「志摩くん、買い物ついてきて」
相変わらず人の家でゴロゴロしている志摩に、の一喝・・・の代わりの言葉が響いた。
勿論、志摩に拒否権などない。
「・・・まぁ、たまには協力もしてやるか」
「たまには?」
笑顔が恐ろしい。
思わず、ソファから志摩が落ちたほどだ。
荷物持ちがいて嬉しそうなと、いかにも荷物を持たさせることに不満たっぷりの志摩。
二人は近くのスーパーに向かった。
カートの上に、籠が二つ。
それを持つのは、やはり志摩だ。
「まずは、野菜類・・・んー、どっちが良いかなぁ」
はレタスを二つ持ち、見比べている。
「主婦みてぇ・・・」
「志摩くん。それは褒めてるの?」
ギロリと睨み、さすがの志摩も言葉が詰まる。
はレタスを籠の中に入れ、次へと進んでいく。
彼女の食材選びはなんとも慎重なものだ。
それこそ、いつもの子供っぽいイメージとは一点して、おとなしくなる。
真剣に選んでいる少女なんて、いないだろう。
まして、普段棍を振りまくるなんて。
いや・・・想像できるはずがない。
大分、籠の中に荷物が入ってきたときだ。
「よーし、じゃあ次はおやつを選ぼう!」
「・・・は?」
途端、いつものに戻った。
「志摩くん、キミもいる?」
「・・・なんか、毎日の発見を一つしてるような・・・」
「へ?」
「いや、何でもねぇ」
まぁ、いいや。
志摩もお菓子を選ぶことを優先させた。
子供達の中、二人はとても浮いている。
しかし、精神年齢が同じくらいなためか・・・志摩とははしゃいでいる。
「どれにするー?」
「おれはこれだなっ!!」
志摩が籠に入れたのは、ポテトチップス。
誰もが愛する長年の有名お菓子だ。
うんうん、とも頷き、
「確かにそれは美味しいよねー!でも、私はこれだなぁ」
棚から、ポテトチップスを取り出す。
しかし、志摩のとは少し違うようだ。
「夏ポテト?」
「そう!夏限定なの」
普通のポテトチップスとはちがって、ギザギザが特徴的。
少し分厚くなっていて、食べ応えがある。
「よし、お会計しよーっと」
志摩の手から、カートはの手に移ってそれはレジに移動した。
「おれは何処にいればいいんだ?」
「志摩くんはそこで袋に詰める係ね」
「おう!」
志摩にも指示を出し、はレジに並んだ。
思ったよりも早く会計を終え、は志摩の元にカートを持って行った。
「コレはこっち」だの「これはその中に入れる」だの、結構言い合って、やっと3つの袋に収めた二人だった。
「やっと終わった・・・」
「ほんと、志摩くんと来たら体力がいるのが良く分かった・・・」
志摩が二つ・が一つ持って、誰もいない帰り道を行く。
「今日は有難うね、志摩くん」
途中、は微笑んで志摩に言った。
それはさっきまでのとは違い、いつもの優しいに戻っている
「いいって。いつもの家に入り浸ってるもんな」
「そうそう、たまにくらい家に貢献してくれてもいいじゃない」
「・・・確かにそうだけどよ、お前が言うとなんかムカつくぞ」
「お互い様」
志摩の苦笑いが見える。
は笑い声を隠した。
今日は、本当は一人で買い物に行く予定だった。
別に、断れば置いていくつもりだった・・・のだが。
こんな楽しい買い物は始めてだったような気がする。
たまには志摩くんを誘って買い物に行こうかな。
そんなこととはつゆ知らず、志摩は後のポテトチップスを楽しみにしていたそうな。