真選組屯所内で、大事件が起きた。
まぁ大事件は大抵がきっかけであり、原因だろうが。
「こんにちわ〜〜!」
むさ苦しい屯所内に響く、一輪の薔薇のような高い声。
その声に反応して隊士たちが門に集まってくる。
茶色に赤のメッシュが入っている髪を揺らし、扇子を背負っている娘。
彼女こそが ・・・大事件の発端だ。
「さん、どうしたんですか?!」
隊士のうちの一人、山崎の声にパァッと表情を明るくさせる。
「実は、近藤さんたちに会いたいの」
「局長たち・・・ってことは、副長もですか?」
「うん、出来ればね。」
「俺は良いんですかィ?」
山崎の後ろから聞こえた独特(過ぎる)口調にの顔も綻ぶ。
「総悟くんにもお願いしたいなぁ」
吃驚していた山崎の脇から出てきたのは、明るい金の髪を持つ沖田総悟だ。
「じゃあ行きましょうや」
の手を取ったが、沖田はそこから動かなかった。
いや、正確には動けなかった。
「あっ、待って」
“居ない”ことに気付いたのか、は横を向いて手招きをした。
ゆっくりゆっくり、フェードインしたものを見た隊士たち(沖田・山崎含む)が仰天した。
なぜなら、の隣で手を繋いだのが5歳ほどの男の子だったからだ。
「・・・さん、マジでか」
「は?」
「そんな・・・さんが・・・」
「いや、総悟くん?山崎くーん?」
ただ一人、は平気な顔で居た。しかし他のみんなは全員ショックを受けたように動かない。
「総悟くん、行くよー」
石化した人達を放って、は両手を引っ張って進んでいった。
左手は沖田を、右手はその子供を。
両手を引っ張るも大変そうだが、近藤の部屋まですぐだ。頑張って引っ張っていった。
そのころ、近藤の部屋では
「トシ、最近お妙さんが冷たいと思わないか?」
「はぁ?元からじゃねェか」
ちょうど近藤自身と副長である土方が雑談していた。
「お妙さんだけじゃなくてちゃんも冷たいんだよ・・・」
「そうか?近藤さんは女の扱い方を知らねぇんじゃねぇのか?」
「お前は引っ掛けては捨てて「聴こえのわりィ言い方済んじゃねェよォォ!!!!」
丁度この叫び声を聞いていたは、丁度いいと思って躊躇わずに障子を開けた。
「こんにちわー!」
「ぅおわぁっ!!!!」
この変な反応は土方だ。
「ちゃんじゃないかァァァ!!!!」
抱きつこうとした近藤を上手く避け、笑顔を向けた。
「どうしたんですか、土方さん?」
「あ、いや、、さっきの話、聴いてたのか!?」
なぜか途切れ途切れになってる。アザラシのように搾り出すように言っていた。
しかしはケロッとした顔で
「何のことですか?」
「・・・・・・いや、いい」
それどころじゃない、とは近藤・土方・沖田を並べる。
「実は紹介したい子が居るんです」
一度外に出て、そこから5歳ほどの男の子を連れてくる。
やっぱり沖田と同じように二人は硬直して、
「・・・俺か?」
「トシ!?お前何時の間にちゃんに手を!?」
「・・・歯ァ食いしばってくだせィ」
「違う!!断じて違うぞ!!冗談だ!!と寝た記憶なんて無いぞ俺ァ!!!!」
「土方さん、往生際が悪いですぜ。何プレイだったんですかィ?」
「プレイだとォォオ!?」
「だから違うって言ってんじゃねぇかよォォォォ!!!!!」
の目の前でケンカをし始める始末。
当の本人も唖然としてその様子を見ていたが、
「・・・なんですか、皆して。みんなこの子を見た途端変になって。」
「いや、なるだろ普通!!!!!」
「誰の子なんだァァァ!!!」
「まさか万事屋の旦那ですかィ?じゃー殺りに行きまさァ、安心してくだせィ」
上から土方・近藤・沖田。
全ての言葉を聴いたは少し固まり、次第に顔が赤くなっていった。
「なっ・・・なぁぁっ!?なんで子供なんですかぁぁぁ!!!!」
「「「は?」」」
「何時私がいいました!?つか子供が居るほど老けてません!!!!!」
「・・・じゃあソレはなんだ?」
土方は隣の子供を指差したが、の大声が飛ぶ。
「迷子ですよ!!!此処は警察でしょぉ!!!!」
・・・あぁ、なんだ迷子かよ。紛らわしいなぁ・・・でも、違うのならいっか。
3人の心情はそれで一致していたりして。
ついでに言えば、外で聞き耳を立ててた隊士たちもそう思っていたりして。
一つ咳をして、は続けた。
「迷子です。名前は荒川 水樹くん、5歳です」
隣に居る水樹は怖いのか、ギュッとの袖を握っている。
こうして屯所内に流れた“隠し子騒動”は治まった・・・しかし。
「お姉ちゃん、あの人達怖いよ〜!!」
と、水樹はに抱きつく。
何処ぞのイチャイチャしてるカップルかよ。なんて思ったが、
「そう?すっごくいい人達なんだよ?」
なんて優しくあやす様に頭を撫でてあげるが居る限りそんなこといえない。
しかしさり気なくにベタベタする子供に、内心土方や沖田は
「ちっ、アイツガキの癖にうぜぇヤツだ」
「さんが居なくなった時は覚えてろィ」
なんて思っていた。
「へ?二人とも何か言った?」
「「いや何も」」
しかし、の前では絶対頭が上がらないのだった。