誕生日のとき、志摩が渡したのは星と月のネックレス。
 香は知っていた。
 志摩がかなり悩んだ結果、あのプレゼントを選んだことを。






お姫サマにあげたいもの






「なぁー香ちゃん!は何がいいんだ!?」
「知らないよ」
 香は呆れて呟いた。
 ここ何日か、の誕生日プレゼントを選んできたが、志摩が言う言葉はいつも一緒だ。

 もう香は決めていた。
 しかし、志摩は何日たっても決めかねていた。

「香ちゃんは静に何をあげてるんだ?」
 困り果てた志摩はベンチに座り、香に問いかけた。
「静?静とは違うでしょ」
「一緒じゃねぇのか?」

 はぁ・・・この人気付いてない。
 香になぜか脱力感が見える。
 志摩とは気付いてないのだが、お互いを意識していることを香は知っている。

「・・・いつも身に付けて置けるものとか、喜ぶんじゃない?」
 志摩さんがあげれば、は何でも喜ぶと思うけどね。
 そう言えないもどかしさを隠し、微笑んだら
「じゃあ、アクセサリ−とかか?」
ぱぁっと道が開けたような笑顔を見せて言った。
「そうそう、はアクセサリーつけないし」
「サンキュ、香ちゃん!」

 志摩は聞くなりダッシュでジュエリーショップへ向かった。
 が好きなのは、月やら星やら幻想的なものなのはわかっていた。
 あとはどのアクセサリーにするか・・・
 志摩は食い入るように見ている。

「あんなに真剣に選んでまぁ・・・」
 香はそんな志摩の様子を少し遠くから見ていた。


 まず、指輪は志摩の心の中で却下された。
 は棍を愛用しているため、指輪は邪魔になるだろう。
 それを言うと、ブレスレットも却下だ。
 ネックレスだな。
 志摩の心の中は決まった。

「すいません」
 店員は志摩の下に来た。
「なんでしょう?」
「コレください」
 のためとはいえ、少し照れるのか志摩の顔は少し赤くなっている。
「プレゼント用ですか?」
「あぁ・・・」

 照れてる照れてる。
 香は笑いを堪えて見守っていた。

 また、に言ってやらないといけないな。
 そう思うと香は近くにあったベンチに座った。





 後日談。

「あ、いらっしゃい志摩くん!」
 の家に行った志摩は、玄関に迎えに来てくれたを見て少し嬉しくなった。
「お、付けてくれてんじゃん!」
「え?あぁ、コレ?」
 自分の胸元を見て、は再び顔を上げた。
 笑顔だ。
「すっごく気に入ってるの!有難うね志摩くん」
「えっ、あ、あぁ・・・」

 彼女の笑顔を見た志摩は、とても嬉しい気分だった。
 でも顔は少し赤くなってて、照れているみたいだ。



 は香から悩んだ末に選んでくれたことを知っていたんだけどね。