「にゃ〜にゃ〜にゃ〜にゃ〜・・・」
台所で、妙な歌声が聞こえる。
この声は、だ・・・ベートーベンの第九を歌っている。
「出来たっ!!」
やがて歌声は消え、満足そうな表情だけが残った。
向こうでは、朝から賑やかなテレビが音を占領している。
『3、2、1、あけましておめでとォォオオォ!!!!!!』
「へっ!?もう明けてるよ!?」
ふと聞こえたカウントダウンを不審に思い、は台所から顔を出してみると・・・
「あけおめ〜〜キャッホォォオウ!!・・・さ。もう1回見るアル」
「おい、いい加減裏番組のカウントダウン見ようぜ。お天気お姉さんがやってんだよ」
ビデオリモコンを駆使して叫ぶ神楽と、指示する銀時が。
せっかく頑張って造ったのにこれかよ。
は思いっきり突っ込もうとしたが・・・絶好のタイミングである人物が入ってきた。
「あけましておめでとうございますー」
「あっ、新八くん。あけおめ!」
きっちり挨拶には挨拶を返さなきゃね・・・ボケに返すのは?
「3、2、1、あけおめ〜〜〜〜〜キャッホォォオオォウ!!!!!」
「テメェ神楽ァァァアァ!!お天気お姉さんの声が聞こえねぇじゃねぇかよ!!!」
「そんなしょうもないもんにビデオ取ってんじゃねェエエェェ!!!!!!」
「「よっ、メガネ」」
「お前ら今年も相変わらずだなァァアアァ!!!!!」
今年も相変わらずの賑やかで、思わずの顔も綻ぶ。
「うん!突っ込んでくれたし、続き〜♪」
引き続き、第九を歌いながら台所に戻っていった。
そして数分後、おわんに丸いもち2つと出し、煮物などを入れ終えた。
「新八くん、机の上整理してくれる〜?」
「はーい!」
唯一使える人間なため、も色々と使ったりする。(突込みとか、整理とか)
そしてそれに気付いていない新八は、今年も相変わらず使われていた。
結局人間、変われないのだろう。
「はいみんな、お雑煮出来たよー!」
「「「は〜〜い♪」」」
バカ煩いテレビを消し、みんなお雑煮を食べるために定位置についた。
「はい!特製お雑煮よ!!」
それぞれの前に箸を置き、次におわんを置いた。
「僕まですいません」
「そーだ。お前はゴリラの女の出し巻き卵でも「没収」あぁっ!!!!!!何しやがる!!!」
銀時の前のおわんは、の手によって神楽の前に並んだ。(そして神楽の前には5つのおわんが並ぶ)
「お妙さんの悪口は神風に誓って許さん」
「神風ってなんだよォォ!!!お願いだから許してください!!!!」
「・・・しかたないなぁ・・・」
毎年、のお雑煮だけが生きがいの銀時にとって、没収ほど辛いものがないだろう。
「神風様に誓いなさい。」
それだけ言って、許しが出る。
即行銀時は神楽の元にあるお雑煮を取ろうとしたが・・・
「あ、もうないネ。」
「何ィィィィイイィァァァアァ!!!!!!!」
5つのおわんは既に空っぽだった。
「・・・・・・」
「ごめん、全部入れちゃったから・・・ないのよね・・・」
「何だとォォォオオォォオ!!!!!・・・フン!銀さんなんてもういいもーん・・」
すっかりキレて拗ねた銀時を、(深くため息を付いた)が助け舟。
「銀ちゃん、私の食べたらいいよ」
「マジでか!??!!チャン大好きだ!!」
「ハイハイ。」
の素っ気無さにも動じないほど、銀時はお雑煮に夢中だ。
「銀さんが一喜一憂するほど・・・すごいのかな・・・」
と、新八は一口食べてみた。
「・・・美味しい!!!」
「ホント!?」
「美味しかったアルよ!!!」
「良かった〜〜〜!!二人はまだ食べたことなかったでしょ?だから心配してたの・・・」
新八は拍車がかかったようにガツガツ食べ、そんな様子を神楽は見ていた。
「の雑煮は天下一品だからな!今まで食べたこともない味だろ!?魅惑の都市のような・・・」
「わけわかんないって!!!・・・そりゃ今まで食べたことないでしょうよ」
は台所に向かい、あるものを取り出してきた。
「美味しいだしの原因は、これよ!!」
ババ〜〜〜〜〜ン!!!!!と出されたのは、『味の旨み醤油:濃』だった。
「「「醤油!?」」」
「コレは地方で食べる味だからね。本を読んだ甲斐があったわ〜♪」
再びは台所に戻り、そのまま帰ってこなかった。
洗い物を片付け始めたのだろう。
「・・・・・・」「・・・・・・」「・・・・・・」
時間が止まったような居間で、大声が発せられたのは数秒後だった。
「「「特製になってねェじゃんかよォォォオオォ!!!!!!!!!」」」