ねぇ、嫉妬しないでよ。
私が笑いかけてるのはブラウン管の先の見知らぬ人々にだから。
いいでしょ?
初めてだから、緊張をほぐしたいの。
生放送中にこれは・・・
「えぇっ!?私が!?」
私の声はソファで寝てる銀ちゃんにも、台所に居る新八くんにも、押入れの中の神楽ちゃんにも聞こえた。
「うぅ・・・生放送でしょ?上手く出来るかなぁ・・・そう??」
銀ちゃんたちは一箇所に集まって怪訝がってこっちを見てる。
だけど、動揺してる私に反応する余地はなかった。
電話からの声に精一杯なんだよね・・・。
「う〜ん・・・わかった、やるわ。うん・・・明日12時ね」
日時も決まって、やっと私は受話器を置いた。
「・・・何?」
出来るだけ笑顔で言ってみたけど、それが逆に怪訝がっちゃった。
「な、何アルか?銀ちゃん!」
「ぇあっ!?何で俺に振るんだよ!なぁ新八!!」
「銀さん何でしたっけ?」
「お前までもかァァァ!!!」
なに叫んでんだか。
「で、銀ちゃん何なの?」
汗をダラダラさせてたけど、時期に銀ちゃんは口を開いた。
「だ、誰だったんだ?」
両隣では素晴らしい話の展開(?)に二人は驚いてる。
「お通ちゃんよ」
「お通ちゃんだとォォォォオオオ?!!」
新八くんの声がかき消した・・・ったく。
「さんなんで!!???」
「絡まれてた子を助けたら、その子がお通ちゃんだったって事」
「なんだとコラ!!テメェ僕に言え」ガァァン!!
素早く投げられた扇子を避けなかった新八くんは、床に沈んだ。
「ったく、アンタにテメェ呼ばわりされるつもりはねぇよ」
「サン怖いッス・・・」
神楽ちゃんと銀ちゃんは少し吃驚してるみたい・・・まぁ、新八くんのせいよ。
話を全て要訳すれば、お通ちゃんから『出演依頼』の電話が来たの。
お通ちゃんは今、彼女が司会の冠番組を持ってるみたいで、それに私に出て欲しいって事ね。
まぁ一般人じゃない私だし、生放送だから怖いけど・・・お通ちゃんのために了解したのよ。
「で、翌日がその本番」
新八くん以外の二人は目を見開いていた。
「お天気お姉さんに会えるかも知れねぇぞ!!」
「渡リン待ってろヨ〜〜!!!!」
・・・二人とも、会えませんって(汗)
兎に角、明日が本番・・・気合入れなきゃ!!
「無理!!無理無理やっぱダメ!!!」
「、頑張るネ」
「やだ!!絶対失敗するって!!」
「ったく煩せェなぁ!当たって砕けろ!!」
「無理よ銀ちゃん!!だって私作家として初めて出るんだもん!!!」
・・・そして翌日。
テレビ局のセットをみて、やっぱり怖気づいた私は喚いていた。
「大丈夫よちゃん!私もいるし」
「でも・・・」
お通ちゃんも頑張って勇気付けてくれてるんだもんね・・・隣で目をハートにしてるやつが居るけど。
「さん!!お通ちゃんとテレビに出るだけでもいいじゃないですか!」
「励ましになってないから・・・」
新八くん、とりあえず目のハートを元に戻してよ。
緊張したまま、私は本番を迎えてしまった。
銀ちゃんと神楽ちゃんが見守る中、私はお通ちゃんの質問に答える。(新八くんはお通ちゃんを見てた)
「今日のゲストは、なんとあの天才作家で名を轟かせてる ちゃん!!」
「こ、こんにちわ〜!」
「緊張してるねぇちゃん。まぁ30分頑張りましょう!」
「・・・うん!」
最初は緊張してたけど、お通ちゃんのおかげで徐々に笑えるようになって来た。
お通ちゃん、『この年で天才作家』って連呼するのやめて・・・恥ずかしい!!
「、頑張ってるアルね」
モニターを見てた神楽ちゃんは銀ちゃんと新八くんにそう言った。
「お通ちゃん可愛い〜・・・」
「お前は特にを見るアル」
新八くん、神楽ちゃんの言うとおりよ!!
「・・・銀ちゃん?どうしたネ?」
ただ一人黙々と私の笑顔を見ていた銀ちゃんは、「なんでもねェ」とだけ返していた。
「私もちゃんの小説を愛読してるんだけど、ちゃん恋愛系が少ないよねー」
「そうかなぁ??でも、読んでくれてるんだ!有難う〜!!」
いつも新刊が出たらお通ちゃんにあげてたんだ!
だけど本当に読んでもらってたら、とても嬉しいなぁ〜♪
「でも、本当に少ないよ〜。ねぇ今度私をモデルにしたのを書いて!!」
あ〜なるほど、アイドルと一般人の恋かぁ!!
お通ちゃんに事情も訊けるし、一石二鳥ってもんよ!!(何がかはわかんないけど)
「じゃあ書こうかな!!・・・多分コレ見てた担当さんから、終わって即電話がかかってきそうだし」
「あははっ!!」
笑い合ったところで、一旦CM。
ふぁ〜・・・疲れたよホント・・・
「〜お疲れ〜」
珍しく神楽ちゃんが頭を撫でてくれる。
ホント疲れた・・・その隣ではお通ちゃんが笑ってた。
「ちゃん良かったよ。途中から緊張がほぐれてたし!」
「ホントぉ〜?そう言ってくれたら嬉しいよ・・・」
へとへとになってたときに見た銀ちゃんの顔。
ん〜?なんか変な表情してる。
「・・・銀ちゃん??おーい銀時どーした!」
「・・・おまっ!普段そんな呼び方しねぇだろ!?」
返事が普通・・・つか、さっきの間はなんだったの?
「銀ちゃんどーだった??」
銀ちゃんは少し黙って、「笑顔がなぁ〜」なんて言った。
え゛っ!!笑顔が引きつってたかな?
「もっと自然に笑った方がいいのかな!?」
に〜っと笑ってみても、にこーっと笑ってみても、銀ちゃんは真剣な表情を崩さない。
「・・・俺以外に向けるかァ?普通。」
「・・・はぁ?」
この人何言ってんの?
なんて思ったその時、掛け声とともにカメラが回り始めた。
休憩中の風景も写すんだって。
「銀ちゃん、それどういうこと・・・?」
私のところに来たのを見た銀ちゃんは、グイッと腕を引っ張った。
「ちょっ、何・・・!!!」
突如写ったのは、銀ちゃんのどアップ。
「・・・・・・っ・・・」
やだ・・・キスされてる!?(しかも舌入ってるよバカー!!!!)
ブラウン管からは、私と銀ちゃんのキスする姿が流れ・・・
「ぅわ・・・」
「・・・銀ちゃん、後でシメるヨロシ。」
お通ちゃんはウザく寄ってくる新八くんを退けながら、神楽ちゃんは傘を構えて見ていた。
「・・・・・・っ、〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
息できない!!!
バンバンと思いっきり胸を叩くと、ようやく離れてくれた。
「ちょっ、何、すんの!!!」
「何って、は俺のモンだって知らした」
カメラはまだ私たちの方を見ていた。
あ〜〜〜もう恥ずかしい!!!
初テレビなのに・・・もう死にたい・・・ちょっと、止めてよテレビ!!!
「・・・見やした?土方さん。」
「・・・あァ・・・アイツ、後で斬る。」
「俺はさんに消毒のキスを「心配するな、お前も斬るから」
真選組でも、銀ちゃんとのキスを見られていたとは、知ることも無かった私だった・・・。