疲れた・・・
 この廃校内で休めるわけがなかった。
 翌日、疲れ果てた私たちの前に現れたのは、

 依頼人の“淀川 茉莉”だった。






Nursery Rhyme [マザー・グース]






「皆さん、本当にお疲れ様でした」
 疲労感が見える私たちに言った言葉はそれだった。
 だれのおかげで・・・と言いたかったけど、根拠がない。
「有難うございます・・・」と言っておいた。

「それにしても、あのグラウンドの落書きはなんなんですかねぇ?」
 茉莉さんの言葉に思わず志摩くんが言ってしまった。
「お前がやったんだろーが!」
「へ?私ですか?」
 きょとんとしてたけど、茉莉さんは微笑んだ。

「もう何言ってるんですか!とても大事なこの学校でこんな悪戯をするわけないでしょう?」
「・・・へ?」

 全員が絶句した。



 だって、チャイムを鳴らしながらグラウンドに字を書いたのは誰?
 マネキンの身体をバラバラにして学校中にばら撒いたのは誰?
 私の後ろに頭を乗せたり、窓を割って手を投げたりしたのは誰?

 死骸を階段にぶら下げたのは、誰?



「てめぇ、からかってんのか!?」
「志摩さん止めといた方がいいよ」
 香ちゃんが宥めてたけど、彼自身もそう思ってたに違いない。
 でも茉莉さんは「まぁ、何があったんですか?人影は有りました?」なんてとぼけるような声では無かった。

「・・・ホントに茉莉さんじゃないの?」
「はい?えぇ・・・何があったのかは解りませんが」

 まさか、お化けの仕業!?
 真っ青になった私の考えてることが解ったのか、は「そんなわけないでしょ!」って言った。
 とりあえず私たちは報酬を受け取り、この“マザー・グース小学校”を後にすることにした。

「ねぇ、志摩くん・・・もうこんな依頼は受けないでね」
 絶対手伝わないから、と念を入れてみると、志摩くんも「お前もな」って言われた。
 あぁ、きっとみんな懲り懲りしてたんだ。





「・・・どうだった?」
 私たちの後ろを見ていた茉莉さんに、誰かが声をかけた。
「私のことは気付かれてたわ」
 近所のオバサンだろう、その人は「確かに一番怪しい存在だったもんねぇ」って言った。
「それにしても、本当に面白いわ」
「今回の何でも屋はすごいリアクションを取ってくれたもんね」
「で、次はどうやって驚かす?」
「また、今夜“ナーサリー・ライム”に集合しましょう」

 茉莉さんはとても楽しそうな表情で、“マザー・グース小学校”を見た。





 廃校となっているこの学校では、よく人影を見つける。

 この謎は解けたのか、私には定かではない。