実は、いま学校では流行ってるものがある。
 それは、「早決めゲーム」・・・どっちかに迷ったときに凄く便利だ。






早決めゲーム






 も、よく「早決めゲーム」を使うのだが、この事件以来あまり使用しなくなった。
 このゲームにはルールがあったのだが・・・改めて改正したくなった。
 と言っても、の聞き方も悪かったのだが・・・

「なぁ〜、腹減った」
 ソファで寝転んで、そう志摩は呟いた。
 コイツは・・・人の家を思いっきり自分の家だと思いやがって・・・
 胸の辺りで拳を作っては見るが、呆れてそれを解く。

「・・・何か作ってあげる」
 惚れた弱みだろうか。
 結局は冷蔵庫を開くハメに。
 と言っても、自分のも作るつもりだから別にいいらしいが。

「志摩くん」
 ん?と呼ばれた本人は起き上がってを見る。
 の手にはパスタの麺と素麺の汁が握られていた。

「今ある材料で出来るのは、素麺とレトルトパスタ」
「レトルトかよ・・・」
「うん。今日の夕方に買い物予定だからね」


 で、どっち?
 と志摩の前に突き出す。

「夏は素麺だよなぁ・・・でもパスタも捨てがたいぞ」
 腕を組み、二つの材料の前で志摩は考え込んでしまった。
「早くーおなかすいたー」
「ちょっと待てッ!あ〜・・・どっちだろうな・・・」
 そろそろ腕がだるくなってきたのか、の脳裏にあるゲームが浮かんだ。

「あ、そうだ!」
「ん?どうした?」
 彼女は不適な笑みを作り、素麺の汁の方の手を上げて言った。

「今からの質問に、素早く直感で答えてください!」
「はぁ?いいけど」

 不思議そうに凝視する志摩に、は早口で叫んだ。

「それでは問題ですっ!暑いのと寒いの、どっちが好き!?」
「えっ!?さ、寒いの・・・?」
 キッとは志摩を睨む。
「さっさと答える!犬と猫どっちが可愛い!?」
「い、犬っ!」
「パソコンと携帯、使いやすいのはどっち!?」
「パソコン!?」
「子供が襲われてるっ!助ける!?助けない!?」
「助ける!」
「私と香ちゃんどっちが好き!?」
っ!!・・・・え?」

 しまった。
 は固まってしまった。
 こんなことを言うべきじゃなかったのに・・・

「・・・・・・?」
 し、シラを切りとおそう!とは心の中で叫んだ。

「つ、次行くわよ!可愛いとカッコいい、言われるならどっち!?」
「えっ!?かっ・・・カッコいいっ!」
「リコとアンリエット、気に入ってるのはどっち!?」
「り、リコ!!」
「コーラとサイダー、選ぶなら!?」
「コーラッ!!」
「パスタと素麺、選ぶならどっち!?」
「素麺っ!!」


 少しの間の後、は汁を見た。


「じゃあ茹でてくるね」
「え!?あぁ・・・」

 まさかこんな素早く決まるなんて・・・つか、なんていった・・・!?

 少し紅くなった志摩は、
「・・・っ!」
「へ?」
 思わず呼び止めてしまった。

「な、なに?」
「あの・・・さっきの、深い意味はないからなっ!!」
「・・・はいはい」


 苦笑しながらキッチンに行く。
 ホッと息を撫で下ろす志摩だが、実はの頬が紅くなっていたのには気付かなかった。


 あのゲームは咄嗟に見えて選びたいほうを選ぶ。
 には分かっていたのだ。

「・・・自分がされたら嫌よね・・・」

 苦笑しながら、素麺を鍋に入れた。



 早決めゲーム・・・気楽に出来るが、一つのルールが。
 それは、意中の人にはしてはいけないということだ。



 は、心にとくと刻んだ。