「あ、リピートかけてなかった」
一曲が終わり、少し経つ。
音がないことに気付いたは、手元にあったリモコンを持ってスイッチを押す。
今度はリピートもかけておいた。
すると、綺麗な音色が聞こえてくる。
最近、有名になってきたアーティストのアルバムだ。
実を言えば、最初はタイトルの「アマーティ」に引かれたのだ。
アマーティとは、楽器メーカーの「Amati」のことだろう。
アマーティならうちのピアノもそうだ・・・と、は気付けば手に取っていた。
幻想的なメロディ、エスニックな曲調、たまにゆっくりな曲もある。
聞いたはすぐに心を捕えられた。
「よしっ、出来た」
更新を終え、アップロードをする。
丁度そのとき、大きな鐘の音が聞こえた。
「誰だろう?」
チャイムを聴き、は立ち上がる。
玄関から来たのは、友達の一人である莉璃。
「いらっしゃい」
「やっほ〜泊まりにきたよ!」
「飛鳥はどうしたの?・・・あ。」
「そう、お気づきの通り飛鳥は家族旅行中なのよ」
飛鳥は夏休みになると必ず家族旅行に参加する。
以外と家族思いなのだ。
「あ、これ知ってる!いい曲よねー」
「そうそう、莉璃も良いって思ったんだね?」
莉璃は微笑んだまま、言った。
「なんか聞いててと志摩くんを思い出すからよ」
「・・・へ?」
の脳裏に疑問が浮かんだ。
それをそのまま莉璃に伝える。
「なんで私と志摩くんが?」
「・・・え。気付かなかった?」
莉璃は、歌詞を見せてと言った。
言われたとおり、は莉璃の元に歌詞を持ってくる。
「いい、よく聴いておくように」
そう笑って、莉璃は歌詞を読み始めた。
それは、最初の曲「ピアニッシモ」だった。
小さい とても小さい私の思いを
儚い とても儚い小箱に詰めて
ガラスケースに飾りゆく
私は あなたへの想いを忘れていく
それでも 微かな光は終えない
楽譜に刻み奏でゆく
こんなピアノで
なにが生まれゆくのか
遥か想いなんて
やがて消えると思ってた
霞んできた照明に
あなたの光が燈る
こんなにも愛が積まれて
身動きできない私
一番を歌い、莉璃はを見る。
彼女は涙を流していた。
「・・・ね?」
「・・・ホントだ・・・」
今まで、何を聞いていたのだろう。
曲ばかりに囚われて、歌詞を聴こうとしてなかった。
「・・・・志摩くんに会いたい?」
は頷く。
いっておいで。
莉璃の言葉には顔を上げた。
「・・・ごめんね。すぐ帰るから」
「いいよ。今日は泊まりに来たんだし」
は、携帯を持って志摩の家に向かった。
「・・・の恋はどうなることやら」
莉璃は微笑みながら、リコに問いかけた。