「・・・さぁ、いつまで悩んでるわけ?」
呆れ果てたが遂に口を開いた。
それまで私は何を買ったら良いのかわからないでウロウロばっかしてた。
「・・・そうだ、は何買ったの?」
「はぁ?私?」
参考にならないと思うけど?と言いながら、紙袋から取り出したのは、
「・・・なに、それ?」
「これ?犬の耳」
カチューシャで、犬らしき耳がついている。
「可愛いでしょー?」
なんて言いながら私の頭の上に被せる。
「ほんとだー♪・・・って、なんでやね ――――――― ん!!!!!!」
「おぉっ、大阪人もたまげるツッコミやっ!!」
ホントに参考にならなかった・・・
こうなれば、いつもの志摩くんを思い出してみよう。
「何?急に目を瞑って」
「んー?いつもどんな感じだっけと思って、志摩くん」
がニヤッと笑ったのは見えなかった。
「ったら、目を瞑っただけですぐ思い出せるの?」
「うん。・・・普通の人は出来ると思うけど?」
「そんなに好きなのねー!」
いつもの私なら、「なっ!!!そんなことないし!!!」って否定するけど、「うん」と頷くだけで何も返さなかった。
だから少し期待してたは「・・・えぇ、それだけ!?」とがっかりしたみたい。
そんなを放っといて、私は普段の志摩くんを思い出した。
茶髪で、ピアス開けてて、犬みたいで(カチューシャ似合いそう)・・・服は??
「そーだっ!!!」
「お。やっと決まった?」
「うん!買ってくる!!」
私は自分が誕生日プレゼントに貰ったものを思い出して、“似てるなぁ”なんて思ってたりして。
買い物を済ませると、私の家に向かった。
香ちゃんや志摩くんが来る時刻は1時・・・ヤバイ、ちょっと過ぎちゃう。
「・・・あぁっ!!!!」
「ぅわぁっ!なんやの!!」
私に釣られても大声を出した。
「・・・わ、忘れてた・・・」
蒼白になった私は、昨日の夜の出来事を思い出した。
「お茶・・・烏龍茶がもう無いんだった!!」
「はぁ?、何言ってんの?」
は知らないようだけど、私にとって烏龍茶は精神安定剤!無くちゃダメなの!
丁度もう家から近かったから、とりあえず、近所のコンビニで買って帰ることにした。
「。きっと志摩くんたちもう来てると思うから、鍵開けてあげて」
「うん、わかった!」
鍵を渡す。なら安心よね。
「任せた!」
「任された!」
なんて言い合って、私はコンビニへ向かった。
「何本買っておこうかなぁ?」
私だけだったらいいんだけど、志摩くんや香ちゃんやもいるから・・・多めの方が良いかな。
2リットルを5本、籠の中に入れる。
・・・そういえば、前に志摩くんと御用を遂行したときも寄って帰ったことがあったなぁ。
ふと思い出した、夏の日。
確かコーラと烏龍茶について言い争いをしたんだっけ。
「あ゛〜〜〜〜重いっ・・・」
レジまで半分引き摺って・・・行こうとしたんだけど。
「助っ人来たぞー!!」
入り口から、思いっきり知ってる人が向かってきた。
「・・・おー志摩くん」
助かった・・・マジで助っ人が欲しかったところなのよね。
「ありがとう。つか、よくこのコンビニだってわかったわねぇ」
志摩くんはきょとんとして言った。
「だってここがお前ん家に一番近いだろ?」
・・・そーでした。
「兎に角、助かった〜〜!これを私一人では持って帰れなかったわ、ホント!」
籠を渡すと、途端に腕が軽くなった。逆に志摩くんはズシッと重みがかかって、危うく落としかねない。
「ぅおっ!!!お前マジでこれだけ買うのか?!」
「もちろん。うちはよく人の出入りが激しいから、消費も激しいのよ」
まぁ、確かにかなり重いけどね。
帰る時は袋を二つにして、私たちは持った。
「あ、そーだ。志摩くん誕生日おめでとう!」
志摩くんは「ん?」と返したけど、すぐに
「おーそうだった!サンキュな」
・・・忘れてたみたい。
私は覚えておいてあげたのに・・・なんか不本意。
「で、なんかくれるのか!?」
嬉しそうに言う志摩くん。
なんかその嬉しそうなのがムカついた。
「ごめん、用意してないの」
「なに―――――!!!??」
・・・すっごくショックを受けてる。
ほんの悪戯心よ。
すぐに誤解を解いてあげた。
「嘘よ、嘘。ご馳走を振舞ってあげるから」
「マジか!!??」
やった〜〜〜とばかりに嬉しそうにした。
「・・・ちょいと志摩くん、ご馳走だけでいいの?」
「お?他にもくれんのか!?」
・・・なんでこんな馬鹿を好きになったんだか。
「さぁね、知らない」
「んなっ!!!オイちょっ、!!!」
「待てって!!」っていう声を無視して、私は走ってやった。
家に着いた私たちは、ともに息が荒くなっている。
「だぁ―――・・・疲れたっ・・・」
「なんで競争になってたのよ・・・」
因みに、1等賞でゴールしたのは志摩くん。
「お前が走るからだろ!?」
なんて言いながらも、私に勝てたことが嬉しいみたい。・・・私は悔しいけどね。
なんだかんだ言って、結局志摩くんにも手伝ってもらいながら冷蔵庫に烏龍茶を入れた。
・・・仕方ないなぁ。
「志摩くん」
「んー?」
振り向いた志摩くんに、さっき買ったばかりのプレゼントを渡してあげた。
「これあげる!」
「へ?」
「誕生日プレゼント。いらない?」
少し吃驚してたけど、すぐに志摩くんは「いるぞそれは!!」って返してきた。
「はい」
「サンキュー!!」
・・・私まで嬉しくなったじゃない。
だって志摩くん、さっきよりも一番嬉しそうな顔をしてくれたんだもん。
渡してすぐ、私はキッチンを出てそのままリビングに向かっていった。
志摩くんはただ立ち尽くしてただけだけど、
「・・・何くれたんだ?あいつ」
包みを開けると、鎖と紙が擦れる音がする。
「・・・お!」
そう、私は目を閉じて、志摩くんがいつも来ている服を思い出した。
全体的に見て、足りなかったもの・・・それは。
「ドッグタグだ。・・・らしいな」
ドッグタグのネックレス。
在り来たりなようだけど、いつも来てる服には丁度似合うと思ったんだ。
そういえば私にくれたものもネックレスだった。
だから“似てるなぁ”って思ったんだよね。
リビングに行くと、香ちゃんとが楽しそうに談笑していた。
「あれ、志摩さんは?」
香ちゃんの言葉に、私は「感動してた」って答えてやった。
ちょっとした悪戯心よ。
後に私は、リビングにやってくる志摩くんを見る。
彼の胸にプレゼントしたものがかかってるのをみて、嬉しいって思うんだけどね。
・・・・・・・・・・・・おまけ。
「志摩さんお誕生日おめでと〜!!」
と香ちゃんの声が混ざって叫ぶと、志摩さんもまんざらじゃないみたいで「ありがとなー!!!」なんて喜んでた。
まずは香ちゃんが誕生日プレゼントを渡した。
「これ、志摩さん欲しがってたでしょ?」
「おぉっ!!マジで!?さすが香ちゃんだよ!!」
香ちゃんのプレゼントは、絶版になっていてなかなか手に入りづらい書籍。
嬉しそうにパラパラ捲ってた。
「次、は?」
の声に私は、
「ん?私はあげたよーもう」
「うっそ!!いつあげたん!?」
「さっきだよ」
ってゆーか、そんなに吃驚しなくてもいいような気がするけどなぁ?
「じゃあ今度は私の番やね!」
自信満々には志摩くんに渡す・・・アレを。
「はなにくれるんだー?」
志摩くんと香ちゃんは何も知らないで包みを開けてるけど・・・私は知ってるから笑いを堪えてた。
「・・・は?」
開けたときの表情は、凄いものだった。
志摩くんは放心状態・・・というか呆然とそれを見ていたし、香ちゃんは笑いを堪えるので精一杯そうだった。
「志摩さんに似合うと思って!!」
「・・・なんじゃそりゃあぁぁっ!!!!!!」
「おぉっ、突っ込み上手いなぁ志摩さん」
・・・いや、。そういう問題じゃないって。
「あ、そうだ!!」
いいこと思いついた!!!私は急いでリビングを抜け、螺旋階段を登っていった。
わずか数秒で帰ってきた私が持っていたもの、それは・・・カメラ。
それを見た志摩くんは青ざめ、は楽しそうに笑った。
「これまだ何枚か余ってたんだ!撮ろう志摩くん!!」
「なんで俺に振るんだ!?」
「そりゃあ志摩さんが主役やし!!ほら犬耳つけて!!」
「ちょっ、マジか!?」
「「マジ!!!」」
ヤバイと本気で思ったのか、志摩くんは香織ちゃんに助けを求めた。
「・・・香ちゃん・・・」
だけど、世間はそんなに甘くないのよね。
「志摩さん、つけないと二人とも食い下がらないと思うよ」
頼みの綱の香ちゃんは、苦笑しながらそう言った。
根負けした志摩くんは、イヤイヤ犬耳をつけてカメラの前に写ったとさ。