それは、とても好ましいことでした。
香王と静王妃の間に、愛娘が出来ました・・・といっても、二人は実は姉弟なので実際には静王妃の子でした。
それでも香王は愛娘を可愛がり、静王妃と相談してこの子の名前を『』と名付けました。
「姫のために、私たちが祈りのプレゼントを与えましょう」
王と王妃を慕っていた3人の妖精は微笑んで言いました。
まず、祈りの魔法をかけたのは黄色い服の妖精『ほとり』です。
「じゃあ最初に私がかけるわ。そうねぇ・・・とても可愛らしくて純粋な姫になりますよーに!!」
杖を振ると、黄色い光が姫を包み、やがて中に消えていきました。
次にかけたのは、青い服の妖精『舞』です。
「じゃあ次私ね!姫が優しくて強い姫になりますように!!」
杖の代わりのトンファーを振ると、青い光が姫を包み、やはり中に消えていきました。
最後に、赤い服の妖精『真由子』が祈りの魔法をかけようとしたとき、異変が起きました。
「ハァーイ!」
黒の袖に紅いベストみたいな服を着た、魔女(?)のAPPが現れたのです。
「APP!」
「あんた、どうして・・・ってか、誰?」
静王妃は面識がなかったが、香は懐かしそうに叫びました・・・が、これでは話が成り立ちません。
「は渡す気ないよ」
「うっわー香ちゃん、今から束縛してたらも可哀想だよー?」
長い髪をなびかせながら、APPは笑いました。
しかし、笑顔とは違って言動が恐ろしいです。
「でも、なんでおれは呼ばれてないわけ?」
チラッと妖精たちを見て、その中の一人にウインクをして、そう言いました。
その標的『ほとり』はドキッとしたのですが、それはまた別のお話です。
「というわけで、には呪いを受けてもらうよ」
「なんで?」
「説明するのめんどくさいから、飛ばしたいんだけど」
静王妃にそう言い、APPは杖みたいなものを振りました。
すると、黒い光が姫を包み、それはやがて消えていったのです。
「は16歳になると、糸車によって死ぬんだって。じゃーね〜!!」
APPも黒い光に包まれて、やがて消えていきました。
大変です。
姫が16歳になると、糸車によって死んでしまう!?
香王と静王妃は顔には出さなかったものの、悲しみに打ちひしがれてしまいました。
「大丈夫ですよ、王に王妃」
赤い服の妖精『真由子』は、二人に微笑みました。
「呪いを消すことは出来ません。ですが、死ぬのではなく、眠りに変えることが出来ます」
「それはどういうことだ?」
「姫は16歳になって、糸車によって終のない眠りにつきます。その間、私たち全員も眠らせます。
そして、王子様が現れ、姫にキスをしたときに全員の眠りが解けます」
杖を振ると赤い光が姫を包み、やがて消えていきました。
「これで大丈夫です」
真由子はニコッと微笑んだ。
「あぁ、有難う」
香の笑顔に頬を紅く染めた真由子は、少し目を下に向けました。
しかし、糸車が王国になければ姫は眠ることはありません。
香王の命令どおり、王国中の糸車を全て焼き払い、おかげで姫は糸車を見たことがありませんでした。
時は巡り、姫は16歳・・・宣告どおりの年齢になったのです。
『ほとり』の祈りの魔法通り、可愛くて純粋に育ち、
『舞』の祈りの魔法通り、優しくて棍を持つととても強く育ちました。
そして、糸車もありません。
大丈夫かと安心していた王と王妃でしたが・・・ここで、事態は悪化します。
「やっほー♪」
「あれ、どちら様?」
地下室に遊びに行った姫は、おばあさんに出会いました。
おばあさんはその薄暗いところであるはずの無い糸車を編んでいました。
「APPって言うんだよ」
「APPさん・・・変な名前。・・・で、それは何?」
姫は糸車を見たことがありません。
そのため、初めて見ることに興味津々です。
でも、気をつけないと、危ないですよ。
「糸車だよ。もやってみるかーい?」
「うん!やりたい!」
は、糸車に近づいて・・・
ブスッ!
「い゛っっ!!!!」
思いっきり針に指を刺し、最初は痛がってたものの、やがて力が抜けるように倒れてしまいました。
「そんなに刺さなくてもいいのにねぇ」
APPは楽しそうに笑い、再び闇に消えていきました。
こうして、APPの呪い通りになったのです。
しかし、安心してください。
妖精『真由子』の魔法どおり、姫は王子が来るまで眠っています。
「それでは、皆さんも眠ってもらいましょう」
魔法をかけ、王国中の生き物を全て眠りにつかせました。
それから、年月が経ちました。
やがて廃屋の王国と言われ、王国や城中が茨で覆われていました。
「・・・ったく、やっと登場か・・・」
すると、馬・・・ではなく、ゴールデンレトリバーを連れた志摩王子がやってきました。
「お、ここにがいるらしいな」
王子が歩くたびに、茨が避けていきました。
「なんか、すげぇな・・・」なんて感嘆を漏らしています。
途中APPと戦い(略)、勝つとAPPは去っていきました。(口では負けてたけど)
突き進むと、一つの大きな部屋が見えました。
茨が避けきり、志摩王子はドアを開けます。
「お、発見」
大きな部屋の中にある、大きなベッドの中心で、姫は安らかな眠りに陥っていました。
「やっほー!」
「どうもー!」
「こんにちわ」
すると、妖精が3人とも姿を現しました。
「・・・お前らなぁ・・・」
「「「さ、姫にあつぅ〜〜いキスを!!」」」
「なっ!?」
それだけ言うと、妖精たちは姿を消しました。
静寂の中、志摩王子は赤い顔をしています。
ベッドを見ると、幸せそうな姫の寝顔があります。
志摩王子の目からみても、とても可愛らしい顔です。
ゆっくり、近づきました。
彼女は眠っているため、気付かないのだろうと思っていました・・・・が。
あと少しだというとき。
「っだぁ――無理だっ!!!」
と、叫んでしまいました。
ところが、ここで異変が起きました。
「・・・・・・・・んー・・・・・・・・・誰ぇ?」
なんと、志摩王子がキスをしていないのに姫の目が覚めてしまったのです。
実は、キスじゃなくても普通に起こせる魔法だったのです。
茨まみれの家になり、静かになったから起きなかっただけなのです。
「・・・・あなたが王子様!?」
助けてくれて有難う・・・・と言ったところで、怪訝な目つきに変わります。
「・・・・・なんで志摩くんなの!?」
「・・・は?」
「志摩くんが王子様ってガラじゃないよー」
「んなっ!」
姫は眠っている間に性格が変わってしまったのでしょうか。
いえ、元からこういう性格だったのです。
今までのは猫をかぶっていたようなものでした。
こうして、志摩王子と姫はなぜか結婚して幸せに・・・?なりましたとさ。
ただ、毎日ケンカが耐えないのは言うまでもないでしょう。