朝も、昼も、あなたのことを考えてた。
 きっと、これからもっと考えるんだと思う。
 ・・・それとも、一緒に居るからそれだけで嬉しくなっちゃうかな。






Tutto il Giorno






「あ〜・・・痛い」
 階段を降りるときが一番痛い。
 少なからず全体重に近い重さが片足に集中しちゃうから、ここでもひょこひょこ歩きになる。
 ただ、このひょこひょこ歩きって結構他に力が入るのよね。
 筋肉痛になりそう・・・なんて思ったのは置いておこうか。

 やっとの思いで昇降口まで歩き、靴を履きかえる。
 そして再び歩き出すと、日が傾いてたみたいで全体が朱色に染まっていた。

、遅ぇ!!」
 あ、志摩くん発見。やばい・・・ちょっと苛立ってる。
「ごめんごめん。つか、早く歩けるわけないでしょ」
「ったく・・・自転車は何処だ?」
「そこの置き場にある・・・これ」
 乗ってきた自転車を指差す。
 志摩くんが取り出し、私は後ろに乗った。
「はぁ〜痛かった・・・」
「お前なんか大変そうだな」
「ホントよ。腫れてきたんじゃないの?」
「それはねぇだろ」
 なんて言ってたけど、実は内心ちょっとドキドキしてたんだよね。

 だって、志摩くんと自転車二人乗りなんて恥ずかしいと思わない?
 まぁ・・・この鈍感男はそう思わないんだろうけどさ。

「送ってやる代わりに晩飯食わせてくれよっ!」
「はいはい、分かってましたよ」
 やっぱり言うと思った!
 そういえば最近、よく志摩くんが私の家でご飯を食べてるような・・・
 食費が浮いてるんだろうなぁ〜、何か買ってもらわなきゃね。
 私としてはリコと二人で食べるより、賑やかでいいんだけどさ。

「ぅわわっ、ちょっと志摩くんコントロール変なんじゃない!?」
 乗って走り出した途端にぐらつくなんて、先行き不安だってば!
 志摩くんは「うるせー!おれも二人乗りなんて久し振りなんだよ!!」って言って、続けた。
っ、よく捕まってろよ!!」
「う、うん」
 そ〜っと肩を持つ。
 ひゃあぁ〜〜〜!!!なんか照れちゃうっ!!!
 でも、後々照れてる場合じゃないなんて思ったのは言うまでもなかったりして。
「ちょっ、志摩くん危ないっ!!」
「ぅおあっ!!!」
 電柱にぶつかるかと思ったって!!足がっ!!!
 右に曲がろうとするたび、左側に出してる両足の重心のせいで腰が浮かびそうになる。
「落ちるっ!!死ぬっ!!」
「死なねぇって!!」
「うぅ怖い・・・ぅひゃあっ!!」
「おい落ちるなよっ!!」
 お化け屋敷よりもジェットコースターよりも怖いっ!!

 肩を持つだけであんなに照れてた私は何処へやら?
 此処まで来ると、腰をぎゅーっと持って落ちないように努力した。
 照れる?そんな余裕はないわよっ!!
 とにかく自分の身は護らないと!!!



「「・・・・疲れた・・・」」
 着いたのは30分も掛かった後。
 確か一人で登校したときもそれくらいじゃなかったっけ?
 とにかく、死と隣り合わせの恐怖の二人乗りは、無事何事もなく家まで着けた。

「はぁ・・・とりあえず入ろう・・・」
「・・・だな」
 疲れ果ててはいたものの、私たちは自転車を閉って家の中に入った。
「ただいまぁ〜リコ・・・」
 リコは2階に上がっていたのか、嬉しそうに螺旋階段を降りてきてくれる。
 そのまま私は2階にあがり、志摩くんはリビングのソファへとダイブした。
 着替えるのは大変じゃないんだけど、階段を降りるのがやはり難点。
「・・・・・いだっ!」
 必ず一回は声を上げないとダメみたいな私は、降りるたびにいつも上げてる。
 ほら、今日も上げちゃった。

「どーした?」
 その言葉に違和感を感じたのか、志摩くんがリビングから顔を出した。
 頑張ってホールに降り立った私は、そんな彼に言う。
「あー気にしないで。いつも降りるときに言うことだから」
「・・・そうか?変な声だったぞ?」
「あはは・・・」

 リビングで時計を見てみる。
「う〜ん・・・まだ6時かぁ。」
 ご飯を食べるにしては早すぎるよね。
 ふと、ソファにいる志摩くんを見てみて呆然とした。

「ちょっと志摩くん、寝ないでよ。」
「んー?いいだろちょっとくらい」
 なんて言いながら、ソファに横たわろうとする。
 ちょっとちょっと!寝るなって言ってんのに何転がってんのよ。
 言葉で表さずに、今度は行動で示してみた。

「なっ!?」
 志摩くんの頭を持ち上げ、そのまま向こう側へ持っていく。
「乱暴じゃねぇかぁっ!?」
「だって言ってる傍から寝ようとするんだもん」
 寝たら私が暇じゃん!
 転がれないように隣に座ってやった。

「はぁ〜、暇だなぁ〜」
 背もたれにもたれ、伸びをする。
「なぁー、今日の晩飯はなんだ?」
・・・あーそういえば決めてないや。
「何がいい?」
「んー・・・ハンバーグ!!」
「ハンバーグぅっ!?お子様みたいだね、キミ!」
「んなっ!?お前おれがわざわざ迎えに行ってやったんだぞ!!」
 わかってるよ、そんなこと。
 私はため息を付いて、微笑んだ。

「・・・しかたないから作ってあげる」
 この言葉一つですっごく嬉しそうな顔するんだもん。
 本当に面白いなぁ、志摩くんって。





 いつもいつも、気付けばあなたのことを考えてたよ。
 朝も、昼も、そして今も。
 私はあなたばっかり頭に浮かべてたんだ。

「じゃあ腕を振るわせていただきます」
「おう!上手いの頼むぞ、!」
「任せなさいっ!」


 微笑んで、私はキッチンに向かった。

 そこでもきっと考えるのよね、美味しそうにご飯を食べた志摩くんの表情を・・・。