志摩に助けられたは、家で詳細を聞いた。
 は“弥生”に見立てられてたのだ。
 となれば、今までのわからない言動も納得がいった。

 後日、は再び依頼人の元に向かった。
 名執にはまだ会わないといけない。






家庭内飼育のススメ






「志摩くんは来なくて良いってば」
 名執の家に向かうの後ろを付いてくるのは志摩。
 ムッとした表情を見せ、
「お前だけだとまた捕まりそーだろうが」
「うっ・・・もうそんなヘマしないよ」
「嘘つけ!!」

 確かに、前は油断をしていた。
 だけどもう同じことで倒れることはないよ。
 そんなことを言って志摩は引き返すか。
 答えは No だ。絶対何があっても付いてくるだろう。
 だから敢えても何も言わなかった。

 日本家屋の門前にやってきた。
 確か、此処で依頼をこなしていたはず。
 なのになんでこんなことになったんだろう、とは頭を抱え込んだ。
 しかしそんなことも言ってられない。
 志摩を引き連れて中に入っていった。

「こんにちわー」
 ドアの鍵は開いていて、遠慮なく中に入る。

 実はもう一度名執の家に向かった理由は二つある。
 一つはを取り戻すため。
 数日前、を助け出した志摩はの存在をすっかり忘れていたのだ。
 は彼女にとって大切な棍。だから取り戻しにきたのだ。
 そしてもう一つ。それは報酬。
 なんだかんだあったが、が依頼をこなしたことは事実だ。
 その報酬も貰っておかなくてはならない。以外とちゃっかりした性格のようだ。

「やぁ、よく来たね」
 奥から名執が現れた。
 ・・・その笑顔は数日前に見たものよりも晴れ晴れとしていた。

「・・・どーも、永倉屋です」
「コイツの棍と報酬を貰いに来たぞ」
 そういいつつも、も志摩も少し名執に対して警戒気味だ。

「もう何もしないよ。こっちにおいで」
 に手招きをして、名執は階段を昇っていった。
 距離をとって、たちも昇る。
 名執が入って行ったのは、が監禁されていた弥生の部屋。
「気をつけろよ」と後ろで言った志摩の言葉に頷きつつも、はドアを開けた。

「・・・あれ?」
 そこにあったのは天蓋付きのベッドではなくて。
 テーブルと椅子があり、あっけらかんとした空間が出来上がっていた。
「どうだい?君たちのおかげで全て処分することが出来たんだ」

 晴れ晴れともするはずだ。
 たちには、もう弥生のことは吹っ切れてるように見えた。

「本当に申し訳ないことをした。これは報酬とお礼だよ」
 名執から受け取ったお金は、金額的にも相当な額だろう。
「えぇっ!?こんなにいりません!!」
「迷惑をかけてしまったことのお詫びだよ」

 躊躇ってはいたのだが、観念して甘んじることにした。


「志摩くんだったね」
 名執の目が志摩に向いた。
「君が教えてくれたんだ、弥生ちゃんはもういないんだってこと。」
 それを聴いたは「志摩くん何を言ったわけ?」と小声で呟いたが、それは置いておこう。

「本当に有難う。ちゃんを危険な目に遭わすところだったよ」

 名執の言葉に、志摩はニッと笑った。

「よかったな」





 報酬・を受け取ったは志摩と共に帰路に付いた。
 その途中、
「ねぇ、なんでキミがお礼を言われたの?」
 というの言葉に、志摩は「さあ?」とシラをきった。
「・・・ま、いいけどさ。なんか腑に落ちない」
「別に良いじゃねぇか。な?」
「な?じゃないよ!・・・でも、志摩くんがいたから私は此処を歩いていられるのかな」

 ・・・正確に言えば、志摩に助けを求めた私自身のおかげだと思うけど。
 その言葉はの心の中に留めておいた。
「まぁ、が危険な目に遭うことなんてないだろうなー」
 なっ!!と言いかけた言葉を遮って、志摩は続けた。

「危険な目にあう前に助けてやるからな」

 ・・・自分が何を言ってるのか分かってんのかなぁ?
 少し頬を赤くしてそう思っただけど、ふっ、と笑った。

「志摩くんには無理だよー」
「んなっ!!!お前それは酷いぞ!!」

 吼えた志摩より先を行き、は振り向いて微笑んだ。



「・・・でも、ありがとね」