「坂田先生、実はですね・・・」
 朝。
 珍しく早く来た銀八先生は教頭先生に呼ばれた。
 言いにくそうに話した教頭先生に、銀八先生は言う。





うちの生徒が万引きしたんじゃないかって?わかりました、適当に犯人見繕っときます。





「ねぇねぇ聞いて〜!」
 席が近い沖田くんに叫んだ。
 ・・・といっても、みんなに聴こえたみたいだけど。
「私ね、扇子買ったの〜〜!!」
 ザッと広げたのは少し大きめの扇子。
 黒の柄に白・赤で彩られてて、左右に綺麗な飾りもついてるお気に入り!
「綺麗だねィ」
「でしょ!?さすが沖田くん、わかるなぁ〜!!」

 フフフ・・・昨日
3000円も出して買ったもんね!!
 これで銀八先生に印象付けてやるのだ!!

「で、なんでこの時期に扇子なの?」
 お妙ちゃんが不思議そうに聞いてきた。
 本当は、先生に印象付けるためなんだけど・・・
「先取りしなくちゃね♪」
「いや、何ヶ月先取りしてるんだ!?」
「土方くんにはわからないよ」
ちゃん!俺にはわかるぞ!!」
ハイハイストーカーは引っ込んでな。テメェだけが空気変えんだよォ。
「・・・さんキャラ変わってるよ」
 お妙ちゃんの弟・新八くんのツッコミでこの話は幕を閉じた。
 なぜならチャイムが鳴って先生が入ってきたんだもん。


「はいはい座れー」
 ガタガタと座り、私も扇子をポケットに入れた。
 はぁ〜・・・今日もかっこいいなぁ先生。
 天然パーマに伊達メガネ、だらしない服装に白衣に煙草・・・
要は、ダメ人間なところが♪
 以前お妙ちゃんと神楽ちゃんに言ってみたら、
、お前
B専アルか?」
B専って?」
「ブサイク専門よ。私は
生理的に受け付けないわ
「二人とも酷くない?それ・・・」
 でも私はそんな先生が好きなんだってば。



「えー、まぁそんなところだ。」
 ・・・あ、ホームルームの内容聞いてなかった。
「この後なんの授業?」
「数学です」
 新八くんの言葉に、頭をボリボリかきながら先生は
「あーそう。じゃあ程々にサボれよー
 なんて言いながら出て行った。

 サボれって・・・教師がそんなこと推奨していいのかなぁ??
 なんて思ってたときだった。
「忘れてた。ーちょっと職員室来い。」
「へ?はーい」
 なんだろ?
 教材でも運ばされるのかな?
 なんて安易な考えで向かった私は、後に仰天してしまうのだった。


「実はなぁ、
 授業とかで全員出払ってる職員室のなか、私と銀八先生だけが居た。
 ・・・つか、全員出払うのは変だ・・・なにかあるのかな??
「うちの生徒の誰かが万引きをしたらしいんだよ」
「はぁ」
「それでな、をその生徒にしたいんだよ、先生」
「はぁ」

 ・・・ん?

「はァァァァッ!?なに言ってんの先生!?」

 イヤイヤ私万引きなんてしてないし、
第一したこともないわよ!!!

「無理!!私やってないし!!」
「しかしなぁ、俺はが適任だと思うんだ」


 ・・・酷くない?それ。

「先生、私には犯罪者が適任なの?」
 見損なったわ。
 今までかっこいいとか言わなきゃよかった。

「お、オイ!泣くなよ〜」

 泣きたくもなるっつの!
 ボロボロ涙を流す私を見て、銀八先生は途端にオロオロしだした。

 普段の私ならそのオロオロした先生をみて「可愛い」だの「変なの」だの感情があっただろう。
 だけどそんなこと思えないじゃない。
「な?別に逮捕とかも無いし。俺が注意するだけで終わりなんだ」
「・・・最低だよ先生っ!」
 私が万引きするような人間に見えてたんだ、先生は。



「ちょっ、勘違いしてないデスカ?」
「はぁ!?何がよぉっ!!!」

 泣きながらも怒りはあったから口調もきつくなる。

、よく聞けって!!」
 掴まれた腕を振り解こうと、思いっきり左右に振ってやった。
 ・・・だけど、解けない。

「先生なんか、大っ嫌い!!!」
「・・・お前、それ本気で言ってんの?」

 ぎゅっときつく握られる。
 痛くて、銀八先生のほうを向いたら・・・真剣な表情をしていた。

 本気で言ってるわけ無いじゃん。
 私は先生が好きなんだから。
 そんなことで嫌いになれるわけ無いじゃん。

 真剣な表情をしていた先生は、ハァ〜〜とため息をついて、


「俺がな、を適任だと思ったのは・・・」
「・・・・・・なんですか」

 ちょっと躊躇ってた先生は、グイッと私を引っ張って
「ひゃっ・・・」
 ポスッと音がして、私はすっぽり先生の胸の中に。

 ・・・え?え?
 だらしないネクタイが近く見えて、私は頭の上に“?”が浮かんでたと思う。

「万が一将来に傷がついても、俺が嫁に貰ってやれるからなって意味」
 ・・・それって・・・


 先生を見ると、普通のダルそうな表情に戻ってた。


「・・・先生、プロポーズみたいだよ・・・」
「おォ?すっとばかしたか??俺。」

 ケラケラと笑って、先生は袖を私の涙を拭いた。

「俺さァ、実はのこと生徒以上にしか見えねェのよ」
 教師失格だよなーなんて言ってるけど、私には笑えない。

「・・・・・・それって・・・」


 期待していいの?
 その言葉は飲み込まれた。
 だって先生が口を開いたんだもん。

「別に言うつもりじゃなかったんだけど、も俺のこと好きだろ」
「・・・・・・へっ!?」
 何で知ってるの!?
 そういうと先生は呆れて言った。
「お前、バレバレだぞ。隠してたのか、アレ」

 ・・・確かに話してる時はめっちゃ顔が綻んでたりした。
 でも先生も私に恋してたのを知ったら、すっごい恥ずかしくなった。


「・・・だけど、は適任じゃねぇわ、やっぱ」
 先生は私の頭を撫でながら言ってくれた。
「泣かせたらダメだよなー」

 その言葉が、とても嬉しかった。
 やっぱり先生大好き。かっこいい!




「・・・で、先生。誰にするの?」
「あーもうこの際誰でもいいや。
多串くんとかぴったりじゃん?
「あはは・・・」

 土方くんを哀れに思ったのは黙っておこう。

「そうだ先生、見て!この扇子♪」
「んー?」
 ポケットから出した扇子を見た先生は、一言。
・・・やっぱがやったのか?万引き
「何でですかっ!!!」


 やっぱ先生には痛い目を見てもらいたい!!

 そう思った私を先生はしらない・・・。