私には、いつも聴いているラジオ番組がある。
 それは執筆中だって一緒なんだ。
 ネタにもなるし、それ以上に私の気持ちが癒される。

 恋する女の子って、みんな想いが一緒なんだろうね。





特選ナンバーを聴いて





『さ〜今日も始まりました、ミュージックアワー!!』
「・・・あ、始まった」
 手を止めて、私はラジオを見る。
 ・・・といってもさっきから手なんて動いてなかったんだけどね。

『この番組ではみんなのリクエストをお待ちしてまーす!!』
 私を初め、江戸・・・ううん、全国でこの番組を聴いてるんだろうなぁ。

 私の・・・総悟くんへの思いも通じるかな?なんて淡い期待も寄せてみる。



 特に、きっかけはなかった。
 実際に踊りに真選組に行ってたし・・・総悟くんのおかげでさせてくれるんだけど。
 演舞の勉強にもなるし、嬉しかった。
 それから・・・なのかな?
 いつからだろう。気付けば目で彼を追ってた。

さん」
 名前で呼ばれることが嬉しいと想ったのも、
「演舞上手ですねィ」
 踊りを褒めてくれることで頬を紅く染めるのも、
「屯所に来ませんかィ?」
 街に会って誘われたとき、得したような気分になるのも、

「全て・・・気付けば総悟くんが好きだったからなんだよね。」

 無意識に口に出てた。
『素敵な恋のエピソードと一緒に、これから言う番組に「だいやる」してくださいね!』
 ちょうど番号を紹介してるときだった。

 さすが物書き・・・こういったものは必ずメモしてしまうの。

 はぁ〜・・・胸が苦しいなァ。


『此処でおハガキを一通!R.N“恋するウサギ”ちゃんからです。
“なぜ人を好きになると こんなに苦しくなっちゃうのでしょうか?”』

「お。答え聞きたいな・・・。」
 ペンを置いて、ラジオの方を見る。
 今日は全然執筆してないけど・・・泣くのは担当さんだし、いっか♪

『よくありますよねー。『恋したら胸が苦しくなる』って。
 それはボクが思うに、心が君の事を急かしてるんじゃないかな?
 恋は結果が早く欲しいですからね。そんな時は素直に心に聞いてみたらいかがです?』

「・・・・・・」
 お前はこの恋、掴み取りたい?


「聴いても返事がないのは解ってるんだけどね」
 苦笑しながらも、何処かで返事を欲しがってる自分に気付いてた。
 そこまで鈍感じゃないもんね、私。

『少しは参考になったかなァ?R.N“恋するウサギ”ちゃん!
 この悩みは叶わぬ恋に悩んでる皆さんにも勉強になるねぇー!』

 はい、勉強になりました。

 ただ・・・此処からどうするかが難しいのよね。

『別に掴み取ろうと想わなくてもいいんじゃないのかな??
 たぶん心は迷ってるんだし、ゆっくりでいいとボクは思うよ!!』

「・・・ゆっくり、かぁ〜・・・」

 総悟くんはコレ聴いてるのかな??
 なんて、ラジオ聴きながらも私の頭の中は総悟くんでいっぱいなんだ。

『恋はじっと耐えることが大事だと思うね。
 徐々に相手を向かせて、それから最後の追い討ちをかける・・・みたいな?』

「そんなんじゃ私の心が持たないよ・・・」
 ラジオに返事をしてる私って、変かな?
 でも今銀ちゃんたちは万事屋のお仕事で居ないから、セーフだよね。


『この夏はボクも頑張ってナンバーを選ぶから、恋で悩むみんなも頑張ってね!』
「よぉ〜しッッッ!!!!」

 終わったと同時に、私は扇子を持って出かける。
 この後は真選組で演舞を舞いに行くんだ。
さん、今日も演舞上手でしたね」って言うのかな。
 そしたら、こう言って返してやろう。
「総悟くんが見てくれてるから、私は頑張れるんだよ」ってね。


『「恋は何事も地道な努力とアプローチ!」』

 まってろーミュージックアワー!!

 いつかこの番号で朗報を聞かせてやる!!!!





 その後のこと。

さん、今日も上手でしたねィ。」
 踊り終わった私のところに来たのは、意中の人である総悟くん。
 頬を紅くしながら、今日も「ありがとう」って言う。
 そして、

「総悟くんが見てくれてるから、私は頑張れるんだよ」

 微笑んで言うと、少し彼は吃驚したように目を見開いて。
 そしていつもの微笑みに戻った。

「じゃあ今夜は屯所に泊まってくだせィ」
「へ?」


 爽やかな笑顔のまま、彼は続けた。

「俺だけの前で踊ってくれませんかィ?」



 いつも、こう。

 私が上に行っても、そのまた上に総悟くんは行くんだもん。


 この恋、先が長くなりそう・・・。