デュアル パーソナリティ クランケ






 香はベッドに蓮那を寝かせ、と志摩が居たドアの外に向かった。

「どうなってるんだ?」
「さぁ・・・」
 入り口はたちが塞いでため、入ることが出来なかったはず。
 不思議に思ったが、蓮那が帰ってくる前に仕掛けたのかと納得した。
「今度は、志摩くんと香ちゃんが外見張って」
 は棍をぎゅっと握って呟いた。
 二人は怪訝な顔をして、「なに!?」と答えたが、の表情は有無を言わさない。

「私は彼女の傍にいる」



 全てをチェックしたが、後は何処にも仕掛けはない。
「あとは・・・キッチン・・・」
 警戒しながらあたりを見回す。
「・・・・・・なんだろ・・・?」
 何処か、可笑しい。
 このむせ返るような匂いはなんだろう?

 ふと、ゴミ箱に目がいった。
 まさか・・・と、苦笑いをしながらも、はゆっくりゴミ箱を開けた。

「っ!!きゃああ・・・・・」
 思わず棍を落とし、後ずさってしまった。
 そこにはなんと、血だらけになった鶏が捨てられていた。
 悪臭の中、そんなものがあればだって驚くだろう。
「うぅ・・・っ・・・怖すぎ・・・・」
 はお化けも嫌いだが、こういうスプラッタ系も大の苦手だった。
 涙目で棍を持ち、それを操ってゴミ箱を閉めた。
「はは・・・・・やっぱ外がいいな・・・・・・」
 と、振り向いたときだ。

「っわあっ!!!」
 後ろに蓮那が立っていた。
「れっ蓮那ちゃん!居たんなら教えてよぉ〜!!」
 しかし、彼女はゆっくりとの目を見て、

「・・・おまえ、誰だ?」
「・・・・・・・へ?」

 今までの蓮那と違って、低い声がした。
 目も据わっていて、まるで男のようだ。
 がしっとの腕を掴み、ソファに投げつけた。
「ひゃっ!!!」
 倒れこんだは、自分を睨んでいる蓮那が誰か分からなくなった。
 触られた場所が震える。


 ・・・・・・・・震える?


「え・・・?」
 自分の体を見る。
 男性に触られるとき以外、震えることがない体質なのに、なんで・・・・

さんっ!?」
 悲鳴に近い声でキッチンに居た蓮那が叫ぶ。
 その叫び声を上げる彼女は、さっきとは比べ物にならない。
さん、大丈夫!?」
 ソファの上に倒れているを見て、蓮那は真っ青になっている。
ッ!?」
「どうしたっ!!」
 玄関から声を聞きつけて志摩と香が走ってきた。
「あ・・・うん・・・大丈夫・・・」
 苦笑いをしておいたが、どうにも整理が付かない。


「・・・お前、何で震えてるんだ?」

 めざとい・・・。
 志摩の言葉に香も怪訝そうに見た。

「・・・・蓮那ちゃん、私たち外を見張るね」
 敢えてその質問には答えず、は蓮那に微笑んだ。
 さっきとは打って変わった蓮那は、心配そうだが「はい」と頷いた。

「・・・犯人が解ったかも」
 外に出て、第一声はコレだった。
 志摩と香はそれぞれをみて、不思議な顔をした。
 犯人を見たのなら、なら全力で捕まえにかかるはずだ。

「・・・誰なんだ?」
 志摩の言葉には答えず、は家の中を見る。


 体は、まだ震えていた。