「土方さん」
言葉を発せば、あなたの名前。
好きって気持ちを表したいの。
私が星を見上げてるとき、あなたはいま何が見えてますか?
流れ星に願いを
「・・・あーあ、会いたいなぁ。」
隣の部屋では、銀ちゃんが神楽ちゃんとテレビの文句を語り合ってる。
その声が煩いけど、ベランダに出てる私はこの空間が静かに思える。
目を閉じたらさぁ、ふてぶてしい人がすぐに浮かんでくるんだよねぇ。
これって惚れた弱みかな?
「今、なにしてんだろ・・・」
星に向かって両手を開いた。一つの星が輝いてる。
あ、一番星だ。
「・・・土方さん・・・」
「なんだァ?、オメェあの瞳孔が開いてるヤローが好きなのかァ?」
「へっ・・・!?」
ふと後ろを向けば、さっきまで騒いでたはずの銀ちゃんが。
「なっ、なんで居るの!?吃驚した!!」
「あんなヤツの何処がいいんだ?女ってわかんねェ〜」
銀ちゃんはからかう気満々の嫌な笑みを浮かべていた。
「なァチャンよ、あんなヤツより銀さんにしとかない?」
「しとかない」
「即答かよ!!」
ふん、絶対銀ちゃんなんてヤダ。
私は土方さんがいいんだってば!
「銀さーん、さーん!ご飯出来ましたよー!」
新八くんの声が聴こえたのか、銀ちゃんが部屋の中に入る。
「食わねェのか?」
「すぐ行くよーだ」
私は尚も星を見つめた。
一番星が一番輝いてる・・・それだけが赤く光ってた。
「はぁ・・・お話とかしたいなぁ・・・」
口を開けばあなたへの言葉。
あぁ、私大分恋に侵されてるわ。
星を見てた私は、ふと視線を地面に落とした。
不意に溢れた涙を拭くために、下を向いた。
「・・・あれ?」
向こうから来るのって、土方さんじゃない?
「私、幻覚まで見え始めたかなぁ」
でも黒い制服に白い煙の煙草をくわえてる・・・ほら、やっぱり。
「土方さん!」
声が届くところまで来たとき、呼んでみた。
案の定彼は私の方を向いて、
「?お前寒くねェのか!?」って驚いてる。
寒かったよ。でも、嬉しさでいっぱいになった。
「そっち行く!」
「おまっ、どっから来るんだよっ!!!」
回っていく時間が既に惜しいの。
私はベランダを越えて2階から土方さんに向かってジャンプした。
「とぉっ!!」
「ぉあァッ!!」
私は土方さんを信じてるから怖くなんて無かった。
やっぱり彼は私を抱きとめてくれたもんね。
「お前もっと考えろよ!!」
「土方さん見廻り?」
「まぁな・・・ってはぐらかすなァァァっ!!!」
私は聞かなかったフリをして、微笑んだ。
「私も見廻り一緒していい?」
肯定の返事が聞こえることはわかっていた。
ほんの少し、風が吹いた。
風は『頑張れ』って言ってくれてたのかな、私には解った。
「さん、ご飯食べないんですか?・・って、アレェェェェッ!!??」
新八くんが律儀にも呼びに来てくれたけど、唖然としてた。
だって私、そこにいなかったもん。
夜の空がもう綺麗に光ってる。
その中に、一番星はとてもよく輝いててすぐにわかった。
「ねぇ土方さん、見廻りって何するの?」
「ただのパトロールだ。別にが気にすることじゃねェ」
そうぶっきらぼうに言う声が好き。
黙ってついていくんだけど、斜め後ろから見える表情が好き。
言葉は無いけど、何処か居心地がよかった。やっぱ惚れた弱みよね。
彗雲の向こうに広がった星空の中に、一番星が見えた。
「土方さんさぁ、仕事熱心にも程があるよ」
上を見上げながらボソッと呟くと、
「あ?何でだよ。つか前見ろよ」
呟き返された。
「だって、普通見廻りなんて熱心にしないでしょ。」
総悟くんとか、絶対サボってるよ。って言ったら、彼は「あンのヤロォ・・・」って呟いた。
ごめんね総悟くん、バラしちゃった。
「っ!!」
「ぅわっ!」
叫ばれた途端、グイッと抱き寄せられた。
「ちょっ、何!?」
「前見ろっつったろ!!?」
「へ?・・・ぅわ」
前を見れば、電柱が。
危ない・・・星を見てたらぶつかるとこだった。
「ったく、何見てたんだァ?」
「星!」
「はぁ?」
土方さんが見たのを見て、私も見上げる。
「ね、綺麗でしょ?」
空には、満面の星が広がっていた。
しばらく立ち止まって見てたけど、
「、流れ星だ」
「えぇっ!?」
教えてもらって、急いで目を閉じた。
土方さんと両思いになれますよーに!
私は三回願った。
「・・・」
横で見ていた土方さんが一言。
「全部口に出てるぞ」
「・・・うそっ!!!!」
えぇっ!?願いを口に出してたなんて・・・土方さんにバレちゃったじゃん!
チラッと見てみると・・・アレ?何故か顔が赤い。
「そーいうのはだなぁ、願うことはねぇんだよ」
「・・・というのは?」
「大抵相手も同じこと願ってるんだよ」
それって、どういうこと??
私が訊くよりも先に土方さんが言った。
「ホラ、行くぞ!!」
「あ、はい・・・」
目をじて・・・目をあけて
私は今何が聞こえるの?なにが見えてたの?
紅い星はもう無かった。
きっとアレが流れ星になったんだと信じたい。
「ねぇ土方さん!どういう意味なんですか!?」
「うるせェ!!それよりちゃんと前見ろよ!!!」
「見ますよ!!!で、はっきり言ってくださいよ〜!!」
「だァァもう黙れ!!!」
土方さんはさっきと態度は一緒。
だけど、繋いだ手は暖かかった。
どっちも、暖かかったんだろうね。