何?年収?
 私は・・・そうだなぁ、幾らくらいだろ?
 小説書くたびにギャラが入ってて、今までの小説の印税も入ってくるし。
 少なくとも銀ちゃん、あなたより多いと思うよ。





印税の使い道





「はい、はい」
 受話器に向かって相槌を打つ。
 私が話してる相手は、出版社の担当さん。
 今後の予定と報告で電話がかかってきたんだ。

「はい。・・・
えぇっ!?
 私の声に驚いたのか、ソファから銀ちゃんが落ちる音がした。
「はいっ・・・あっ、わかりました!」
 失礼します、と受話器を置く。
 するとすかさず銀ちゃんが声をかけてきた。

「なんだっ!?」
 そんな叫ばなくても聴こえてるってば。
 振り向いた私を見た銀ちゃんは、硬直して一言。
「・・・、なに?その笑顔。怖すぎです」
「失礼な」
 とはいっても、私の頬はとろけっぱなし。

「きいて銀ちゃん!私の今までの小説が
100万部突破したんだって!!!」
「ふーん」
 適当なことを言いながら、再びソファに横になる。
 事の重大さに気付いてないんだから、この人。
「でね!印税が凄く入ってきた!!!」

 ガバッ!!
 勢いよく起き上がった。

「マジか!?」
「マジマジ!!」
「よっしゃあパフェ食い放題!!!」
 
ヤッホォォォォウ!!!!と狂喜の声を上げた・・・・・・けど。

「・・・ちょっ、なんで?」
「幾らだ!?なぁ幾らだ!?」
「ちょっと落ち着いて!!整理しましょう!」

 今、なんて言った?

「パフェ食い放題って言った?」
「よしっ!今すぐ下ろしてこい!!食いに行くぞ!!」

 ・・・このヤロォ何言ってんだ!?
 私が自分のギャラで養うことは嫌いだって知ってんだろ!?

「銀ちゃん、私買い物行ってくるね♪」
 早速着物新調しよーっと!!!
、パフェ食いに行かねぇのか?!」
行きません。あ、お金は自腹でね♪」
ハァァァアアアッ!?てめっ、何言ってんだ!?」

 銀ちゃんの年収が私より(凄く)少ないことは知ってる。

 だけど、甘えはよくないでしょ?


「じゃあ行ってきまーす!」
「おい、ちょっ待てよ!!!!!!」

 銀ちゃんの声も聞かないで私は出て行った。


 さーて、印税でどんな着物買おうかな♪

 スキップしながら行く私の後ろで、銀ちゃんの悲痛な叫び声は空へと消えていった。