「はぁあ〜〜〜・・・」
夕方、私は帰路に着いていた。
でもいつものような速度も出さず、“とぼとぼ”に近かった。
「今日は朝から災難ばっか・・・嫌になっちゃうよ・・・」
そう、本当に嫌になる。
絶対厄日だよ。こんなに災難が多い日なんて初めてに近いもん。
朝、まず私はローラーブレード登校なのに遅刻をした。
と言っても、いつもの道が封鎖されてたから遠回りに遠回りを重ねて行ったからなんだけどさぁ・・・
そして昼食の時間、お弁当持ってくるの忘れたし。
仕方なく莉璃たちから分けてもらったけど、こんなこと滅多にないんだけどね。
「、あんたどーしたの?」なんて言われる始末よ。
そして昼食後の体育の授業。
今日はバレーボールだったんだけど、思いっきり足を捻ってしまった。
保健室で泣きそうになったわよ。
捻挫なんて何年ぶりだか。しかも、今日どうやって帰ろうか迷ったくらいなんだから。
その捻挫のせいで、放課後は階段から落ちそうになるし。
絶対今日は厄日だと確信したのは、このときだったのかもしれないわ。
「ねぇ、本当に一人で帰るわけ?」
見かねたがそう言ったけど、
「大丈夫!一人で帰れるって!!」
「でもさぁ、今日災難ばっかじゃない?」
「うっ・・・で、でもきっともうないかもしれないじゃない」
そんなこと、私は思ってもなかった。
絶対また何かある・・・と思って、今に至るわけなんだけど。
「痛い・・・」
捻挫した場所がズキズキする。
でも、ローラーブレードで登校したからにはこれで下校もしなきゃならない。
あぁ・・・なんで歩きで来なかったんだろう。
もっと遅刻してたけど、どうせ遅刻なら同じだよ。
「よりによって、なんで捻挫なのよ・・・」
捻挫なんかしちゃったら仕事が出来ないじゃない。
永倉屋の御用、ないといいんだけどなぁ。
「・・・いたっ・・・うぁっ・・・いたい・・・」
足を滑らせる度こんな言葉を上げてた私なんだけど、これほど捻挫が厄介だとは思わなかった。
「・・・あ〜〜〜〜もう痛いっ!!!」
「何叫んでんだよ」
・・・ん?
振り返ると、そこにいたのは呆れかえった様子の志摩くんが。
偶然会ったんだー!運命を感じるわ。・・・なんちゃって?
「志摩くんだ。どーしたの?」
「どーしたのじゃねぇだろ。何叫んでんだ?さっきから」
・・・あ、聴こえてたのね。
なんか恥ずかしくなっちゃうじゃない。
「実はね、今日は厄日なのよ」
「はぁ?厄日??」
「そう、厄日」
私は今までの経緯を呆れる志摩くんに話してみた。
最初は笑いながら聞いてた彼も、徐々に顔色が曇っていて
「で、捻挫してるのにローラーブレードなんか履いてんのか!?」
「うん。だってこれで来たし」
「アホか!!!」
アホかって・・・
志摩くんにアホって言われたら、すっごく惨めな感じ。
あぁ、絶対今日は厄日だ・・・。
「とにかく、真っ直ぐ帰れよ!」
「あ、でも食材買って帰る予定だったんだけどなぁ」
ジーッと見つめる。
志摩くん、付き合ってくれないかなぁ・・・
彼にもわかってたみたいで、ハァ〜、っとため息を付き、
「・・・しょうがねぇなぁ!行くぞ!」
「えっ、ぅわっ!!」
グイッと引っ張られ、こけそうになる。
あぁもう危ないったらないじゃない!!
引っ張られながら滑っていた時、上でガタンって音がしたのには気付かなかった。
「ん?」
ふと、上を見上げたのは志摩くんのほうだった。
「はあっ!?」
「へ?なに?」
なに吃驚してんだろ?と、私も上を見上げてみる。
・・・・・・一瞬我が目を疑った。
「なっ!!!」
「、走れ!!」
なんか大きなガラスが振ってくる!?
志摩くんに引っ張られ、ローラーブレードのまま走る。
するとすぐ後ろで、
ガシャアァァン!!とガラスの窓が割れる音がした。
「「・・・・・・はぁ〜・・・」」
思わずへたり込んでしまった・・・気付かなかったら、大怪我をするところだった・・・
志摩くんは苦笑いを浮かべて言った。
「・・・、お前今日厄日決定」
「・・・有難うございます」
何言ってんだろ、私たち。
ギリギリだったから、ガラスの破片がかかったかもしれない。
帰ったらシャワー浴びなきゃ・・・・
そしてこのままスーパーへと向かい、更に災難が襲い掛かるのを私たちは知らない。
スーパーに置いてあるもの全てに警戒をしても、仕方ない。
それより志摩くんと楽しくお買い物をした方が良いじゃない?
「なぁ、今日は何作るんだ?」
楽しみなように言ってるけど、志摩くん、我が家のことだし・・・
「もしかして、志摩くんも食べるの?」
「当たり前だろ!誰がさっき助けてやったと思ってんだ?」
ぅわぁ〜なんかすっごく威張られてもねぇ。
でも、笑ってしまった。
「今日はねー、ビーフドリアとシーチキンサラダかな?」
「おー!!美味そう!!」
「でしょ??」
というわけで、私は志摩くんを引き連れて食材を着々と籠の中に入れていった。
「シーチキン・・・なんで積み上げられてんだろ?」
最後に探してたものなんだけど、凄くアメリカンな雰囲気が漂うなぁ。
志摩くんも「アメリカみたいにしたかったんじゃねぇのか?」なんて笑ってる。
でも、子供が突っ込んで崩れるのがオチのような・・・
「あっ!それを狙ってるのか!」
「・・・何言ってんだ?」
・・・なんでもないです。あー恥ずかしい。
「どーでも良いけど、早く取れよ!」
「・・・何処から取ろうか悩んでるの」
確かに早く取って帰りたいとも。
シャワーも浴びないといけないし、それ以前に足が痛い!
・・・だけど、慎重にしないと今日は厄日なんだから。
「これっ!!」
このシーチキンなら大丈夫!
何がだろうとは思うけど、今の私はそう思っていた。
思いっきり引き抜き・・・そして神様と缶は裏切った。
ガシャンッ、と重心が変わったのか半分ほどが崩れ、落ちてしまった。
「・・・・、大丈夫か?」
それには志摩くんも吃驚したみたい。
・・・一番吃驚したのは私だと思う。庇ったつもりだけど頭にいっぱいぶつかった。
「もう最悪・・・厄日だよ絶対・・・」
文句の一つでも言ってやりたくなる!!!
厄日ってさ、普通わかんないものだと思う。
だって今まで今日が厄日だなんてわからなかったし。
だけど・・・今日は完璧に厄日だ。
「・・・最っ低!!!」
シーチキンの缶に埋もれて、私が叫んだのは言うまでもない・・・。