偶然、真選組の前を通った・・・なんて、口実みたいかな??
 私の手には、ちゃっかり買ったチーズケーキ。

 もちろんもう一つは総悟くんの分なんだ。
 私は、あのボケーッとしたあの人が好き。





今日と明日の狭間






「こんにちわ〜」
 ・・・あれ?誰も居ないみたい??
「勝手に入っていいのかなぁ」
 なんていいながらも、私は屯所の門を軽くくぐった。

 本当に誰も居ない・・・御用でもやってるのかな?
 なんて思いながら、いつも演舞のときに必ず一度は覗く、総悟くんの部屋に向かった。

「総悟くんいるー・・・って、オイ」

 障子をそっと開けた私の目に写ったのは、アイマスクをつけたまま眠ってる総悟くん。
 熟睡してる??でもアイマスクには目があるんだよねぇ。

「う〜ん・・・どうしよ」
 とりあえず障子を閉め、総悟くんの傍に寄ってみる。
 相変わらず気持ちよさそうに眠ってらっしゃる。

「・・・これって自分で描いたのかな?」
 好きな模様を描くのは良いと思う。
 でも・・・なんで目?やっぱ土方さんに関係でもあるのかな?

「アイマスクってホントに眠れるのかな・・・」
 ジーッと近寄って見てみる。
 アイマスクもなんだけど、総悟くんってホント綺麗な髪の毛してるよねー。
 金色って光に当たったら光るのかな?

さん、そんなに近寄られたら襲っちまいそうですぜ」
「え?あぁごめんね」
 と、普通に座りなおす・・・ん??

 むくっと起きて、彼はアイマスクを取った。
 いつもの綺麗な目が映る。


「なっ!!お、起きてたの?!」
「誰が寝てると言いやした?」
 にや〜と、不敵そうな笑みを浮かべる総悟くん。
 だってアイマスク付けてたら普通寝てるもんだと・・・もういーや・・・はぁ〜・・・。


「で、どうしたんです?」
 すかさず私は両手で持って差し出す。
「ケーキ買って来たの。一緒に食べよー♪」
「いいですねィ」
 総悟くんはそう言うなり、お皿とフォークを取りに部屋を出た。
 
 変な口実はいらないんだよね。
 土方さんや近藤さんのために用意した口実は、必要なかった。
 そういえば・・・二人はおろか、隊士たちの姿も見えないよーな気が?


「さぁ食べやしょうさん」
「うん・・・ね、総悟くん。土方さんたちは居ないの?」
 すると彼はケロッとした表情でサラッと言った。
「見回りですぜ。最近また攘夷派のテロが後を絶たないらしくて」
「そうなんだ〜。総悟くんは?」
「サボりでさァ」
「えっ?!」

 思わずチーズケーキを落とすところだった・・・。
 総悟くんはもう一度、念を押した。
「サボって、愛について考えてたんでィ」
「・・・愛?」

 土方さん暗殺計画じゃなくて、愛について?

「で、結論は出たの?」
「ハイ」

 なら良かった・・・って、良くないよ!!

「でもね、隊務はちゃんとしなきゃ!」
「明日からしまさァ」
「当たり前だって!」
「それは違いますぜ」

 私の手からチーズケーキを取り、総悟くんはお皿に乗せ始めた。


「当たり前のことなんてないんですぜィ」
「・・・そんなこといわれても・・・」

 隊務はやらなきゃダメだよ!
 なんて強く言う前に、総悟くんが口を開く。

「俺はどんな事だってやりますぜ」
「・・・じゃあ、仕事もやってください」
 すかさず言うと、総悟くんは笑顔だけ私に向けた。


 誰も居なくて、珍しく静かな屯所の中で、私たちはケーキを食べ始める。
 

「・・・さん、明日は何するんですかィ?」
「へ?」
 美味しそうにチーズケーキをたいらげてた私は、一度フォークを置く。

「う〜ん・・・」

 確か、もう原稿は届けたし・・・あっ、買い物しとかなきゃ!

「商店街でお買い物かな?」
 すると、総悟くんは少し考えたようで、手が止まった。

「じゃあ、明日は逢えればいいですね」
「へ?」


 食べ終わったお皿を置いて、総悟くんのほうを見る。
 どういうことかな?・・・彼も食べ終わったらしく、お皿を置いた。

さんが居れば、俺はどんなことでも出来そうな気がしまさァ」
 私の両手を取って、ギュッと握り締めた。


「・・・へ?」
「明日、愛するさんの所に向かいますねィ」
「・・・はい?」


 総悟くんは二皿取って、台所に戻しに行った。


「・・・っちょっと総悟くん!!今なんていった?!!!」

 私は、そんな彼を追っていった。




 静かな中、アイマスクだけが見ていた一つの物語。