いけないことだと思うの。
 だって、相手は好きになっちゃいけない人。

 私、坂田銀八先生に恋をしちゃいました。





今日も先生を探しに





 いつもいつもいつも、思い出すのはあなたの横顔。

、あんな先生の何処がいいアル!」
 隣のクラスの友達、神楽ちゃんは悪態をついて先生を睨んでる。
 私は神楽ちゃんが羨ましいよ・・・だって、Z組だし話もよく出来るし・・・



 私が先生と出会ったのは、1ヶ月前。
 神楽ちゃんと同じクラスの土方くんが、たまたまゴミ箱を蹴り上げたんだ。
「っあ〜・・・」
 私は見てた。散らかしたまま去っていく姿を。
「最低・・・」
 土方くんを睨み、可哀想なゴミたちをちゃんと直してあげた。

 その時。

「悪いね〜うちのクラスの多串くんが」
 ふとゴミ拾いを手伝ってくれたのが、銀八先生。
「いいえ。・・・多串?ま、いっか」
 その時は手伝ってくれるいい先生だな〜としか思ってなかった。
 だけど、拾い終わったとき・・・
、すまんな。よく言っとくから」
 さらっと言われたこの台詞。
 そして、いつもダルそうにしてた顔から、微笑んだ顔。



「その瞬間、ドキッとしたわけよ!」
「ハイハイ、
132回目アル」

 神楽ちゃんは解ってないけど、本当にかっこよかったんだ。
 それ以来、私は職員室前によく出現するようになった。
 ドアから、先生の横顔が見える。

 ・・・はぁ〜・・・
「どうしたヨ?ため息なんかついて」
「いやぁなんかね、結ばれない恋だから・・・」

 先生のこと、諦めるつもりもない。
 だけど、この恋は報われないのがわかってるから、見てるだけでいいんだ。
 ・・・神楽ちゃんに言ったら怒られるから、これは言わないけどね。



 ずぅーっと考えてるの。
 家に帰っても、先生のことばかり・・・
 時々目が合うんだ。だけど逸らしちゃう自分がもどかしい!!
「素直になれー私っっ!!あのボーダーラインを越えたいんだって!!!」



 翌日、私は休み時間に職員室に行く。
「あれー?」
 いつもの位置に先生が居ない。
 何処いったんだろう?気付けば私は見回していた。
ーどうした?」
「ねぇ神楽ちゃん、坂田先生見なかった?」
 偶然通りかかった神楽ちゃんは顔をしかめる。
「坂田ァ?誰だヨそれ」
「え!?神楽ちゃんの担任の先生だってば!!」
「あーアイツそんな苗字だったアルか」
 神楽ちゃん・・・自分の担任の先生の名前くらい覚えてなよ
「アイツなら、中庭にいたネ」
「中庭!?ありがとー!!!」
 聞いた私は、知らずに向かってしまった。

 心の中の先生はとても大きな存在。
 どうしようもなく、銀八先生を探しちゃう。
 少し早く落ちる夕日に影を染めさせながらも、私は中庭に向かった。

「・・・先生だ」
 外で煙草を吸ってる先生の姿が見えた。
 丁度、チャイムの音が鳴って、下校時間であることを告げてくれた。

 ・・・あ、こっちに向かってきた。
 やばい!止まってたら変に思われちゃう!!
 咄嗟に私も前に歩き出した。
 チャイムの音が響き終わった。





 私と銀八先生は、お互い無言ですれ違う。





ー」
 ふと呼ばれ、私は吃驚して振り向いた。
「へっ?」

 そこには、無言ですれ違ったはずの先生が。
「気をつけて帰れよー」
 また、ニコッと笑ってくれた。

 見てるだけでいいかな?
 先生を思うと、また胸が苦しくなるんだ。
 そう言い聞かせてた私の心は、一瞬でその思考を捨てた。

 やっぱ、先生だろうがなんだろうが振り向いて欲しい!
「銀八せんせーさようならっ!!」
 思いっきり笑って手を振ると、先生も手を振り替えしてくれた。

「おーさよーなら」
 先生は踵を返して、又校舎に向かって歩き出した。




 夕日はまた、今度は清々しく微笑んだ私の影を、優しく染めた。