「あ、土方さんだ」
買い物した先で出会ったのは、真選組副長の土方さん。
隊服じゃないところを見たら、非番なのかな。
こんなお客さん困ります
「土方さーん!!!」
叫ぶと本人も気付いたのか振り向いてくれた。
駆けて行きたい気持ちもあったけど、荷物が多すぎてそれは無理。
銀ちゃんも新八くんも神楽ちゃんも、人使いが荒いんだもん。
持てないってこんなに!!(両肘に袋をぶら下げて、大きな紙袋を二つ持ってる)
「おい、大丈夫か?」
ゆっくり落とさないように近づくと土方さんのほうが速かったのか、紙袋を持ってくれた。
「あはは・・・」
「笑い事じゃねぇだろ。一瞬誰かわからなかったぞ?」
「うそ!?愛の力とかでわかってくださいよ!」
「ありえねぇな」
「えっ゛!!!」
一応、私たちは付き合ってるってものよ。
なのに酷すぎない!?土方さん!!
「とりあえず持ってください〜・・・」
「ったく、何でおれが・・・」
なんて言いながらも、土方さんは優しいから荷物を全部持ってくれた。
「オイ、これはおれでもキツイぞ!!」
「えぇ〜男の人の意地を見せてくれないんですか?」
「そんなもんねぇよ!!ちょっ、お前も持てよ!!つかテメェの荷物だろうがよォ!!」
土方さんの突っ込みも聞かず、私は大通りに出た。
「そだっ!タクシー呼びますね!」
「・・・そうだな、それのほうがマシだ」
土方さんの了承も得たことだし、奢らせるか!
私は道行く中にタクシーを見つけ、手を振ってみた。
「あ、止まった」
「助かった・・・」
運良く止まったタクシーは、親切にドアを開けてくれた。
それに乗り込んだ私と土方さんは、運転手に行き先を告げた。
「真選組屯所まで」
「あいよォ」
黒いグラサンをかけたおじさんはエンジンをかけなおし、いざ、出発!!
まさか、この後土方さんを揺るがす大事件が起こったなんて・・・私も考えてなかった。
「はぁ〜手がいてぇ・・・」
ブンブン振りながら、土方さんは私を睨んだ。
「、お前が半分持てば良かったんじゃねぇのか?」
「さぁ〜。つか、レディに荷物を持たせるなんて男の風上にも置けませんよ」
「レディって誰のことだ?」
「私じゃないですか」
「ハッ、ありえねぇな」
「ひどっ!!!!」
すると、此処でもう一つ声が増えた。
「オイオイ、お嬢ちゃんはちゃんとしたレディじゃねぇか」
運転手さんだ。
でしょ!?やっぱりそう思うよね!?
「そうでしょ!?土方さん聞きました!?」
「あ〜煙草吸いてぇ。禁煙車か?」
「禁煙車です!!!」
運転手さんが答えるよりも前に私が答えてやった。
なんか今日の土方さんムカつく!!
「ところでお嬢さんよ、あんた別嬪だね〜」
お、運転手さんもいいこと言うじゃない!
だけど此処で私は「そうですかねぇ?」と言っておくのよ。
なぜって?ここで認めたら自意識過剰だと思われちゃうじゃない。
「おまっ、いつもは肯定してるだろ!?なに猫かぶってんだ!?」
ムカッ!!
土方さん・・・言っていいことと悪いことがあります。
「最低。カマイタチ食らわせてやりたいですね」
でも土方さんは余裕の表情で煙草を吸い始めた。
「禁煙車ですよ」
「誰にも迷惑かけてねぇぞ」
「私にかかってます」
「んだとコラ。斬るぞ?」
「土方さん、私が戦闘種族だって分かってます?」
私たちはとても恐ろしい会話をしてる。
だけど運転手さんは気にも留めず、「おたくら仲良いね」なんて微笑ましく思ってたりして。
「・・・あ」
ふと、窓から見えたのは隊服姿の山崎くん。
巡廻中なのかな?・・・決めた!
「運転手さん、ちょっと止めてください!」
「はぁっ!?」
隣の土方さんは唖然として私の方を見た。
それはもう、瞳孔は開ききってて驚いてるようにとれる。
ドアを開け、一言。
「じゃ、私は山崎くんと巡廻してきまーす!土方さん、あとよろしくお願いします♪」
「!?オイ、ちょっ待・・・て・・・」
土方さんの言葉なんか聞かないで、バタンと閉めてやったドア。
私をなんだと思ってるのかしら。
恋人じゃないみたい!あーもう最低!!
「さて、山崎くんと巡廻してこよ!!」
扇子を背負い直し、私は再び歩き始めた。
「・・・・・・」
「・・・お客さん、出発するぞ。」
「・・・・・・あぁ・・・・・・」
一方、土方さんは私の後姿を呆然と見送ってたりして。
進み始めて、運転手さんが一言。
「お客さん、あのお嬢ちゃんとはどういう仲なんだ?」
素っ気無い態度だった土方さんも、私の後姿を名残惜しそうに見てたりする。
そりゃあ運転手さんもどんな関係なのか気になるよね。
「恋人だ」
「恋人ォォ!?何でまたお客さんも素っ気無くしたんだ!?」
運転手さんは吃驚したようで、めっっちゃ土方さんを批評してしまった。
「恋人ならもっとお嬢ちゃんを大事にしてやらなきゃダメだろ!」
最初は煙草吸って聞き流してた土方さんも、
「お嬢ちゃんも悲しかったから途中で降りたんじゃねぇのか!?」
次第にムカついてきて、
「お客さんも女心がわかってねぇなぁ〜!何処の職についてんだァ?」
刀に手をかけてたりして。
「・・・真選組だ」
「ハァ?」
運転手さんは土方さんの方を向いて唖然とした。
「真選組副長の土方だ。覚えとけやァァァァァ!!!!!!」
「ギャアァァァアアアァァァァ!!!!!!!」
一方そのころ私は・・・
「っくしゅん!」
急にくしゃみが出てきた。
寒いのかな??
「そういえばさん、今日非番でしたよ?副長」
山崎くんが遠慮がちに言ってくれた。
でも、知ってるもん。
「うん、さっきばったり会って・・・置いてきた」
「えぇっ!?」
「だってめちゃくちゃムカつくんだもん土方さん。あーあ、山崎くんの方が断然優しい・・・」
困ったような表情をしてた山崎くんは、今度は苦笑した。
「でも副長、いつもさんのことを気遣ってますよ」
「え〜そうかなぁ??」
「そうですよ。副長もなんだかんだ言ってさんが好きなんですって」
そうなのかなぁ・・・
もし山崎くんが言ってる通りだったら、ちょっと嬉しい。つーか、可哀想なことをしたなぁ・・・
「帰ったら謝ろうかな」
「え?なんですか??」
「別に何も言ってませーん!」
とは言っても・・・帰ってからまた同じようなことがあったのよね・・・(呆)