「どーも、永倉屋でっす!・・・和泉奈央さん、御用改めよ」
 永倉 の言葉を、少し遠くで は聴いていた。
「・・・てことは、志摩さんのほうはよろず屋東海道本舗ね」
 よろず屋の名前は、には聞こえなかった。






天空問屋 [スカイブローカー]






「ほら、これが欲しいんでしょ?」
 奈央はに向かって水晶を放る。
 は受け取り、志摩・香・そして依頼人の桂美和の元へ向かう。

「これでいいですね」
 ふらつく体に喝を入れながらも、は差し出した。
 美和の頷く様子を見て、水晶を投げる。
 空中に浮かんだ水晶にむかって、は思いっきり棍を叩きつけた。
 ガシャアンと、大きな音が響く。

 落ちた先は、破片だけだった。

「・・・・これ・・・」
 破片を見た美和は、絶句した。
「これ・・・私の造った水晶じゃない・・・ただのガラス球よ!!」
「へ・・・!?」
 美和の目には大きな破片が映った。
「私の造った水晶は・・・断面は青色になるはずよ・・・」

 振り向けば、水晶は奈央が持っていた。
「渡せって言われて渡す馬鹿が何処にいるの?」
 勝ち誇ったように笑っている。

「だったら・・・それを壊すまでよ」
 棍を左手に持ち、槍投げのように投げようとした・・・。
 しかし、眩暈のせいで焦点が合わない。
「・・・風邪めぇ・・・・・・ぅわっ・・・」
 グラッと体がグラつき、咄嗟に棍を付いた。
っ!?」
 志摩と香はの元に走った。
「だ・・・だいじょうぶ・・・」
「大丈夫って・・・、顔が赤いよ!?」
「・・風邪か・・・」
 志摩は舌を打つ。

「やっぱり頭がいいほうが勝つのよ!!」
 奈央はいやらしい笑顔を浮かべている。

「・・・ムカつく・・・」
 風邪がぶり返さなかったら、のほうが腕が上だ。
 しかし・・・。

「おれが行く」
 奈央の態度が気に障ったのか、志摩が歩き出した・・・が。
「あの水晶を壊せば良いの?」
 ふと後ろで言われ、吃驚した志摩が振り返った。
「えっ!?」
「伏せてっ!」
 咄嗟に言われ、条件反射で志摩はしゃがみこむ。


 言ったのは、だった。
 いつの間にか弓を構えていて、微笑んだ。

「チェックメイト」

 放すと、ビュンッと矢が飛んでいった。
 それは素早く志摩の上を通り過ぎ、奈央が持っている水晶の中心に向かっていった。

「あっ!!!!」
 奈央の声に、が前を向く。
 パキンッと、水晶が砕け散った。
「くっ・・・私の水晶・・・が・・・」
 奈央の手にあるのは、青のガラス片に変わった。

「・・・・・・?」
 志摩、香、そしては唖然と、ただその姿を見ていた。
 装飾された白い弓を持ったが、そこに立っていた。


「大丈夫ー?」
 弓を左手に持ち、心配そうには近づく・・・が。
「・・・って・・・・・・何者?」
 の視線には疑問がかかっていた。
 彼女の問いに、は微笑んで答えた。
「今は仕事優先やろ?」
 そして、から奈央に目が行った。

 が最初に会ったのは、2日前。
 あの時の印象としては、『明るくておちゃらけている』だった。
 でも、今思った印象は違う。

「さて、どないしようか?」
 笑顔じゃなく、睨むように奈央を見ている。
 しかし、奈央の方はそれどころじゃない。
 壊れた水晶をただ呆然と見ている。

「どうする?」
 無理矢理立ち上がり、は美和のほうを見る。
 美和は、頷いただけだった。




 美和から報奨金を貰い、仕事は終わった。
「さ、帰れるか?」
「あー大丈夫よ」
 棍を付いたままでは、の言葉も信用ならない。
「俺が連れて行くよ」
「へ?・・・ぅわっ!!」
 あっという間に、は香に抱きかかえられた。
 いわゆる、『お姫サマ抱っこ』だ。
「「あっ!!!」」
 それに大きな声を上げたのが、志摩と
「なに二人とも?」
 香のきょとんとした言葉が浴びられる。

 のことが好きだと気付いていない志摩は、分かっていないが。
 香のことが好きなは目があって顔を紅くしていた。

「・・・志摩さん・・・」「・・・・・・」
 それぞれ、お互いの感情が分かっていた二人は、名前を呟いて先に帰路に着くことにした。



 全ての説明は・・・次回!!!
 って、まだ続くのかよっ!!!(さまぁ〜ず三村風)