「・・・どうする?」
「・・・・・いや、どうもこうも・・・」
 は上を見た。
「動くのを待ったほうがいいと思うけど・・・?」






停止したエレベータ






 それは、5分前だった。
 香の仕事場に遊びに来ていた志摩とは、彼とランチの約束をしたのだ。
 香は着替えると1階に向かうと言っていた。
 そして、先に行っておこうとした志摩とは、現時点で7階にいた。

 誰が階段で降りる?
 その言葉通り、志摩たちはエレベータを呼んだ。
 いつもどおり、正常に動いていたエレベータ。

 誰が止まるなんて予測する?


「・・・どうする?」
「だから、復旧を待ったほうがいいって言ってるだろ」
 二人は唖然としている。
 香を待たせてるのに・・・いや、それ以前に自分達は助かるのだろうか。

「あ、棍で壊してみよっか」
「ばっ!請求書はどうするんだ!」
「・・・あぁ・・・そうだっけ」
「永倉屋で請求させろよ。よろず屋は知らねぇ」
「んなっ!!」

 が志摩を見た途端、フッと明かりが消えた。
 多分停電したのだろうが、にとっては厄介なものだった。

「ぅわあっ!!」
 の叫び声が響く。
「なんだ、たかが停電だろ?」
「く、暗くなると寄って来るんだもん!!」
 ・・・何がよってくるのかは、敢えて聞かないことにした志摩だった。

「ぅ〜・・・早く直れー・・・」
ってホント暗いのとか苦手なんだなー」
 涙目でエレベータに訴えていたは、クルッと後ろを振り向いた。
「ちょっと。別に怖いんじゃないんだって!怖くなんか無いんだからね!!」
 しかし、暗闇では分からなかったが、志摩は弱点を見つけたようでニヤニヤしている。


 突如、ガタンッと大きくエレベータの箱が揺れた。
 コレにはだけじゃなくて志摩も驚いた。

「きゃああっ!!」
「うわっ!」
 振動でバランスを崩したは、フラフラッとよろめく。
「おい、大丈夫か!?」
 志摩はそんなを抱きとめた。

「・・・・こ・・・・怖い〜っ!!ごめんなさい怖いです私が悪かったからどうにかしてー!」
 怖さがピークに達したのか、は志摩の方に向きかえり、泣きついた。
「お、おいっ!おちつけって!!」
「もういやー!!」
っ!!」

 志摩の声にビクッと体を震わせるが、時期に怖さによる震えは収まってきた。

「・・・落ち着いたか?」
「うん・・・でも、怖い・・・」

 ただでさえ、暗いところがキライなだ。
 その上密室だとなおさら怖いのだろう。

「おれが居るから・・・もう大丈夫だ」

 の頭を優しく撫で、安心させるように言った。
 いつもはケンカばっかりなのに、こんなときにお互いが好きなことを実感するのだろう。




 そのとき、突如エレベータ内が明るくなった。
「「は?」」
 二人が、丁度天井の明かりを見たときだった。
「・・・あっついねー二人とも」

 エレベータが開き、そこにニヤニヤしてる香の姿があった。

「「んなっ!!!香ちゃん!!?」」

 そう、エレベータが動き出して、香が呼んだ所にこんな場面。
 と志摩は素早く離れた。
 ソレはもう、一瞬の出来事だった。
 二人の顔は真っ赤だったろう。

 それは、当分香にいじられることを予測していたのだった・・・・。