「リコ、買い物行くけど行く?」
 ちゃんの声に僕は大きく吼える。
 僕はちゃんと出かけるのが大好きなんだ!!






リコとの秘密






 僕の名前はリコ!ちゃんと住んでるゴールデンレトリバーなんだ!
 誕生日にプレゼントしてもらった紅いリボンを付けて、僕は誇らしげに隣を歩く。
 ちりん、ちりん、と鈴が高く鳴ると、ちゃんも「綺麗な音だね、リコ」って言ってくれた。

 スーパーに着くと、僕は入り口近くでお留守番をするんだ。
「リコ、ちょっと待っててね」
 ワンッと吼えると、ちゃんは笑顔で中に入っていった。



 しばらく待ってると、僕の前を知ってる人が通って行った。
「・・・お、リコだ」
 ・・・げ、志摩 義経だ。

 志摩 義経は僕の大っ嫌いなヤツ。
 だってちゃん、アイツの前でよく笑うから!!!

「なにやってんだ?お前」
 立ち止まって、尚且つ僕のところまで来る。
 構わずに歩いていけばいーのに。

 アイツはスーパーの中を眺め見て、「あぁ、を待ってんのか」と納得した笑みを浮かべた。
 ムッ!ちゃんの名前が出ると、途端に僕の機嫌も悪くなる。

 あーあ、ちゃん早く来ないかなぁー。
 なんて思ってると、志摩さんはしゃがみこんだ。


「・・・なーリコ」
 長居する気か。なんて思ったけど、僕は少し吃驚した。
 なんか悩んでるみたいで、僕に相談する気なんだ。
、なんか変じゃねぇか?」
 ・・・ちゃんが?別に僕に対しては変じゃないけど?
「時々じーっと見られてんだよな。なんかやったか?おれ」
 僕に対してなら沢山やってるけど、ちゃんにはやってないと思うけどなぁ?
 ってゆーか、ちゃんに何かやったんなら僕が噛み付くし。
「なぁーリコ、おれのことなんか言ってた?」
 はぁ?別に志摩さんのことなんて・・・でも、よくちゃんは志摩さんの名前を言ってたかも?
 う〜ん・・・僕にはわかんないけどなぁ。


「しっ志摩くんどうしたの!?」
 あっ、ちゃんだ!!
 ・・・なんであんなに慌ててんだろ?
「お、おぅ!」
 たまたまリコに会ったから話してたんだって言ってたけど・・・そうなの?
 志摩さんが荷物を持って、ちゃんと途中まで行く。
 僕はずっとちゃんを見てたけど、別に変わらないよーな・・・あれ。
って黙ってたら可愛いと思うけど、喋ったらな〜」
「なっ、酷いってそれ!!!」



 赤くなって叫んだけど、そのあと歩いててチラッと僕の方を見た。

 ・・・嬉しそうに笑ってた。



 なんだ。そーいうことか。
 志摩さん、僕はわかっちゃったよ。
 きっとちゃんは志摩さんに恋をしてるんだよ。
 だけど、面白くないから僕は志摩さんに言わないけどね。

 ・・・はっ!!言うにしてもどうやって伝えたら良いんだ!?
 まーいっか。僕が伝えることは無いしね。