「ちょーだい!」
 大声で言っても、貴方は知らんぷり。





もっと言ってくれたら






「総悟くん!!」

「・・・・・・」
「おーいそーごくーん!!!」
「・・・・・・」
・・・あ。土方さんが殺されそう
「マジですかィ!?やりィ!!!」
「うっそでーす・・・つか、私より土方さんですか

 私のふてくされた声が部屋中に響く。
 やっと総悟くんは私の方を向いてくれた。

さん、そんなにコレが欲しいんですかィ?」
 ニヤリと笑い、総悟くんは私の目線まで“コレ”を持ってくる。
欲しい!!てゆーかそれをくれるって言うから来たんだけど」

 私の目の前には、総悟くんとレアチーズケーキが映る。
 しかも、超高級の洋菓子店だし・・・

「そうですねィ。じゃあもう少ししたらあげましょう」
「今欲しい!!!」




 数十分前に、万事屋に電話があった。
さん、実はレアチーズケーキを貰ったんで、一緒に食べましょうや。』
「レアチーズケーキ!?何処の!?」
『えーっと・・・洋菓子豪華屋って書いてましたィ』
「豪華屋っ!?嘘!!超高級店じゃない!!でかした総悟くん!!」
 それを聞くなり私は家を飛び出した。(その際、銀ちゃんか何かを踏んだような気もするけど)

 なのに・・・それなのに・・・

 数分間、食べてるのは総悟くんばっか。
 私には一口もくれやしない〜〜〜!!!(大のチーズケーキ好き)


「総悟くん、ホントにくれる気ある?」
「もちろんありますぜィ」
「ホントにホント?」
「もちろんでさァ。俺はさんの美味しそうな顔が見たいから電話までしたんですから」
「じゃ〜〜〜ちょーだい!!」
「まァまァ待ちなさせェ」
「待てない!!!!」

 私は、めちゃくちゃチーズケーキが好き。
 一日に1個は必ず食べるし、家には銀ちゃんの甘いものの隣にいつも並んでる。
 しかも、まだ食べたことない
豪華屋の超高級レアチーズケーキ!!
 欲しい〜〜〜!!!!!

「うぅ゛〜〜〜・・・まだ今日チーズケーキ食べてないのに・・・」
「・・・・・・」
「あっ!!また黙秘だ!!!」
「・・・・・・」
「総悟くーん!!」
「・・・・・・」
「そーご〜〜〜〜!!!」
「・・・・・・」
「もう!!総悟くんのバカ!!」
「誰が馬鹿だってィ?」
「お、反応アリ!」

 黙々と、目の前で、しかも美味しそうに食べてる総悟くんは、時折私のほう見ては笑う。


 ・・・もぉ〜〜〜〜〜〜怒った!!



「何処行くんですかィ?」
「ちょっと野暮用!!!!
ヤ・ボ・用!!!!

 私の種族である胡蝶族には神風が付いてる。
 よくそう聞くけど、実際に風の神様が居るのかも知れないかな。

 実際、私は
数秒で帰ってきた。


「ぇいやっ!!!!!!!」

ブチュウウゥゥゥゥゥ・・・・・・と、私は握力が許す限りソレを出した。

「あ゛っっっっっ!!!!!!!」
 総悟くんの悲鳴は、短かった。

 だって、すぐに終わったんだもん。


「フフフ・・・土方さんにでもあげれば??」

 不敵な笑いが出た・・・我ながら。


 私が持ってきたのはマヨネーズ。

 それを、総悟くんが持ってたチーズケーキに、思いっきりかけてやった。



「・・・あーあ。もうコレだけしか残ってなかったのに。」
「・・・・・・えっ゛!!!!!!!!!!!!!」

 だけど、しれっとした顔で総悟くんは言う。
 寧ろ私はソレを聞いて耳を疑いたくなった。


 あの・・・あの『豪華屋』の特製レアチーズケーキが・・・マヨネーズまみれ・・・


「・・・ぅ・・・」
さん?」
「・・・ぅわ〜〜〜ん!!!!!」

 抑え切れなかった。
 呆然としながら思考をめぐらせ、私はボロボロと涙を流してしまった。

「うぅっ・・・まだ食べたことないのに・・・酷いよ総悟くん!!」
さんがやったんですぜ・・・」
「・・・ひっく・・・もういい!!」

 総悟くんは、憎まれ口を叩きながらも、珍しく瞳孔が開ききっていた。
 まさか私が泣くとは思わなかったのだろう、後悔してるようだった。

 だけど、私のチーズケーキ好きなのはそれほど。
 総悟くんなんかほったらかして、私は泣きじゃくった。

 数分ほど泣いたとき、私はやっと顔を上げる。
 だけどそこには総悟くんの姿はなくて。


さんさん」
 ふと呼ばれ、涙を拭きながら振り返ってみると・・・
「コレを食べて元気を出してくだせィ」
 やりすぎたという顔をしながら、総悟くんが差し出したのは、さっきマヨネーズまみれにしたはずのチーズケーキ。

「実はもう一つあったんでさァ」
「・・・食べて良いの?」
「もちろん。さんのためにとっておいたんですから。」
「・・・・・・有難う!」

 総悟くんから受け取り、私は早速すくって口の中に入れる。
 それは、とてもとても美味しかった。
 今まで食べた中で、一番美味しかった。


 黙々と食べてたけど、ふと疑問が浮かんだ。
「・・なんでくれなかったの?」
 総悟くんは私を見ながら、サラッと言った。
「俺の名前をもっと呼んで欲しかったんでさァ。」
「・・・え?」
「美味しそうに食べますねィ。やっぱりさんに食べてもらってよかった」

 総悟くんは、ニコッと微笑む。



 いままでの苦労はなんだったんだろう・・・

 そう思ったけど、私はどうでも良いとも思った。
 今は美味しいチーズケーキを堪能しよう。
 総悟くんのためにも、それが一番良いと考えたから。


 後に聞くと、実はコレ、土方さんのだったんだって。
 元から総悟くんは土方さんのを私にくれるみたいだったんだけど、一つマヨネーズだらけにしちゃったなぁ・・・。

(食べかけだけど)土方さん用です。どうぞ♪」
 捨てるのももったいないので、それを土方さんにあげた・・・喜んでくれて、よかった!!