二日後・・・の具合は良い方に向かっていた。
 志摩のおかげもあってか、順調に薬が効いてきている。
「よし、学校はいいから、とにかく御用をしなくちゃ」
 好調気味のは、嬉しそうに微笑んだ。

 ・・・と言っても、志摩と香の手も借りないといけないのだが。






天空問屋 [スカイブローカー]






 一通来ていたメールの内容は、御用だった。
「なになに・・・桂美和さんから・・・」
 は読み始めた。
 その内容は、和泉奈央という人物から、造った水晶を壊して欲しいということだ。
「・・・水晶を造ったの?しかも壊すんだ・・・」
 怪訝に思っただが、すぐに笑顔に変わった。
「棍で叩き壊してやらなきゃね」
 そして、志摩と香にこのことを伝えるべくメールを打った。

 依頼人とは、この日にあって事情を聞くことに。
 10分後、とあるレストランで志摩とが集まった。
「・・・香ちゃんは?」
「アイツは夕方まで仕事。だから、夜に落ち合おうぜ」
 志摩はそう言って、の額に手を当てる。
「お前・・・まだ熱があるじゃねぇか!」
「ま、ね・・・」
 志摩の手を払い、決意の眼差しを向けた。
「でも、これ以上待たせるわけには行かないわ」
「・・・らしいけどよ、無理はするなよ」
「もちろん!」
 入り口に目を向けて、微笑んだ。

 依頼人が来たらしい。


「美和さん、依頼の内容はどういうことですか?」
 依頼人は困り果てたような表情をしている。
「実は・・・奈央と二人で水晶を造ったんです。でも、それはお金目的じゃありませんでした。
 奈央は『自分が預かる』と言って、私から水晶を奪って・・・
 それを使って占いをしてるんです。だから、あの水晶を壊してください」
 と志摩は、ただ、美和の言葉に耳を傾けた。
「・・・分かりました、受けましょう」
 美和の、心配そうな表情は驚いた表情に変わった。
 の目が変わった。
 仕事人の目だ。



 舞台は変わって、夜。
 公園に、奈央を呼び出すことに成功したたちは、今か今かと待ち構えていた。
「それにしても、本当に水晶を持ってきてくれるのかなぁ?」
 は訝しげに入り口を見ていた。
 実は、美和が呼び出すように電話をしたときにあっさり水晶を持ってくることを了承したのだ。
「さぁ・・・持ってきてくれることは祈るけどな」
 志摩はあたかも期待はしていない。
 ・・・というか、全員期待はしていないようだ。
 
「あれー?」
 ふと、呼びかけられたは怪訝そうに後ろを振り返る。
!?」
 そこに、制服姿のがいた。
  ・・・二日前に転校してきて、と仲良くなった、あの

「なにやってんの?てゆーか風邪で休んでたんじゃなかったっけ?」
「うっ・・・」
 後ろでは、志摩と香が不思議そうな顔をしている。
 気付くなり、は二人に紹介することに。
「志摩くん、香ちゃん。この子は 。二日前に転校してきて仲良くなったの」
「どうもー!」
 の目が、まず志摩に向く。
 莉璃と飛鳥の情報によれば、は志摩のことが好きらしい。
、こっちが志摩くんで、そっちが香ちゃん」
「よろしくな」
「よろしくー」
 次に、の目は香を捉えた。
「・・・・・っ!!ちょっ、来てっ!!」
「へっ!?うわわっ!!」
 突如に引っ張られ、は志摩と香より遠くに行った。
「・・・なんなんだ?」
「さぁ・・・?」
 志摩と香はポカーンとその様子を見ていた。

「なになに!!」
 サボったことを言われるか・・・と、冷や汗気味のだったが、
 から聞こえた言葉は、意外なものだった。
「あの人っ!」
「あの人ぉ?」
 の指差す方を見る。
 香だ。

「香ちゃんがどうしたの?」
 ・・・なにやら、やな予感が・・・

「好きになっちゃったっ!!」
「はぁっ!?」
 ・・・的中した。

 す、好きになった!?
 は唖然とした。
 確かに、香は格好いい。
 にとって格好いいのは志摩の方なのだが・・・それでも、格好いい。
 でも・・・今会ったばかりじゃなかった?
「・・・香ちゃんがモデルやってるから?」
「え?モデルやってんの!?」
 ・・・今、大人気のモデル『キョウ』なのだが・・・
 は知らないみたいだ。
 頭が痛くなる。
「一目惚れした・・・超かっこいい・・・」
 の目はハートになっていた。
 ・・・確かに、自身も志摩が好きだ。
 だけど・・・目はハートにならない。絶対。
「・・・はいはい。」
「なんやその反応」
 笑いながらは言う。

 そんな彼女を見ながらも、少し目を逸らした。
 公園の入り口・・・志摩、香と同じ方向を見る。
 は気付いていなかったが、の目はきっちり捉えていた。

「で、どうしたわけ?」
 の声に逸らした目を戻す。
「え、ちょっとね」
 は苦笑いをしている。
 しかし、その笑顔はすぐに真顔に戻った。
っ、来たぞ!!」
 志摩の声に、振り返る。
、早く帰りなよね」
 に向かって微笑み、も志摩たちの場所に向かった。
 途中、ロングの巻きスカートを少しはだけさせて、太腿に取り付けてあった棍を取り出した。
 その棍を器用に組み立てた。

「・・・まさか・・・」
 は彼女を見ながら、疑問が確信に繋がった。

 ふらつく。
 ひょっとして、風邪がまだ治っていない?
 てゆーか再発??
 は心の中でそう呟いた。
 頭が痛い。
 眩暈がする。
 神様は、こんな大変なときに限って現われやしない。
 棍をぎゅっと握った。
 倒れまいと、決意したように。


 向こうから、水晶を持った奈央が現れた。

 は言う。



「どーも、永倉屋でっす!・・・和泉奈央さん、御用改めよ」