「ぅわぁ〜!!!」
大きな叫び声にリコは飛び起きる。
は窓の外に釘付けになっていた。
「見てみてリコっ!!雪が降ってる!!」
滅多に降らない地域ゆえに、降ればとても嬉しく感じる。
外は、白銀の世界となっていた。
「リコ!散歩行こう・・・あっ、そだっ!!」
の楽しそうな声が響く。
ベッドの上の携帯電話を取り、素早くかける。
たった2コールで相手は出た。
「やっほー志摩くん!!」
『よぉ!!外見たか!?』
「見た見た!!」
相手は、の仕事仲間である志摩 義経。
珍しく早く出るのは、事件のときかこういったイベントのときだけだ。
『!!外出てみろって!!』
「これから出るよ〜!リコの散歩行かなくっちゃ!!」
は急いで着替えを済ませ、片手しか塞がれてないくせに素早く散歩の準備をした。
「これから行きまーす・・・って」
ドアを明けた途端、は思わず携帯を落としそうになった。
「よっ!」
「やっほー!!」
「おはよう、。」
ドアの向こう・・・いわゆる、白銀の世界の中に、いつものメンバーが立っていた。
左から、志摩・・香だ。
志摩と香は『よろず屋東海道本舗』でお世話になっている。
は『天空問屋』でお世話になっていて、つい最近転校してきたの友達だ。
「なっ、なんで・・・」
「お前おっそいなー!!」
携帯を切って志摩は言う。
それでもは状況が読み込めないみたいで、中の暖かい空気と外の冷たい空気に挟まれていた。
「実は、一番最初に雪に気付いたのは志摩くんなんだよ!」
「それで、休みなのをいいことにオレらも呼ばれたってわけ」
二人が淡々と説明をし、ようやく理解が出来たが・・・
驚いたは、此処がサプライズパーティの会場かと疑うほどだ。
まぁ、粗方当たってはいるようだが・・・
「で、なんで私の家の前にいるの?」
リコは早く散歩に行きたいようだが、その前に片付けておきたいことがある。
「「そりゃあ遊びに来たに決まってんじゃん!!」」
「オレは止めたんだけどねぇ・・・」
志摩とは同じようなタイプだ。
言ってみればも同じタイプだが、よりのほうが大人だろう。
イベントごとではしゃぐ二人を止める役は、香とに値しそうだ。
「じゃあ、中に入ってて。私はリコと散歩行ってくるから」
出来れば着替えもしたい。
の格好は寒さ対策を重視しているからだ。
「オレも行く!!」
「はぁ?志摩くんも来るの?」
目がキラキラしてる・・・どうやら、一番嬉しそうなのは志摩のようだ。
ぱらぱらと降ってる雪を見ながら、楽しそうに言った。
「じゃあオレとは中入ってる」
「えっ!?ほんまに!?じゃあそうしとく!!」
香が微笑み、入っていく・・・は嬉しそうに後を追った。
「はぁ〜・・・」
なんなのよ・・・朝っぱらからラブコメですか・・・
はうんざりとした表情をしたが、翌々考えれば自分もそうじゃないかということに気付く。
「よっし!!楽しみだな〜リコ!!」
目の前でリコとお話をしているコイツが、は好きなのだから。
「じゃあ行こっか!!」
「おー!!」
脳も覚めてきたのか、は嬉しそうに笑った。
永倉家の大きな庭に、3つの足跡が増えた。
「うわぁ〜!!すっごい雪積もってる!!」
外に出ても、真っ白な世界は続いている。
志摩とは、その世界が気に入ったようだ。
「すごいねーリコ!」
リコはワンッと吼えた・・・白い息が出る。
3つの足跡が続く中、口を開いたのは志摩だった。
「なぁ!」
「へ?」
リコによって少し前を歩いていたは振り向いた。
途端、視界が真っ白になった。
「わぷっ!!」
「へへっ、命中〜!!」
かぶった雪を払うと、そこにはニシシと笑っている志摩の姿が。
「・・・やったなぁ!!」
バッとしゃがみ、素早く右手で雪を集めて固めた。
「やぁっ!!」
「甘いな!」
「ひゃっ!!」
ひょいっと避けて、再び志摩の投げる球はにヒットした。
「・・・リコ、ちょっとそこにいなさい」
リードを放し、は素早くしゃがむ。
「もういっちょ!」
志摩からの攻撃をかわしたは、何かを雪で包み込んだ。
「いっけぇぇ!!」
不適な笑みで、彼女から離れた『何か』が、志摩の頭に命中した!
「いってぇ!!!なんだコレッ!!」
「へへーん、ちゃん特製アタック!!」
雪を払うと、そこからが愛用している棍が見えた。
「なっ・・・お前オレを殺す気か〜!!!」
「先にやったほうが悪い!!」
くぅ〜ん・・・と呆れたようにリコは鳴いた。
たった目の前で、しかも2人で雪合戦をしていると志摩に呆れているのだろう。
「・・・ということで、今すぐお風呂沸かしてくれない・・・?」
玄関まで迎えに来た香とは唖然とした。
「・・・・なにやってんの二人して・・・」
「あはは・・・各階のお風呂・・・沸かして・・・」
「全く・・・粗方予想は付くけど、そこまではないでしょ・・・」
「っくしゅん!!うぅ゛〜さびぃっ!!」
リコの散歩に出た二人は、服をドロドロにして帰ってきたのだ。
しかも雪で遊んだため、上から水をかぶったようにびしょ濡れ・・・もう一つ言えば、遠くで見守ってたリコまで。
「・・・リコ、一緒にお風呂入ろうね。・・・ご飯はもうちょっと後になりそう」
心から泣きたくなったリコだった。
と志摩がそれぞれ別の浴室に入浴中の頃、たちは・・・
「ったく、何で私らがこんなことせなあかんのよ!」
「まぁ、志摩さんとらしいと思うけど?」
二人が歩いた場所を綺麗に掃除していたのだった・・・・・・。