銀ちゃん〜、刀忘れないでね〜。
 って、言ったと思うけど・・・いや、現に返事も聞こえたはず。

 なのに、何で此処に木刀があるの?





貴方の腰にはいつも






「ねぇ神楽ちゃん、銀ちゃんは何処行っちゃったの?」
 神楽ちゃんから返事はない。
 でも、すっごい汗かいてるよー・・・なぜでしょう?
「しっ、知らないアル」
「ホントに?」
「・・・ねっ、ねー定春」
「ホントにホント??」
 ジーッと見る。

 すると神楽ちゃんの汗はドンドン増えて、終いには。

「パチンコ・・・」
「・・・・・・・・・・・・へーパチンコね。神楽ちゃんに口止めして」

 神楽ちゃんはいつもなら銀ちゃんの悪行を言うのに、今日はどうして言わなかったのかな?
 まぁそれはおいといて・・・パチンコねぇ?

「・・・神楽ちゃん、これからの行動は内緒ね」
 ニコッと微笑むと、彼女も頷いた。


 銀ちゃんがいつも腰にしてる木刀。
 かなり愛用してるみたいで、通販で注文してるのをよく見る。

 ・・・でも、コレはパチンコで勝ったときじゃないと買わないのよね。

『洞爺湖』と書かれた木刀を持ち、机に置いてみる。
 そして机についてる部分を足で踏み、力の限り扇子を振り下ろした。

「だりゃアァァァァアアアア!!!!!!」



 
バキィィィィィッ!!!!!!!!!

 とてつもない音を放って、木刀の半分は床に落ちた。


 神楽ちゃんは
真っ青になってる・・・それ、もしかして私に対して?木刀じゃなくて?

「ふぅ・・・コレでお仕置き完了♪」


 銀ちゃんはいつも負けてきて、買ってくることは稀にない。

 なのに負けに行くなんて・・・どうにかしてるとしか言い様がないでしょ?

 だからこうやってお仕置きしておかなきゃ!

 私は神楽ちゃんに笑顔を向けて、残骸を持って再び台所に戻った。





 夜、銀ちゃんが帰ってきてから。

〜〜〜〜電話持ってきて」
 素直に持ってくると、銀ちゃんはテレビを見ながら電話番号を打つ。
「・・・おい神楽、なんでそんな端っこに居るんだ?」
「人のことより自分のこと心配するヨロシ」
「はぁ???何言ってんのお前?」
 なんて言いながら、電話・・・が、ないでしょ?

「ねぇ銀ちゃん。今日は何処に行ってたの?」
 あくまでも
笑顔
すると銀ちゃんは少し焦って、「あ〜〜〜・・・ホラ、音が出て当たったら玉が出るアレだよ」と言った。

 はぁ〜〜〜〜・・・お仕置きしておいてよかった。
 今日は勝ったみたいね。だから木刀を新調するために電話かけてたんでしょうよ。


「これ、な〜〜んだ?」
 座ってる銀ちゃんの頭に、パラパラと木屑をかけてやる。
「何だァコレ?オメェなんか壊したのか?じゃあ銀さんが買って
「木刀よ」


 ・・・少しの間があって。


「何ィィィ!!!!???」
 残骸を拾い、マジマジと驚きながら銀ちゃんは見た。
「あ、コレもあった・・・」
 わざと、残り半分の木を頭に投げつける。

 案の定、スコーンと当たった。


「おまっ!!!これ何やってくれたんだよォォオオォォ!!!!!!」
「神楽ちゃんに口止めまでしてパチンコに行く銀ちゃんが悪い」

 私の手には、電話もある。
 注文なんかさせるもんですか。


「なぁ〜〜〜〜!!!悪かったって!!!な?」

 新しいのがどうしても欲しいのか、今度は謝ってくる。



 確かに、銀ちゃんの腰にはいつもあの木刀が似合うもんね。

「しょうがないなー・・・最後のチャンスよ」

 苦笑しながら私は電話を彼の手の中に戻してあげた。



 木刀も壊したけど、やっぱり刀をさげてる銀ちゃんが好きなんだよね。


 今回だけは、見逃してあげよう。


 (と言って、数日後も同じことがあったってことは此処だけの話ね)