「志摩くんさぁ、すっっごく寛いでるよね・・・いつも」
ソファに座ってる私は、もう一つのソファを使って寝転んでる志摩くんに言った。
これは嫌味のつもりなのに、志摩くんはちっとも気にしない・・・聞いてなかったのかな?
「私の家なんだけど?」
「いーじゃねぇか。今日は香ちゃんも仕事で居ねぇんだから」
「いや、関係ありません」
することが無いから私の家に来たのかな?・・・つーか暇つぶしかい!
「志摩くんってもはやお客様じゃないよねー」
「なにぃっ!?なんでだ?!」
ガバッと起き上がって、驚愕の表情で見られても・・・。
「だって、いつも入り浸ってるし」
「お前なー、の家が落ち着くからだろ」
「そりゃどーも」 褒められた気がしないけど、まぁいっか。
「嬉しいからいいんだけどね」
「・・・なにが嬉しいんだ?」
・・・はっ!!しまった!!口に出てた!?
心の中で言っただけなんだけど、聴こえてた!!
「・・・えーっと・・・一人じゃないからね」
「あぁそーか!でもお前リコがいるじゃねぇか」
苦笑してる志摩くんは知らない。真意じゃないのよ。
だってさぁ、「志摩くんと一緒に居られるから」って本人に言える!?
それは自殺行為だと思う。だから誤魔化したのよ。
・・・単純でよかった。
充分誤魔化せてた。
今度は悟られないように、ちゃんと心の中で笑う。
「さて、お昼ごはん食べてく?」
「おー!!」
途端目をキラキラさせて、待ってたかのようにはしゃぎだした。
・・・おのれ、これが目当てか。
まぁいいんだけどさぁ。
「今日はなんなんだ!?」
「今日はねー、カレーかな。昨日の夜がカレーだったのよ」
「カレー!!」
嬉しそう、嬉しそう。
「の作る料理は何でも上手いけどなっ!!」
カレーに喜んじゃって・・・・・・・・・って。
嬉しいこと言ってくれるじゃない!!
「ほんと?ありがとー」なんて言いながらも、私は顔が赤くなってしまった。
そんな喜ぶことじゃないかもしれないけど、私には嬉しかったんだよね。
ソファから立ち上がり、キッチンに向かう。
志摩くんも付いて来た。そんなにカレーが嬉しかったのかなぁ?
「火を使うよー?」と忠告しながら、お皿を出していた時だった。
カタカタカタ・・・と、お皿から小さく音が鳴った。
リコがふと顔を上げ、立ち上がって吼え始めた。
「え?なに??」
「どーした?」
カタカタと音が鳴る所を見た私は、完全に油断しきっていた。
まさかこんな大きいものが来るなんて、予想だにしてなかった。
途端、グラッと床が揺れた。
「へっ?ひゃあぁっ!!」
「ぅおっ!なんだっ!?」
グラグラっと強い揺れが起き、私は隣の志摩くんと一緒にしゃがみこんでしまった。
立っていられないほどの揺れに、思わず私は椅子にすがり付く。
「地震!?」
「すっげぇ!!」
私たちは驚いた。
だって、地震なんてしばらく来てないから。
こんな大きな揺れ、久々に味わったよ!
ガタンガタンと激しく家具が倒れる音がした。
リコは大丈夫かな・・・と心配になっていたとき、
ガシャンガシャンと上で鳴っていたお皿が、揺れに耐え切れなくなって落ちてきた。
「わぁっ!!」
「!!!」
ガシャァァァン!!と、大きな音でお皿が割れる音がした。
すると、示し合わせたように地震も治まった。
「しっ、志摩くん!!」
「ってぇ〜〜〜!!!!!」
落ちてきたお皿から私を護ってくれた志摩くんは、痛そうに顔を歪めた。
「ちょっ、何してんの!?」
なんで護るの!?
急いで彼の腕を見ると・・・うわ、お皿のガラスで血だらけになってる!
「あぶねぇな〜!!怪我無かったか!?」
「無かったけど・・・志摩くん腕怪我しちゃったじゃない」
「マジでか!?道理で痛てぇハズだよ・・・」
とりあえず志摩くんをリビングに連れて行き、急いで消毒液と包帯を取り出した。
「腕出して!」
痛そうに出した志摩くんも、私と驚くハメに。
「ぅわぁ痛そう・・・」
「・・・、水でガラス流す気か?」
「そうね、最初にしておかなきゃ!」
「だぁ――――っ!!!止めろ!!!!」
恐怖感でいっぱいのような志摩くんだけど、私はそんな訴えを聞くことは出来ない。
「手当てしなきゃ!!」
「マジか!?マジなのか?!」
やがて、洗面所で志摩くんの悲鳴が聞こえたリコはようやく机の下から顔を出した。
「・・・・・・お前乱暴にも程があるだろ・・・」
「次は消毒と包帯!」
「聞いてねェし!!」
だって、キチンと私が手当てしなくちゃ。
「・・・なんで護ってくれたの?」
消毒をしながら訊いてみた。
めちゃくちゃ沁みるのか、志摩くんは涙目になってまで我慢してたけど
「あー?わかんねぇっ!それより痛てぇってマジで!!!!」
なんて悲鳴をあげた。
それが志摩くんらしい優しさなのはわかってた。
「・・・ありがとう」
「ん?おぅ!」
明るく笑ってる志摩くんが頼もしく思えていた。
「綺麗に巻けよ!」
「もちろん!!」
そして綺麗に包帯を巻いてあげたとき、再び床が揺れた。
余震が続いてるのか、それは緩いけど少し長く揺れた。
「って怖がりだよなー」
揺れるソファに座っている志摩くんが、にや〜っとして言った。
「そ、そんなことない!」
確かに、さっきの地震が怖いって思ったのは内緒ね。
でも、志摩くんがいるから怖くないみたい。
頼もしいなんて思ったからかな?それとも好きだからなのかな??
どっちみち、私は余震が続く中、笑顔でいられた。
「・・・志摩くん、こうも余震が続くとカレー温められないよ」
「えぇ゛っ!?じゃあお前昼飯はどうなるんだよ!!!」
「・・・・・・リコのご飯食べる?」
「犬のかよ!!!」
結局私たちは、家にあったポテトチップスをお昼ご飯にしたのだった。
志摩くんが居ても役に立たないときもあるのよね。改めて実感してしまった。