仕事の邪魔するヤツは・・・『死』決定v





「さぁ〜出来たっv」

 は立ち上がり、出来上がったばかりの書類を袋に詰めた。
 たった今まで書いていた小説は、本に刷るんじゃなくて毎月連載しているものだ。
 こう見えても
天才と謳われている。

「じゃあ行ってきまーす♪」
 返事がなくてもいいのか、背中に扇子を背負っては嬉しそうに出て行った。

 ・・・返事がないのが当たり前なのかと思ったのか。





 確かに・・・部屋の中で起きている人なんて
誰もいなかった。






 時は数十分前に遡る。

 銀時はただジャンプを顔の上に乗せて眠っていて、新八と神楽が煩くしていた。
「神楽ちゃん、トイレットペーパー買って帰ってくれた?」
「はい」
 新八の掌に乗せられたのは、どう見ても新聞紙を破ったもの。
「コレの・・・
コレの何処がトイレットペーパーなんだよ!!!!
「私は新聞紙をトイレットペーパーと呼ぶ人の味方アル」
「だからその概念を捨てろって何度も言ってるだろォォォ!??!!!」
ガイネンを捨てるのはお前ネ!・・・ガイネンってなに?」
「知らないのに使ってんじゃねェェ!!!!」

「あーお前ら、もう少し静かにしないとだなぁ
・・・「大体アンタがしょーもないこと教えなかったらよかったんだよ!!!!」
 ジャンプを退けて銀時は呟くように加わったが、その声は新八に消される。


 ぎゃあぎゃあ騒いでいた部屋は、一つの大きな音で止まった。

ス パ ァ ァ ァ ン ! ! ! ! ! !
 襖を開ける音が最大限にして蘇った。(ぇ)

 三人の目は、襖に集中した。
 その中で銀時一人が呟く。
「やっぱりな・・・俺は知らんぞ」

 中から、独特の裾が広がった着物着用のが出てきた。
 しかし目は閉じられ、左手に3本のシャープペンを握っていた。


「・・・さん?」
「もう仕事は終わったアルか?」
 二人は何もわからないのか、ケロッとしてに言う。
 しかしはというと・・・まだ目を瞑ったまま。

「・・・・・めぇら・・・」
「「え??」」

 思いっきり顔を上げ、3人を睨んだ。


「てめぇら、執筆中に騒いでんじゃねぇぇ!!!!」
 明らかにいつもと話し方が違う上に、は睨んだところに左手を振った。


 ソレは思いっきり突き進んで行き・・・

「ギャッ!!」
「うわおっ!!!」
「なんで俺まで!?」


 ・・・と、三人のすぐ下に刺さった。


「これ以上騒いだら・・・
堕とすぞ
 思いっきり睨み、もう一度大きな音を立てて襖を閉めた・・・。



「・・・はい・・・」
「・・・キャラ変わってたヨ・・・」

「だ〜から言ったろ?」

 ただ一人、銀時の言葉を聞いて新八と神楽ははたと気付く。

「まさか銀さん、知ってたの!?」
「なんで教えないアル!!!」
「俺は言ったけど?『あーお前ら、もう少し静かにしないとだなぁ・・・』って」
「聞こえねェ声で言ってんじゃねぇェェ!!!!!」
「しかも容量わかんねぇんだよ!!!!!」

「あ、バカでけぇ声出すんじゃ
「「テメェにだけは言われたくねぇんだよォォォ!!!!」」



「「「あ。」」」





『万事屋銀ちゃん』から、3つの悲鳴が聞こえた・・・。





 そして、冒頭へと戻る。

 家を出たは、その足で出版社へと向かった。

「原稿げ〜んこぉ〜出来た〜〜♪」
 なんとも間抜けな歌を歌いながら、は軽い足取りで歩く。

 しかし、その足取りは徐々に重くなり、やがて停止した。


「あッvvちゃんじゃないか!!!」
 ハートたっぷり飛ばし、最初に発見したのは御馴染み真選組局長の近藤勲。
 変な走りでのところまでやってきた。
 
「・・・局長・・・実は私これから
「どうだ?!屯所に来て一緒に愛を語ろうじゃないか!!」
「・・・あの、だからこれから
「トシと総悟には内緒にしておかないとなァ〜♪」
「・・・・・・聞く気あります?「
ちゃんの大好きなチーズケーキも」ガァン!!!!

 大きな音の直後、近藤は倒れこんだ・・・間抜けなポーズで。

 の手に持ってたのは扇子。
 大きな扇子は軽いけど鉄で出来ている。
 近藤の頭に、大きなこぶがみえた。

 仕事を遂行するためなら、容赦ないのが
 哀れ、近藤・・・。



「さぁ〜、気を取り直して原稿を届けに行こう!!」
 は再び歩き出した。
 全ては原稿を今日中に出版社に持っていくため。

さん!」
 ふと呼ばれ、不服そうに足を止めて振り返る。

 そこに居たのは、同じ真選組の隊士、ミントン山崎だ。

「山崎くん・・・」
 いつもなら近藤と同じように、嬉しそうに話すのだが・・・今日は違った。

「ごめんなさいッ!!」
「え?」

 そう謝って、の手が動いた。


 ガイィィン!!!
 鈍い音と共に山崎は倒れた。

「はぁ〜・・・仕事を終えたらまた戻ってくるからね」
 扇子を一緒に置いておく。

 は再び長くなると思って、山崎をも殴ったのだった。



 扇子のなくなったは、今度は誰にも会わないように警戒しながら歩いた。
 しかし、その願いはいとも簡単に崩れ去る。


「おい」
「え?」
 振り返ると、そこに居たのはヘビースモーカーの土方。
 いつもに増して瞳孔が開いている。
、何してるんだ?」
「え・・・あの、いや・・・」

 どうしよう・・・これ以上長居したら出版社にいけない!
 は焦りながら、目だけを動かして叫んだ。

「・・・あっ、土方さん!!
マヨネーズ特売ですよ!!」
「何ィィ!!??」
 土方がを指すほうを見た途端・・・

「ごめんなさい!!」
 サッと鞘だけを抜き取り、それを土方の頭に思いっきり振り下げた。


 あーあ、副長ともあろう方がマヨネーズでやられるなんて・・・。

 倒れた土方を見ながら、はそう思ってしまった。



「さっ、急がなきゃ!!」
 鞘を捨て、は走り出した。
 しかし・・・此処で思わぬ誤算を招いたとは誰が考えようか?


「やっと出版社到着!!」
 中に入ったは、手っ取り早く受付の人に渡してもらおうと思った。

「・・・では、その書類をお願いします」
 此処で出せば、もう終わり・・・しかし?

「はい。・・・あれれ?あら??」
 肘に挟んであったはずの原稿がない!!!

「えっ!?何処!?」
 しかし、持ってない以上何処かで落としたに決まっている。


「・・・ど、どうしよ・・・」
 山崎くんか土方さんを殺ったときに落としたんだ!!!

 時計の針は待ってくれない。
 締め切りは刻一刻と迫っていたそのときだった。


「もしもしお嬢さん、落し物しやせんでしたかィ?」
「えっ?あぁっ!!」

 振り向いたは吃驚した。

「こんにちは、さん」
「総悟くん!!なんでここに!?」

 そこに居たのは、沖田総悟・・・またしても真選組の人だ。

「山崎が倒れていて、そこにさんの扇子が刺さってたんでね」
 渡されたのは、確かに山崎の隣に刺した扇子。
 沖田はそんなことのために・・・しかし、何処で此処に居るのか知ったのか?
 
「そのあと土方さんが倒れててさァ、近くにコレも落ちてたんでィ」
「へ?」
 渡されたのは、にはよく見覚えがあり、今まさに必要としているものだった。

「原稿!!有難う!!!」
 原稿の封筒に出版社の住所が書いてあり、沖田はそれで分かったのだろう。
「お役に立てて光栄でさァ」
 ニコッと微笑んだ沖田は、頭に輪のついた天使のよう。

 すぐさま振り返り、の口はこう発した。

「コレがその書類です!!!」




 無事、締め切りの時間を前に提出することに成功しただった。
 沖田が拾わなかったら締め切りに間に合わなかっただろう。
「総悟くん、本当にほんっとうにありがとう!!!」
「いいってことよ。」
 爽やかな笑顔で沖田はそう言ってくれた。


「・・・ところでさん、土方さんと山崎はなんで倒れてたんですかィ??
「・・・・・・・・・・・へ?」
「それに、近藤さん見ませんでした?どこいったんだあの人ァ」
「・・・・・・・・・・・えっと・・・」
「万事屋の旦那も見えやせんぜ??」
「・・・・・・・・・・・まさか総悟くん・・・?」


 は悟った。


 そして沖田はにこりと笑った。
 爽やかでも天使でもない・・・例えるなら
悪魔のような顔で。




 は、仕事中はその作業に専念したほうがいいと思っていた。
 しかし、多少の余裕も必要だということを、初めて実感したのだった・・・