幕府の事情?そんなの知らない。
 土方さんさぁ、私以外の女の人は見ないでよ。
 私はそれだけで充分なんだから・・・って、別に恋人でもないのにね。





How To?





「ねぇ土方さん、今まで幾人の女の人を引っ掛けたワケ?」

 朝。
 私は土方さんの部屋で唖然とした。
「あァ?」
 本人はわかってないようで、自分の布団の中を見て再び唖然とした。
「っなんだこりゃア!?」
「それはこっちの台詞だってば」

 今日は真選組の屯所に泊まった日。
 夜は普通に話してた私の意中の人は朝になると
女の人とともに起きるのでしょうか?
 最低以外の何者でもないよね。

「・・・そういや隊士の誰かの女だったよーな・・・」
うっわぁ土方さん、隊士の彼女を寝取ったりするんですか?
 すると最低の人は首を振って否定した。
「俺は一人で寝たぞ!?オイコラ!!
なんでそんな冷ややかな目なんだよ!!
「さーいてー」
「ちょっ、待てってェェ!!!」

 土方さんなんて嫌い。
 そう思って私は彼の部屋を後にした。







「ちょっ、テメェなんなんだ!?」
 私が言った後、土方さんはめちゃくちゃ怒ってその女の人を叩き起こした。
 女の人は薄目を開けて、呟く。
「・・・あ、間違った・・・」
「なんだそりゃァアァァ!!!テメェ二度と起きれねェように斬りつけるぞこらァァ!!!!」

 どうやら、入る部屋を間違えちゃったらしいんだけど・・・
 私はもう行った後。
 そんなことなんて知らない。



「総悟くんさぁ・・・土方さん殺していーよ」
 一方私は総悟くんの部屋でボヤいてた。

 私の言葉を聞いた総悟くんは一言。
「やりィ、さんの了承を得たぜィ!」
「あはは・・・。」
 笑う元気もないよ。
 だって、土方さんってモテるんだもん。女の人に人気なんだもん。

 嬉しそうにしてた総悟くんも、私の表情を見て言ってくれた。
「でも、まだ殺しませんぜ。さんがスッキリした顔をしたら殺りまさァ」
「・・・総悟くんって鬼畜だね」
根っからのサドですからねィ」
「自覚アリなんだ〜」

 解ってたよ。
 総悟くんは私を笑わせてくれようとしてたこと。
 だけどさぁ・・・やっぱ笑えないのよね。
 朝の風景ばっかりが脳裏をかすめる。

「はぁ〜・・・なんで土方さんなんか好きになっちゃったんだろう・・・」
「好きになった方が負けですからねィ」
 総悟くんの言うとおり、私は何があっても土方さんを嫌いになれない。
 好きにばっかなれるのに、どうして嫌いになれないのかなぁ。

「ね〜総悟くん、土方さんが私だけを見る方法ってないかなぁ?」
 とっても知りたいこの方法。
 まぁ、答えはわかってたけどね。

 少し考えて、総悟くんは答えてくれた。
「ありやせんね」
「やっぱり・・・」
 わかってたけど、こうもはっきり言われたらなんか哀しいよ。
 予想外なのは、総悟くんが続けたこと。

「もうさんだけを見てるんじゃないんですかィ?」
「・・・慰めのつもりなら効果ないよ・・・」
「そうじゃありやせん。あの人は幕府の事情に染まってるんでね、表情を悟られないようにするのが得意でさァ」
 微笑んで言う総悟くんの言葉を、私は注意して聴いてしまった。
「だけど、俺が悟るにさんと話すときは、表情が緩んでる気がするんでねィ」

 そういえば。好きになり、よく話すようになって、わかったことがある。
『土方さんって見せないだけで、いろんな表情を持ってたんだ』と・・・
 思えばそれは、私にだけ向けられてたものなのかな。
 でも他の女の人にも向けられたものなんじゃないのかな。
「やっぱわかんないっ!!」



 そんな時、障子がスッと開いた。
「総悟、を貸してくれ」
 土方さんだ。
 声を聴いて硬直する。
 総悟くんはそんな私を見て、微笑んだ。
「ヘイ」
 そして、私にしか聞こえない声でこうも言った。
「頑張ってくだせィ」



 土方さんに手を引かれたまま、彼の部屋へと誘われる。
 正直言って、手が触れるのは嬉しかった。
 だけど朝の事件があったから素直に喜べない私も居た。

「・・・言い訳でもするつもりですか?」
 座らされた私は、第一声を発してやった。
 土方さんは機嫌が悪そうで煙草を吸い始めた。
、さっきのは誤解だ」
「別に弁解なんてしないでいいじゃないですか」
「いいから黙って聴け」
「私は土方さんの彼女でも何でもないんだし」
!!」
 大声で呼ばれ、思わず肩が震えた。

 本気で怒ってる。
 いつもとは違う、怖さを感じてしまった。

「・・・な、んですか」
 かろうじて、言葉を搾り出せた。
「いいか、あの女が間違えたんだ。俺が連れ込んだんじゃない」
 瞳孔は開き、淡々と言うけれどいつもと違う。
 それでも、言いたかった。


「・・・・・・ねぇ、土方さん。私はあなたのなんなんですか?」


 やばい、涙が出そう。
 だけど、答えがどうしても聴きたかった。


 少し黙った土方さんは、どう返すのだろう。

『踊り子』とかね・・・『犬』とか言われたら、もう帰ってやる。



「・・・おまえは俺のもんだ」

「・・・は?」

 な、なんて言った?この人。



「お前が居ないとなんか調子でねェんだよ!!!」
 怒鳴られたけど・・・どうも調子が出なかった。
「・・・それ、ホントですか?」
「なんだよ」
「だって・・・他の女の人にも言ってんじゃないんですか?」

 どうも信用が出来なかった。
 だって土方さんなんだもん。
 モテる土方さんは、他の女の人にも言ってはフッてるんだと思ってた。
「俺をナメんなよテメェ・・・」
 そこで、土方さんの言葉は途切れた。

「・・・・・・悪かったな」

 私は黙って涙を流してしまっていた。
 嘘でも、嬉しかったんだよ。
 土方さんからそんな言葉を聴けるなんて思わなかったから。

 遠慮がちに抱き締められると、余計泣いてしまった。
 あぁ、やっぱり嫌いになれなかった。

 逆に、土方さんをもっと好きになっちゃった。





 ちなみに、私の誤解は後に隊士からも解かされた。
 私が悪いのか、土方さんが悪いのか・・・
(女の人が悪いんだろうケド)

「さすが土方さん、さんを自分のもの宣言しちゃうなんてスゴイですねィ」

 もう一つおまけして言えば、総悟くんは廊下で全部聴いてたらしい。
 土方さんに追いかけられてたけど、どうなったのかなぁ?