「・・・さん」
「・・・なに?」
「・・・もう、さよならしやしょう」

 繋がれてた手が、お互いに離れた。
 どこか、気付いてた私がいた。





気付かない傷がキミに





「総悟くんって私に“好き”って言わないよね〜」
 半年前、幸せだった頃。
 私はふと公園でブランコをこぎながら言った。

 総悟くんが聞いてたのか聞いてなかったのかは知らない。
 だけどこいでたブランコを止め、私の方を向いた気がした。

「言葉なんて要りませんぜ。俺は何があってもさんと繋がってまさァ」

 私もブランコを止め、総悟くんのほうを向いた。
 総悟くん、あなたはとても優しい目で私を見てたね。


 幸せって長く続かないね。
 きっと知らないうちにお互いを傷つけあってたんだと思う。




 繋がってた手も、解こうと思ったら簡単なもの。

 一緒に歩いてたとき、偶然銀ちゃんと遭遇した。
 そのとき、いとも簡単に私は総悟くんの手を解いて
「銀ちゃんだぁ〜!!なにしてんの!?」
 って、他の男の人のところに行ってたっけ。




 傷、つけてたんだね。

 ごめんなさい、今更後悔しても遅いよね。





「総悟くん、どうしたの?」
 なんか素っ気無い日があった。
「別にどうも無いですぜ」
「なんか変だよ・・・そだっ!!」

 本当は構って欲しかっただけだったんだろう。
 だけど私は気付かないで、土方さんに相談しに行った。

 また、貴方の傷を増やしたのは私。






『さよならしやしょう』

 この言葉、いつか言われるって気付いてた。
 それがダメだったのかな。
 私はどうすれば総悟くんともっと幸せになれたのかな。


「・・・うん」

 お互いにパッと手を離した。

 ズキン、私にも傷がついた。



「ねぇ総悟くん、半年前は・・・幸せだったよね」
 嘘でもでたらめでもない、素直な気持ち。
 総悟くんも頷いて、
「・・・幸せでしたねィ」

 その言葉だけで、今は充分。


 私たちは、“恋人”から“友達”に戻り・・・別れた。







 別れてから、一人であの公園へ向かう。

 とても幸せだった頃を知るブランコは、今も変わらず揺れていた。



「・・・っく・・・」
 あぁ、私ってなにやってんだろう。

「・・・ぅわぁぁんっ・・・ひっ・・・く・・」
 なんで公園で、大声で泣いてるんだろう。




 あの頃から変わらない風景に

 あの頃から変わらない匂いに

 私は何を感じたんだろう。




「・・・ふっ・・・ごめ・・・なさい・・・ッ・・・」


 今だけ、泣かせて。

 立ち直って見せるから。


 あなたの幸せを、心から願うから。