私は、志摩くんが好き・・・らしい。
 確かに、たまに実感は出来るけど、あんまり・・・わかんない。

 ・・・でも、私は志摩くんが好きなんだと、思う。






しゃぼん玉に込めて






「ねね、!志摩くんとはどうなの?」
 それは、莉璃の一言から始まった。
 どうって・・・別に?
 私はその通りに返してみた・・・けど、案の定
「えっ!まだ実感できてないの?あんたほんと鈍感ね・・・」
 飛鳥が叫ぶ。
 ・・・いや、たまに実感は出来るんだけど。

 だって、助けてくれるときとか凄くドキッとするんだよ?
 家に居てくれると、最近は凄い安心する。
 ケンカも、実は楽しんでしてるしね。

 でも・・・行動はどうやってすればいいの??


「まさかさん?行動の起こし方が分からないとか?」
 うっ・・・流石莉璃・・・
 図星だった私は冷や汗タラタラだよ。
「さすがクイーンオブ純情」
「なによそれ・・・」
のことに決まってるじゃない」
 莉璃と飛鳥は楽しそうに微笑んだ。

 ・・・遊ばれてる。私の直感がそう告げた。


「・・・そんなあなたに、今校内で流行ってる方法を教えましょう」
 資料を持っていた飛鳥は、私の方を見た。

 方法??
 なんだろう??

「どんな方法?」
 それでも、知りたい。
 ・・・・悔しいけど、私は志摩くんが好きなのよ。

 よろしい。と飛鳥は微笑み、資料を読み上げた。

「最近巷で流行となっているのが、しゃぼん玉。
 それに意中の人への思いを込めて飛ばすと、相手まで気持ちが届くと噂がある。
 校内でも人気があり、3人に1人は知っているという情報に達した」

「・・・しゃぼん玉ぁ?」

 それって、あのしゃぼん玉?
 それに思いを込めて吹くと、飛んでいって意中の人に届く?
 そんなことってあるの?
「・・・疑ってるでしょ」
 莉璃の言葉にぎくっと肩を震わせる。

「・・・・ハイ」
「へ?」
 ふと、手を掴まれて何かを握らされた。

 なんだろ・・・・・・・・って、はぁ!??

「これで試してみなさい」
 子供を見る母親のような目をして莉璃は言った・・・けど。

「何で持ってるの!?」
 私の手に握ってるのは・・・しゃぼん玉。
 ってことは、莉璃もしたことあるんだ。

「まぁ、百聞は一見に如かずって言うし」
「はっきり言って、いらないんだけど」
「志摩くんが好きなんでしょ?」
「うっ・・・・・・」

 そ、それを言われると困る。

「・・・使わせていただきます」
「「宜しい」

 まんまと、二人のペースに乗せられた私だった。




 家に帰ると、早速実行してみた。
 絶対でまかせに決まってるんだけど、コレで自信を付けてアプローチってやつをしてみる気でね。
 リコと庭に出て、私は数年ぶりにしゃぼん玉をした。


『志摩くんが好きだよ』って・・・込めながら。
 我ながら恥ずかしいけど、やり出したら結構面白い。

「リコっ!ほらほらしゃぼん玉だよ〜!」
 ワンッと吼え、リコは上に上がるしゃぼん玉をただ見つめていた。
 途中から気持ちを込めるのを忘れて、やりこんでいると。
 ワンッ、ワンッとリコは私の方に向かって吼え始めた。

「リコ?」
 どうしたんだろ・・・

 でも、コレは私に向かってじゃなくて門に向かってたのを、私は気付かなかったんだよね。




「何やってんだ?」
 突如聞こえた知ってる声。
 でも、今は止めて欲しかった!
「なっ、志摩くん!?」
 振り向くと、呆れたような志摩くんの顔が。
 また勝手に・・・じゃなくて、咄嗟にしゃぼん玉を後ろに隠した。

「何か隠したか?今」
 気付いてないけど、どうしよう・・・
 すると、傾いてたみたいでしゃぼん玉液が流れ落ちた。
「・・・しゃぼん玉してました」

 子供だっていうのかな。
 でも、キミへの思いを込めてしてたんだけど・・・途中、遊んでたけど。
 まさか本人が来るなんて思わなかったんだもん。

「・・・って好きなヤツ居たのか!?」
「んなっ!!」
 吃驚したと思えば、ありえない言葉。
 な、なんで!?バレたの!?

「なんでそんなまたっ!」
「だって・・・しゃぼん玉に好きなヤツへの思いを込めたら伝わる・・・とか、香ちゃんが言ってたぞ?」

 うっ・・・・

 す、鋭い香ちゃん。
 私がやるって分かってたのね・・・

「で、誰なんだ!?」

 ・・・い、言えない言えない。


 でも。
 キミが好きなんだよって言いたい。
 莉璃と飛鳥にはムカつくけど。
 やっぱ私はあの二人の友達なだけあるわね。



「志摩くんだって言ったら、どうする?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」




 きょとんとしてたけど、時期に志摩くんの顔が赤くなる。

「なっ!お、おれぇっ!!??」
 そんなに意外だったんだ・・・ちょっとショック。
「嘘だって」
 きゃははって笑うと志摩くんは照れた顔を隠そうと必死だったみたいで、

 相当ムカついてたのは気付かなかった。
 もちろん、ニヤリと不敵に笑ったのも。

「・・・・。おれはお前が好きだけど?」


 ・・・・・・・・はい?


「へっ!??!?」

 私の動きが止まった。


 い、今なんて・・・・?
 好き!?志摩くんが??

「え・・・え・・・・えぇ!?」
 やっばい・・・顔、赤いわ・・・
 だって、そんなこと言うとは思わなかったんだもん・・・

「・・・プッ・・・あはははっ!!!!」

 すると、突然志摩くんは笑い出した。

 ・・・まさか。


「そ。仕返しだ!!!」
「なっ!」
 危ない!返事を返しそうになった!!

「この・・・リコ!!いけぇっ!!!」
 ワンッと誇らかに吼え、リコは志摩くんを追いかけ始めた。
 もちろん志摩くんは逃げたけどね。


 青い空、笑わないでよ。
 本気にしちゃった自分が一番恥ずかしいんだからね。
 でも、私にアプローチはまだ早いわ。
 そう思って、ゴミ箱に行った私はしゃぼん玉の容器を入れた。

「ちょっ、お前が最初にやったんだろ!?」
「いいからリコ、噛んじゃえ!!」
「んなっ!!!」


 庭からは、私の笑い声と志摩くんの焦り声が聞こえていた。