仕事の途中に割って入ってきたのは、
 いつの間にか弓を持ってるし、使いこなしてるし・・・。
 それよりも、には引っかかったことがある。

 は、が「何でも屋」をしているのを知っていた。
 それ以前に、何でも屋みたいなものを経営してそうな雰囲気があった。






天空問屋 [スカイブローカー]






 とりあえずの家に来た一同は、家主を寝室のベッドに寝かせた。
「香ちゃん、ありがとぉ〜・・・」
 は風邪が完璧にぶり返したらしく、咳も出だした。
「ほら、薬持ってきたぞ」
 志摩は1階から水と薬を持ってきて、嫌そうな顔のに無理矢理飲ませる。
 数分後、渋い顔をしているがそこにいた。
「う゛〜・・・」
「頑張れー!」
 の声に、頷く。


 ・・・・・・・・・・・・ん?


「なんでいるんだ!?」
 志摩の突っ込みはみんなの声を代表した。
「え?」
 はきょとんとして言った。
「だって、私のこと知りたくないの?」
 その言葉を聞いた3人はうっ・・・と息が詰まる。
「・・・志摩くん、香ちゃん・・・私は知りたい・・・」
「でしょでしょ!?」
 は無邪気に笑っている。


 は、一置きして語り始めた。
「まず、私は大阪から転校してきたのね。・・・あ、関西弁はあんまりしゃべらへんけど」
「・・・大阪・・・まさかお前・・・」
 志摩が、一番にピンときたようだ。
 は志摩に対して、敢えて笑顔を作る。
「『スカイブローカー』・・・天空問屋って書いてそう読むの。私が店主の『 』よ」
「スカイブローカー!!?」
「うわ、!」
 ガバッとベッドから起き上がり、眩暈がしては再び横になる。
「やっぱり・・・」
 志摩の方は分かっていたみたいだ。
「え・・・なに?それ」
 ただ一人、香は何でも屋を経営していないため分からない。
「あぁ、香ちゃんは分からないわな・・・・・・」
「私が説明するっ!!」
 志摩の言葉を押しやって、が大声で叫んだ。
 おかげでの頭に響き、痛そうに抱えているのが見える。

「わ・・・分かったから、静かにしてやれよ・・・な?」
「あ・・・ごめん・・・」
 はすこし音量を下げ、意中の香に話し始める。
 まぁ、そんなの嬉しさが分からなくもないけど・・・と、は苦笑している。
 は初めて香にあって、一目惚れをしたらしい。
 にも分からないが、本気らしい。
「えっと・・・なんだっけ・・・あぁ、天空問屋のことやよね・・」
 動揺しているはちょっと顔を紅くしている。

「スカイブローカーは、文字通り『問屋』なのよ。表向きは素材屋を経営してるんだけど、
 裏には『情報屋』と『助っ人屋』の顔も持ってるの。
 あ、助っ人屋って言うのは、何でも屋を経営している人の手助けをすることね」
「へぇー・・・そんなのもあるんだ」
 初めて知ったみたいで、香は素直に吃驚している。
 そんな香を見ては嬉しそうにのほうを向く。
「・・・ねぇ、さっき持ってた弓は?」
「弓?」
 聞き返したが、分かったのか頷いて鞄を開けた。
 そこからさっきの装飾されてる弓と矢を取り出した。
「これ?」
「そうそう」
 白い弓は二つに折りたためるらしく、持ち運びが便利そうだ。
 まさに、の棍のよう。
「ウルは私の相棒みたいなものよ」
「ウルって?」
 香が聞く。
「ウルって言うのはこの弓の名前」
 手馴れたように、片手で弓を起こす。
 二つ折りになってたら気付かないが、少し大きめだ。
「ふーん・・・で、なんであの時水晶を割ってくれたんだ?」
 は志摩の方を向いて、微笑む。
「そりゃ、『天空問屋』としてね」
「そーだったんだ・・・まさか、お金とか払わないよ?」
 の言葉に志摩が真っ青になって彼女の方を向く。
「いらないよ。は特別、無料だって決めてたし」
「・・・え?」
 今のの言葉は、『が永倉屋をしている』ように聞こえる。
 しかし、本当に気付いていたのだから仕方がない。
「知ってたの!?」
「うん。ちなみに志摩さんの方も知ってるよ。『よろず屋東海道本舗』さん」
「なっ!!」
 香以外の二人は衝撃に打ちひしがれたような顔をしている。

 は、微笑む。
 しかし、今までとは違う・・・悪魔の微笑みのように取れるのは、見間違いではなかった。

「だから、私も仲間に入れてね!『助っ人屋』として!!」
「「へっ!?」」
「やっぱりな・・・」



 こうして、『よろず屋東海道本舗』・『永倉屋』、そして『天空問屋』が手を結んだ。


 ・・・香の予想通り。