豊玉発句集?なにそれ??
・・・え、それホント?総悟くん!!
詩集を探せ!
「土方さん、一生のお願いです」
真剣な表情をする私に、机越しの土方さんは瞳孔が開いた目を向けて、
「なんだァ?俺のトコに嫁入りでもするのか?」
「それもまた一生のお願いとして使います」
「お前何度使う気だ?一生の願いとやらを・・・」
土方さんの所に嫁入りしてもいいよ。
でも、その前にアレが見たいの!!
「一生のお願いです!!“豊玉発句集”ってやつを見せてください!!」
ブハァッ!!!
聴いた途端土方さんは飲んでいたお茶をぶちまけた。
だけど私はリアクションもなく真剣な表情を崩さない。
「・・・総悟のヤツだな」
土方さん、怖いです。
殺気が漲ってます。でも、突っ込みは後です。
「ね〜いいじゃないですか!!詩集見せてくださいよ〜!!」
聞いたんだもんね〜!土方さんがいつも詩を書いてるってことを!!
そりゃあ小説家である私にも見せてもらわなきゃ!!(?)
確か“豊玉発句集”っていうタイトルだったんだよね。
「、何言ってんだ?俺が詩なんて書くわけねぇ。断じてねぇ!!!」
「でも総・・・とある人が言ってましたよ?」
「総悟だな」
「いや・・・それは言えませんが、書いてるんでしょう!?」
とある人・・・それは土方さんが言うように総悟くんから聞きました。
『さん、土方さんのことで耳寄りな情報がありやすぜ』
面白そうに言われた私は案の定『えっ!なになに??』って乗ったのです。
総悟くんは私の耳に近づいて、
『豊玉発句集って知ってますかィ?』
『・・・豊玉発句集?知らないなぁ??』
ニヤリ、不敵な笑顔を見せた総悟くんは一言。
『土方さんの詩集でさァ』
「総悟のヤロォ・・・」
あぁ、ごめんね総悟くん。
伏せておこうと思ったんだけど、バレてる。
「土方さん〜、どうしても見せてくれないんですか?」
「あぁ。わりィけど絶対無理だな」
「うぅ゛〜〜〜〜・・・」
だけど、土方さんの部屋にあることは教えてもらったから解る。
・・・仕方が無い。強行手段といこうかな。
「ごめんなさい、土方さん」
扇子をザッと広げ、上に向かって振り上げた。
すると風がゴォォォ・・・と発生し、部屋中を荒らしていった。
「なっ!!!!テメェ!!なにしやがる!!」
「強行手段です」
実は、手に入れたら総悟くんと見ようって約束してたんだよね。
部屋はあっという間にグチャグチャになった。
「よし、探そう!!」
「待てコラァ!!」
うっ!
首根っこ掴むの反則!!!苦しいっ・・・!!
「なんっ、ですかぁ!!」
「片付けろ!!」
「・・・見せてくれたら「片付けろォォォ!!!」
うぅ・・・なんでこうなるんだろ。
私は散らかした部屋を片付けてる。
あーあ、ただ豊玉発句集が見たかっただけなのに・・・
「・・・ん?」
一番高いところにある棚に、小さい冊子が収まっていた。
頑張って取ってみると、そこには待望の字が。
「っあ――――!!!!!!」
「なんだぁっ!?」
私が持ってる物を見た土方さんは、血相を変えた。
「、貸しやがれ!!!」
「イヤですよーだ!!!」
ひょいっと避けて、隣にあった障子を開けた。
「――――――!!!!」
「っきゃああぁぁぁっ!!!!」
こ、こわっ!!!!
土方さん怖いって本当に〜〜〜〜!!!!
めっちゃ怖い土方さんと追いかけっこを始めた私は、全力疾走で総悟くんの部屋に向かった。
「そっ、総悟くん!!」
「さん?どうしたんでィそんなに息切らして」
思いっきり開けると、そこにいた総悟くんは吃驚した表情を浮かべていた。
だけど私は一気に言いのけた。
「豊玉発句集あった!!でも土方さんが追いかけてくるの!!どうしよう!?」
「ありましたかィ!?」
あ、楽しそうな目をしたぞこの人。
奥から何か取り出して、私の持ってたものと交換するように渡した。
「ダミーでさァ。さんはこれで土方さんの気を引いててくださィ」
俺はその間にこれを写しまさァ。と言う総悟くん。
「わかった!」
また追いかけっこかぁ・・・でも、ちょっと楽しかったりして(笑)
「―――――!!!テメェ返しやがれコノヤロォォォ!!!!」
「うわっ!!鬼がきた!!!!」
なんて楽しそうに言って、再び走り出す。
だけど左に曲がった私は、思わず立ち止まった。
「さん、すいません・・・」
立ちはだかるのは土方さんからの刺客である山崎くんだった。
手にはミントンラケットを持ってる・・・あぁ、ミントン中に命令されたんだ、可哀想。
「残念だけど、山崎くんじゃ私を止めることは出来ないわ!」
扇子を広げながら再び私は走り出す。
捕まえるような格好をした山崎くんは唖然とした。
そりゃ、唖然とするわよね。
「よっ!!」
広げた扇子を前に出すと、風の反動で浮き上がっていく。
それを上手く利用して、ジャンプして扇子の上に乗った。
「おぉ〜成功!!」
ふわっと扇子が上がり、私は扇子に乗って宙を飛んでいるような感覚に陥った。
実際に山崎くんの上を飛んだんだけどね。
「じゃあねー山崎くん、土方さんに宜しく言ってて!」
「えぇっ!?ちょっ、さん?!」
山崎くんを通り越した張るか先で降りて、再び走り出す。
「・・・副長に何て言おう・・・」
真っ青になってる山崎くんは、ミントンラケットを一回振ってみたとか。
一方私はというと、建物の中に再び入り、
「・・・今、山崎くんの悲鳴が聞こえた?」
あちゃ、ごめんね。
きっと土方さんに半殺しにされちゃったんだろうね。
「さて、どうしようかなぁ〜・・・」
もう惹きつけておかなくても、総悟くんなら大丈夫かな?なんて思ってると、
「ぅわっ!」
グイッと引っ張られ、台所に倒れた。
「あ・・・土方さんだ」
痛い。
どうやらマジで怒ってるみたいで、手加減の字も浮かんでいないよう。
「」
キッと睨まれると、瞳孔以前に恐怖が浮かぶ。
「何か言うことは無いのか?」
「・・・ごめんなさい」
(ダミーだけど)渡してみた。
すると中を確認しなかった土方さんは豊玉発句集を床に置いた。
「・・・あのー土方さん?」
「あァ?」
ゴンッ
「なにしてるんです?」
さっきの音は私の頭が壁にぶつかった音。
ちょっとずつ近寄って来るんだもん、後ずさってたんだけど・・・後が無い。
「しつけだ」
「しつけぇっ!?なんで?!」
「俺をこんなに走らせやがって・・・思う存分楽しませてくれよ」
「はぁ?ちょっ、マジ!?」
「大マジだろ。」
ちゅ・・・とわざと音を立てて口付けをする。
ちょっ、待って!!
此処何処だと思ってんの!?台所よ?!
いや〜〜もう近寄んなぁ〜〜〜〜!!!
「っごめんなさい!!!総悟くんが持ってます―――!!!!」
これを言えば土方さんは総悟くんの元に行くと思ったから。
総悟くんごめん!!でも私はどうしてもイヤなの!!
ピタッと動きを止めた彼は、
「・・・やっぱりな」
と呟いて、すぐに総悟くんの元へ・・・行かなかった。
ガチャンと金属の音がしたと思ったら、私の右手がズシッと重くなる。
「え?」
右手を目線まで上げると・・・ちょっ、手錠ぉ!?
「な・・・なっ!?」
土方さんの方を見たら、真剣な表情で
「人のものを盗ることは窃盗に値するぞ。、俺はなんだ?」
・・・嘘でしょ。
「武装、警察・・・真選組です・・・」
「そうだ。覚えてろよ」
勝ち誇った笑みを見せ、土方さんは韋駄天のような速さで台所を出て行った。
「・・・マジデスカ?」
ジャラジャラと鳴る右手は、台所の机と繋がっていた。
「・・・土方さぁ〜〜んごめんなさい!!!!だからマジで許して〜〜〜!!!」
私の悲痛な叫びは、天井に響いてやがて空しく消えていった・・・。