぱり大きな街。
 細い道でも人が溢れかえってる。

 気をつけながら歩いていたんだけど、ドンッと誰かにぶつかってしまった。

「わぅっ!」


 ぶつかった相手は、とてもスーツが似合うおじさん。



「わっ、ごめんね。大丈夫だったかい?お嬢さん」
 よろけた私をラビよりも早く支えてくれた。
「あ、有難うございます」
「どういたしまして。じゃあ気をつけたまえよ」

 とても紳士なおじさんは、笑顔で去っていった。




「ダイジョブか?」
 そう訊くラビじゃなく、私はおじさんの後姿を見ていた。

「いい!紳士な人ってかっこいいよね〜♪」
「・・・は?」
 ラビも私と同じ方向を向いた。
「・・・ってあんなのがタイプなんだ?」
「いや、タイプじゃないけどかっこいいじゃない。凛々しいし」


 ふーん、って言っただけ。
 ラビってなんか抜けてるわ。

「紳士の何処がいいんさぁ?」
「えー?」

 何処だろう??
 雰囲気がかっこいいというか・・・あ、そうだ!
 自信たっぷりに私は言った。


「こけそうな私を支えてくれたじゃない!護ってくれた時に女の子はドキッとするもんよ!」
「ほー」


 ラビはもう一度紳士が通っていった方を見た。

「案外、あんなのがアクマだったりするんだけどさ」
「へ?」
 そんなわけないじゃない、と振り返ったときだった。



 あれ?さっきの紳士なおじさんがあんなところにいる。
 こっちを向いて笑顔だ、なんて思った私は気付かなかった。

「へ?」
 その紳士の身体がグニャッと曲がってそこが銃器に・・・・・・って、アクマ!?
 油断してた私は鎌を発動させることが出来なかった。



 ドドドドドドッと撃つ音が聞こえたから、どっちみち遅かった。



!!」
「わぁっ!!」
 ラビが咄嗟に私の腰を掴んで、片手で槌を回して銃弾を弾いた。
 少しドキッとしてしまった。・・・私としたことが。


 サッと物陰に隠れたラビは、そこで手を離す。

「なにやってんだよ、
「ご、ごめん・・・」

 すぐさまルナをリリースさせる。

「ありがと、ラビ」
「どういたしまして」
 それより、とラビは微笑んだ。

、さっきドキッとした?」
「へっ!?な、なんで!?」
 “なんで解ったの!?”って意味だけどラビは“なんでドキッとするの!?”って捉えたみたい。

「護ってくれた時に女の子はドキッとするんだろー?」

 うっ・・・言いました。
 仕方ないなぁ。護って貰ったしね。

 私は微笑んで言ってあげた。


「うん、ドキッとした!」

 その後、大鎌を握りなおして私は先に通りに戻った。

 少し経ってラビも普通に槌を振り回してたけど、言った後はドキッとしたかな?



 どっちみち、私は本当のことを言っただけだけどね。



 紳士って言っても形だけだね。
 私の中の紳士はラビになっちゃったなぁ。