デュアル パーソナリティ クランケ






 香も来て、3人は待ち合わせの喫茶店に向かった。
 志摩・香と隣に座り、は向かいに座って依頼人を待つ。

「・・・、前髪ハネてる」
 ふと前に座る香が指を差して呟いた。
「へっ?!」
「あ、ホントだ」
 志摩も見て、納得した。
 先ほどソファの上で寝ていたを見ているからだ。
 は手で前髪を撫で、どう?と聞いた。
「うん、直った」
 香の笑顔に安心して、はぁ〜・・・とうつ伏せながらため息。
「ハネてたんだ・・・もっと早く教えてくれても良かったのに」
 ガバッと起き上がると、途端に志摩がプッと噴出した。
「再発だぞ、
「え゛っ!?嘘ッ!?」
 と、再び前髪を撫でて治すハメになった。



 それから、3人の下に一人の女性が現れた。
 ショートヘアにブラウス・黒のプリーツスカートを履いている、と同じ歳くらいの女性だった。
「始めまして・・・あなたたちが永倉屋の?」
 は見上げ、微笑んだ。
「えぇ、はじめまして」
 の隣に座り、依頼人の蛍瀬 蓮那な涙目で話し始めた。
「実は・・・小さな頃から・・・私、誰かに恨まれてるのかしら。ずっとなの。
 私のロッカーに悪戯とか・・・よくあったの。よく悪戯されるって噂だったから、気のせいだと思ってたんだけど、
 家にも悪戯が・・・友達もかなって思ってたんだけど、中学に上がっても・・・あったわ。
 ・・・両親は事故で他界して、それから一人で暮らしてたんだけど、ずっと・・・今まで」

 彼女は泣きながらに訴えた。
 小さな頃から今までずっと・・・なんてひどい目にあったのだろう。
 助けてあげたい・・・そんな気持ちでいっぱいになった。

「具体的にどんな悪戯だったんだ?」
 志摩も深刻な表情で言った。
 蓮那は泣きながらも、状況を訴えた。
 ロッカー・家の中を荒らす。
 スプレーで家中に落書きがある。
 骸骨のレプリカを家中にばら撒いている。
 それ以外にも、悲惨なものだった。
 それだけの嫌がらせを我慢する蓮那もすごい。

「ひどいね・・・」
 香は今までの話を聞いて、苦い表情をした。
「香ちゃんはあった?そんな嫌がらせ」
「いや、そこまではなかった」
 やっぱり・・・とも渋い表情を見せる。
 嫌がらせは異常なものだった。



「うわ・・・・・酷い・・・」
 彼女の家に行った・志摩・香は絶句した。
「・・・もう・・・コレで4回目よっ!!」
 誰がするのよっ!と蓮那は泣き崩れた。
 玄関にあったのは、猫の死体。それも、何匹もだ。
 志摩と香が片付け、その間は蓮那を宥めた。
 猫の死体が玄関にあった・・・しかも前に4度目。
 酷い・・・尋常じゃない。
 彼女がヒステリックになる気持ちもは分かった気がした。

 やがて、家の中に入るとそこは残骸だった。
 いろんな色のスプレーの痕があり、家具も極力少なくしている。
「私を・・・助けてください・・・」
 椅子に座った蓮那は泣きながらたちに訴えた。
 志摩と香、はそれぞれお互いを見た。
 そして、は蓮那を見る。
「もちろん。耐えたキミは凄いよ。・・・絶対捕まえるからね」



 3人の意思は固かった。
 まずは現場を押さえないといけない。
 志摩と香は玄関、は裏口をそれぞれ見張った。
「誰だって捕まえるんだから・・・」
 は決意を露にしていた。
 それも当然、あれはあまりにも酷かった。
 猫の命を奪い、彼女の精神を壊そうとする人物を許すわけにはいかなかった。
 棍を持って、裏口の前に立っている・・・が。

 一向に犯人は現れない。

 志摩たちのところにも現れてないのだろう、携帯が鳴らないことを証明している。
 はたまた、携帯が教えてくれないのか、どちらかだろうけど。


「っきゃああ!!!!」

 突如彼女の悲鳴が聞こえた。

「えっ!?どういうことよっ!!」
 はそう叫んで、急いで裏口から入った。

 リビングで、玄関から同じように走ってきた志摩と香に出くわす。

「どういうことだ!?」
「わかんない!!」
「とりあえず蓮那は何処だっ!?」
「多分洗面所!!!」
 の声に二人は走り出す。
 もちろん彼女も向かった。

 洗面所にいた蓮那は項垂れていた。
「蓮那ちゃんっ!?」
 は急いで彼女を抱きかかえる。
「・・・・・・見てみろよ・・・・・・・」
 志摩の声が聞こえる。心なしか、彼にしては声が震えていた。
「これは酷いな・・・」
 香ですら絶句していた。

 二人が見たのは、髪の毛が散らばった洗面所。
 真っ黒な髪の毛が落ちていて、足の踏み場もない・・・いや、床が見えなかった。


「な・・・どうやって!?」

 も驚いて目を見開く。

 彼女は気絶して、目を閉じていた・・・。