「出来たぁ〜!!!」
大きな声を上げてるのが、私。
実は今日はうちの愛犬であり、友達であるリコの誕生日なんだ!!
「うんうん、やれば出来るじゃない!!」
手の中にあったのは、大きなケーキなんだけど。
チョコレートケーキに『HAPPY BIRTHDAY RICO!!』と書かれたプレートが刺さってる。
ぜーんぶ私の手作りなんだ!
ケーキを作ったのは初めてだけど、莉璃に作り方を訊いておいて良かった!・・・3回失敗したけど。
「リコーリコリコリコー!!」
大きなホールケーキを持って、リコに見せに行った。
リコはというと、リビングのカーペットの上でのんびりお昼寝してた。
まぁ確かにリコの為を思ってホットカーペットにしてあげてるんだけど、ソレはあんまりだって・・・
でも、やっぱりご機嫌なのには変わりなかった。
「リコ!!見てみて!!」
ゆっくり目を開けたリコは少し吃驚したように目を見開いた。
「・・・ん?あぁ、私の格好は置いといてよ。後で着替えるからね」
確かに格好は悲惨なものだった。
だって慣れてないケーキを合計4個も作った挙句、そのうちの3個は失敗してるんだから。
エプロンだけでなくて、顔や服にもいっぱいチョコレートクリームが付いていた。
「それより見て!!出来たよ〜チョコケーキ!」
手の上のケーキを見たリコは、喜んだように吼えてくれた。
「嬉しいかぁ〜そうか〜!!」
私まで嬉しくなっちゃう。頑張った甲斐があったよ、ほんと!
「さて、そろそろ志摩くんたちが来ちゃうね。」
キッチンを片付けなきゃ!!
チョコレートケーキと人数分の食器をテーブルに置き、キッチンに向かっていった。
「ぅわ・・・すごい有様・・・」
ぐちゃぐちゃになってる、本当に。
「ぅわあぁ、これから料理も作らないといけないのに!!」
こりゃ、かなり時間がかかるなぁ・・・
私はとりあえず片づけを済ませた。
これは意外にも早く終わった!これから身支度をして、料理を作らなきゃ!!
「おいでリコっ!」
リコを従え、私は螺旋階段を勢い良く上がって行った。
自室や隣の部屋を行き来しながら、リコとどんな服を着ようか迷ってたときだった。
まさかチャイムが鳴ってるとは、気付かなかった・・・。
「ー?」
無断で玄関を開けたのは、志摩くん。
でもチャイムすら聴こえなかった私は今も奮闘中、やっぱり聴こえなかった。
「ったく、いつもチャイム押せってうるせーくせに、押したら出ねーじゃん!」
なんて愚痴りながらも、勝手に入っていった。
「・・・お?」
リビングに入った志摩くんは、テーブルの上にあったものを見て目を輝かせた。
「うわ、うまそ〜〜〜!!」
チョコレートケーキ・・・まさか(汗)
その時、リコが何かを察知したみたいで私の部屋から出て行った。
「なにーどうしたの、リコ??」
私はまさか志摩くんが家の中に居るなんて、思いもしなかったんだけどね。
トトトッと軽快な音を立てながらリコが螺旋階段を降り、リビングを見たときだった。
「お、リコ。誕生日おめでとうなー」
志摩くんが食べながらリコにそう言った。
ソファに座って、美味しそうな顔をしてる・・・手には、チョコレートが。
「ぅわっ、なにリコ!?」
ワンワンワンッと大きな声で吼えていたリコに吃驚した私は、急いで服を決めて下に降りてみた。
相変わらずリビングに向かって吼えてたリコは、螺旋階段にふと眼を向ける。
私が降りてきたのを見た途端、「ちゃ〜ん・・・」なんて言ってそうな鳴き声を上げて近づいてきた。
「どうしたの?泥棒でも・・・・・・・・・・」
有様を見た私の思考はストップした。
「よっ、。お前チャイム押しても全然気付かねーから勝手に入ってきたぞ!」
それにしても、コレ美味いなー!と、さっき汗水流して作ったはずのチョコレートケーキが・・・
「なっ、なにのほほんと食べてんの!?」
「ん?これ、お前が作ったのか??」
「そうよ!!!何時間もかかったんだから!!!リコのバースデーケーキ!!!!」
「・・・は?」
コイツ・・・器用にフォークで少しだけ切り抜き、お皿に乗せて食ってやがる!!
「なっ!これリコのなのか!?」
「そうよ!!!」
リコは悲しそうに私の手を舐めてる・・・よしよし、可哀想だよ〜!!
「今日一日志摩くんは雑用係兼私の手伝い決定」
「はぁっ!?ちょっ、それはあんまりじゃ」
「何か?」
睨んでやると、志摩くんは少し肩を震わせ・・・しばらくして、「はい・・・」という肯定の言葉を貰った。
「よかった!リコ、いっぱい志摩くんを使うからねっ!」
ワンッ!!吼えたのを要訳すれば、『任せた!!』と言ってたように聴こえた。
任せなさいっ!!
「じゃあ早速ですが、香ちゃんと・莉璃と飛鳥が来るまでにご馳走を作ります!!」
「あぁ・・・」
「ということで、手伝えー!!」
「なにぃっ!!!マジでか!!??」
「大マジ!!さぁキッチンに移動しましょう〜!!」
これからいっぱい使ってやろうと思ったけど・・・はたと立ち止まった。
ゴールデンレトリバーが、欠けたチョコレートケーキを悲しそうに見ている。
「・・・リコ、ちょっと待っててね」
私はそう言って急いで自分の部屋に戻っていった。
すぐに目当てのものは見つかり、またリコの元に向かう。
「はい、これ誕生日プレゼント!」
リコの首に腕をスッと回し、器用に括ってやった。
チリン。
首には紅いリボンが巻かれ、中心に綺麗な飾りがしてある。
蝶が大きな三日月の上に居て、三日月から小さな鈴が降りていた。
絵と鈴はゴシック風で、落ち着くレトリバーに良く似合っている。
「うん、似合うと思ったんだ!!」
私は満足そうに言った後、志摩くんを待たせたキッチンに向かった。
チリン。
リコが動くたびに、高い音で奏でられる。
螺旋階段を登り、開いていた部屋に入ったリコは私が使う全身鏡を見た。
リコの首から、綺麗で可愛い飾りが下がっていた。
チリン、チリン。
リコが嬉しそうに動いては、鳴っていた音。
チョコレートケーキが出来たとき以上に嬉しかったことは、私には内緒なんだって。