「あれ、新八くん?」
振り返ると、そこにメガネの彼は居なかった。
買い物の荷物持ちに来てもらったはずの新八くんが、居ない。
ポジションは大切に
「あっれー、いないなぁ?」
クルクルッと回っても、新八くんらしい人は見当たらない。
「・・・・・・」
もしかして、私が目移りしすぎた?(結局自分のせい)
そうだ!!
試しに、私は今持ってる袋を見つめた。
「・・・おもーい!!!私お箸より重いもの持ったことないのにー!!」
大声で、聞こえるように言ってみた。
すると、
「じゃあ俺がもってやるよ!」
「僕が持つよ!!!」
「キミ可愛いねー!俺が持とうか?」
道行く男の人が次々に声をかけてくる。
「・・・・・・違う」
お箸よりも到底重いはずの扇子を振り回し、男どもをまいた私は呟いた。
新八くんが近くに居れば、絶対ツッコミが入る。
粗方、『何だそれェェェェ!!!じゃあ後ろの重そうなのはなんなんだよォォォ!!!!』とか。
だけど、聞こえてこない・・・ということは、近くに居ないことが判明した。
「うーん・・・どうしよう・・・」
スーパーの中とかなら、歩き回ればすぐに会えるだろう。
だけど・・・此処はかぶき町。
街中で迷った場合、どうしたものやら。(しかも私ここ何処か分かってないし)
兎に角歩こう。
私は当てもなく・・・ただ、新八くんに会えたら良いなという期待感を持って歩き出した。
だけど・・・クルックルックルックルッ同じ所を回ってるような気がするのは気のせい??
いや、気のせいじゃない。
「っだあァァァァァ!!!!!もう同じ所ばっか回ってるっつーの!!!!!!!」
思いっきり突っ込んでみるけど・・・その声は木霊するだけだった。
道行く人々は思いっきり私の方を見るだけで、新八くんの姿は見えなかった。
「う〜ん・・・なんかツッコミはやっぱ新八くんがいいなぁ・・・」
私が改めて実感してどーするんだか。
いい加減袋が重い。
お江戸スーパーで買った食材だって、長時間持てば重くもなる。
だけど新八くんと離れちゃったし・・・どうしようと思ってたときだった。
ドンッとぶつかってしまった。
「あっ、ごめんなさい」
ぶつかった拍子に食材を落としてしまった。
(ベタに)果物が転がってしまう。
「あぁっ!!」
早く回収しなきゃ!!なんて思ったとき!!
「どーぞ!」
「大丈夫か?」
「キミが落としたのか?ホラ。」
なんて、またしても道行く男どもがまたしても集まってきやがった。
「・・・ありがとう」
拾うだけ拾い、カマイタチを味あわせてやろうと思ったんだけど・・・
「オイそこォォォォ!!!何青春ラブコメをお送りしてんだよオォォォォオォ!!!!!!」
ふと聞こえたツッコミ声。
・・・はっ!!このツッコミは!!!(遅いよ)
「ったく、みせつけんじゃねェェ!!・・・って、さん!?」
「やっぱり新八くんだ!!!」
目標を見つけた途端、私は寄ってきた男どもを睨み倒した。
「・・・退けて?」
その言葉一つで男達は退けていく。(そんなに怖かったかぁ??)
「やっと見つけましたよ!!何処行ってたんですか!」
新八くんもずっと探しててくれたらしく、私の足元にヘナヘナとしゃがみこんだ。
「此処をクルクル回ってた・・・」
「クルクル!?なんでまた!!!」
「いやー迷っちゃって・・・・・・あはは」
「あははじゃねぇよォォオ!!!迷うほどじゃないし地元でしょッッッ!?」
「・・・うん!」
「いや、『うん』ってさん!!!」
「やっぱりツッコミは新八くんじゃなきゃ」
そう言うと、新八くんは「はァ?」って言ってたけど・・・私は思った。
新八くんが居なきゃ、私たちは成立しないんだなぁなんて。
銀ちゃんや神楽ちゃんも楽しいけど、ボケにはツッコミがいるよね。
「よっし新八くん!!帰るか!!」
「そうですね・・・って、なんで果物傷んでるんですかァァァ!!!」
「・・・こぼしちゃった♪」
「こぼしちゃったじゃねぇよォォ!!!なんだよ語尾の『♪』はァァァァァァ!!!!!!」
「・・・・・・・・・・・・チッ」
だけど、思い直した。
新八くんというツッコミ役は居ると思うけど、ちょっと加減も必要かも。