「・・・手紙?」
 滅多にこない手紙。
 ほとんどの人はメールでやり取りするにとって、少し新鮮なものだった。
「誰からだろ」
 手紙が嬉しかった。
 それ以上にその相手からなのが、嬉しかった。

「・・・志摩 義経・・・」






Happy Letter






 新聞を取りに来たはずなのに、は手紙だけを持って家の中に入った。
 リビングに向かうと、リコがソファからを見る。
「リコ・・・志摩くんから手紙が来たの」
 嬉しそうな顔で、しかし意外な表情をしては言った。
 はさみを持ってリコの隣に座り、縦にして持った。
 トントン、と机に当て、はさみで丁寧に切った。

「・・・なんで手紙なんだろう」
 ふと、呟いた。

 確かに、志摩は機械に強い。
 いつもやり取りはメールで、こんな原始的なやり方をする人ではない。
 ・・・ま、いいや。
 は微笑んで、中から手紙を取り出した。

 手紙は1枚、他に何か入っている。
 逆さにすると、シャラッと音がして何か落ちてきた。

「・・・これ・・・」
 の手に乗ったのは、綺麗な星のピアスが1つ。
 少しながいチェーンと、小さな星や大きな星が一緒に揺れる。

「え・・・なんで?」
 はピアスを腿に置き、手紙を読み始めた。



 
 よっ、驚いたか?
 実は、特に用事はないんだけどよ、なんか手紙が書きたくなって。
 誰かに書きたいなと思うと、お前が出てきたんだ。

 そうだ、そのピアスやるよ。
 依頼で貰ったから、良かったら使えよな。
 丁度、そういうのが好きだろ?

 また涼みに行かせてくれよー。
 あと、依頼なんかは言えよ。
 お前一人で突っ走りそうだからな。

 んじゃ、この辺で終わるとするか。
                      志摩 義経



「・・・なんか、内容ないなぁ・・・」
 しかし、打って変わっては笑顔だ。

 そして、再びピアスを見る。
「丁度一つじゃない」
 鏡の前に行き、左側・・・まだ開けたばかりの穴に、星のピアスを当ててみる。
 キラキラ光る星は、無数の数に見えた。

「・・・・あ、そだ」
 リコを一撫でし、手紙と封筒をピアスと一緒に持って2階に上がった。
 自室に入り、すぐに引き出しを開けた。
 そこに、兄からの誕生日プレゼントの小箱がある。
 開けると、「華麗なる大円舞曲」が流れ始める。が一番好きな曲だ。
 封筒のサイズに合い、この中に志摩からの手紙を入れた。
 そして机の上に登り、天井からぶら下がる棚を眺めた。

 目当ての細いファイルを取り出し、そこから便箋と封筒を取り出した。

「お返事書かなきゃ」
 ペンを持ち、返事を書いた。
 5分もかからない、1枚だけの便箋には、色々なことを書いていた。
 80円切手を貼り、封筒を閉じる。




「リコ、散歩いこっか!」

 手紙を持ったまま、はリコと共に散歩に出かけた。

 紅いポストに入れられた一通の手紙は、彼の元へ向かう。