友達かぁ・・・私はそれ以上の感情を持ってるんだけどなぁ。
だから、改めて言われたら哀しいってものよ。
単刀直入に言わなきゃ
「お二人って仲良いですよね」
山崎くんの一言に、私と隣にいた総悟くんが振り返る。
「そう?」
「羨ましいだろィ」
私たちの言葉を聞いた山崎くんは苦笑して、「羨ましいですよ」って言った。
そして、その後も続いた。
「付き合ってるんですか?」
その質問には私も頬を紅くしてしまった。
そう、私は総悟くんのことが好きだった。
でも仲がいいから、そのままで良かったんだよね。
告白なんてしたらこの関係まで崩れちゃうもん・・・。
「友達でさァ」
でも、この気持ちを消すことは出来ない。
改めて『友達』って言われたことには傷ついちゃったなぁ。
でも、総悟くんは知らないから傷付いたことを悟られちゃダメ。
「そうだよ、山崎くん何訊いてんのー?」
すると、山崎くんは少し申し訳なさそうに「あ、ごめんなさい」って言った。
・・・?
なんで山崎くんが申し訳なさそうにしたんだろ?
私はその時総悟くんの顔を見ていなかった。
総悟くんと初めて会ったのは、街中でのこと。
絡まれた私は、最初は丁重にしてたけど、遂にキレて扇子を開いちゃったのね。
だけど風を起こすことは無かった・・・総悟くんが助けてくれたから。
「その扇子綺麗ですねィ」
その時言われた言葉がコレ。
助けた後に言うことじゃないよね?だけど初めて扇子のことを褒められたんだ。
それから何度かばったり出会っては話をして、段々仲良くなっていったんだ。
踊る場所を提案してくれたのも総悟くんだった。
「真選組に来て踊ってくれませんかィ?俺が近藤さんを説得しまさァ」
「・・・え、いいのかなぁ?」
そのころまだ私は真選組のことを良く知らなかったから、怖い人達ばっかかと思ってた。
だけど、
「一回だけ踊ってみて、それから決めてみたらどうですかィ?」
その言葉に私は頷いたんだよねぇ。
真選組は怖いどころか、面白かった。
私は一層総悟くんと仲良くなり、真選組の皆さんとも仲良くなった。
「そろそろ帰ろうかな」
今日は私がご飯を作る日なんだ。
腰を上げると、総悟くんも立ち上がった。
「さん、送りますぜィ」
今日は薄暗いというより赤々しい夕暮れだった。
全てを紅く染め上げて、綺麗だという感情まで出てくるほど。
いつもと違う風景に・・・何かの変化を告げているよう。
「今日の山崎くん、どうしたんだろうね。」
総悟くんは私の言葉にきょとんとした表情を返した。
「だってなんか沈んじゃったんだよー、私何か悪いこと言ったのかな?」
「さんが悪いんじゃないですぜ」
え?
総悟くんの方を向くと、少し真剣な表情があった。
自然と止まる足。
私たちは公園の手前で止まった。
赤々しい公園にあわせて、私たちも紅く染まっていく。
「・・・総悟くん、何か知ってるの?」
少しの時間の後、総悟くんが口を開いた。
「実は、山崎に頼んでたんでさァ」
「・・・何を?」
「さんの心が知りたかったんで」
それってどういうことだろう?
私にはまだ総悟くんが何を言いたいのか分からなかった。
「さん、俺はあなたを“友達”だと思ったことは一度もありやせん」
真剣な表情から出された言葉は、私を心底驚かせた。
「・・・え?でも、さっき・・・」
「あれは嘘ですぜ。」
総悟くんの目から離せない。
彼はもう一言呟いた。
「俺はあなたが好きだ。さんは?」
・・・へ?
私にはその言葉がどうしても信じられなかった。
「・・・えっ、えぇっ!?」
「さんはどうなんですかィ?」
全てを見透かしてるような言い様。
でも本気のその瞳を、何処か怖いとさえ思ってしまった。
「・・・・・・・・・好き・・・」
「ホントですかィ?」
笑った顔に吊られて、私も笑った。
あぁ、赤い空は解ってたんだ。
祝福してくれたような気がした。
「ね、公園に寄って行こう!」
「俺はそのつもりでしたぜィ?」
「えっ!?ちゃんと言ってよ総悟くん!!」
“友達”の殻を破るには、単刀直入が一番。
その証拠に、私たちは友達の頃以上に仲がよくなった。