定春と、私。
二人だけの時は、秘密の時間。
私たちは、今日も秘密の話をする。
後ろの正面だ〜れ?
私の家は、同居人の銀ちゃん主宰『万事屋銀ちゃん』という仕事をしている。
メンバーは銀ちゃんに同じ同居人の神楽ちゃん、新八くん。私は違うよ、小説家だもん。
3人が依頼で出かけたとき、私は定春の世話をする。
実際定春は大きすぎるし犬だし、神楽ちゃんも仕事の邪魔になることはよく解ってるみたい。
「〜、お前も一緒に来いよ」
「イヤ」
「オイオイ、天然パーマを触らせてやるぞ?」
「いらない」
「じゃあ、オレのだっていう整理券をあげよう」
「わけわかんない!!!」
私は断固拒否する。
銀ちゃんは尚も私と一緒に仕事がしたいのか、誘うけど終いには新八くんに叩かれた。
「銀さん!!さんは小説家ですってば!!早く行くよ!!」
「んだよ新八ィィ!!お前も思わねぇか?女が神楽一人だぞ??ガキなんかいらねェよォォ〜!!!」
「何か言ったか?」
ゴズッと鈍い音と共に銀時は床とキスをする。
「じゃあ行ってくるアル。、定春よろしくネ」
「うん、任せて!!」
ねーっと隣の定春に微笑む。
「じゃあコイツ連れて行きますんで。」
「回収よろしくねー!!」
新八くんは、神楽ちゃんの後を追って出て行った。・・・粗大ゴミと化した銀ちゃんを持って。
「・・・さて、と」
一つ大きな伸びをする。
家の中は、いつもと違ってとても静か・・・落ち着くなぁ。
「クゥーン・・・」
定春は玄関を見て寂しそうに鳴く・・・なんだかんだ言って定春も銀ちゃんたちが居なくて寂しいのね。
「役不足かもしれないけど、私がいるからね」
定春は私の方を向くと、嬉しそうに吼えた。
お昼ごはんを作って戻ると、定春は自分の尻尾を追い掛け回して遊んでる。
「可愛い〜!」
そんな姿を見てると、定春は気付いたのか、私の方に向かってきて・・・
「あっ」
銀ちゃんのジャンプに躓いて、ズベッと転んだ。
そんな仕草も、犬みたいで可愛い。
「こうやって見ると、定春はやっぱ犬みたいだねー」
でも、違う・・・天人なんだよね、こう、見えても。
お昼ごはんを食べ終わると、私は定春の前に座った。
「可愛い〜!」
ぎゅーっと抱き締めると、ふわふわの毛がとても気持ちいい。
お留守番の時は、いつも私の聞き役に回ってくれる。
いつも言うのは、定春をぎゅっと抱き締めたときなんだ。
「ねぇ〜定春・・・聞いてよ」
「バウ!」
肯定の返事を聞き、私は続ける。
「銀ちゃんったらさぁ〜・・・昨日も朝帰りだったんだよ・・・」
此処2ヶ月、この相談を定春と二人っきりになってはしてる。
なんとなく、気になってた銀ちゃん・・・でも、この思いが恋だって気付いたのは2ヶ月前なの。
真選組の土方さんに、真剣な表情で言ってくれた言葉。
「コラァ!!オレのに手ェ出すんじゃねぇぞ」
それも、土方さんがからかってたときに言った言葉で深い意味はないんだよ。
いつもみたいにおちゃらけて言ったのかもしれない。
でも、あの言葉を・・・あの真剣な表情をみて、初めて恋だと気付いた。
いつもは交わしてた言葉も、交わせなくなってきた。
「あ〜ハイハイ」とか、「あっそ〜」とか、こういった交わしが出来ないから、大声出しちゃう。
それを銀ちゃんは吃驚して出してるものだと思ってる・・・確かに吃驚してる。怒ってもない。
でもね・・・嬉しいなんて思う自分を隠してるんだ。
「絶対女の人と遊んでるんだ・・・はぁ〜〜〜〜なんであんなヤツ好きになったんだろう・・・」
定春は耳をピクッと動かした。
「なんだか悲しくなるよ〜・・・泣きたくなるよ〜定春ぅ・・・」
定春は舌を出した。
「時々嬉しいこと言ってくれるけど、それは本心じゃないことは解ってるのに・・・」
定春はそわそわしだした。
「でも嫌いになれないんだよねぇ・・・てゆーか日に日に銀ちゃんのこと好きになってる・・・」
ガチャッとドアが開いた。
定春は私の手からすり抜けて、後ろの人物のところで迎えた。
尻尾を振ってる。
「嬉しいことを言ってくれるねェ」
私はビクッと震える。
恐る恐る振り返ろうとした私の両目を、何かが覆った。
「わっ!」
「後ろの正面だ〜れだ・・・っと」
ゴツゴツした両手は、男の人だという証拠。
両手で隠されたまま、私は躊躇いがちに答える。
「・・・銀・・・ちゃん?」
「ハァ〜イ正解。さすがチャン、愛の力だねー」
と、ゆっくり両手が離れた。
「ちょっ、銀ちゃんやっぱ聴いて・・・」
思いっきり振り向く私は、きっと顔が赤かったと思う。
「あァ聴いてたよ。2ヶ月間ずーっとな」
「えっ!?なんで・・・」
最後まで私の言葉は発せられなかった。
銀ちゃんが遮って言ったのは、あの台詞。
「は出会ったときから、オレのもんなんだよ」
サラッと言われた。
それに反応するのに、とても時間を要すると思う。
だけど、一つだけは解ってた。
「・・・定春、有難う」
「はァ?」
「定春のこと、愛してるよ」
「なにぃ?!おまっ、二股かァァ!!!」
再び賑やかになったのが嬉しかったのか、私の言葉が嬉しかったのか・・・
定春は、嬉しそうに一つ軽く吼えた。