莉璃と飛鳥と3人で遊びに行ったとき、ふと見かけた雑貨屋で。
それは、置物みたいでの心をすぐに奪い取った。
その置物は、とても綺麗な空を表していた。
きらきら星が光って、月も見え隠れしている。
光の当たり具合によって変わるその姿に、は目を離すことが出来なかった。
「?どうしたの?」
見かねた莉璃と飛鳥が彼女の元に寄ってきた。
「・・・ねぇねぇ、見てこれ!綺麗じゃない?」
の目の先には相変わらずその置物がある。
「ほんとだ・・・、こういうの好きだもんね」
莉璃がそんな様子を微笑ましい笑顔で見守っていた。
「・・・でも・・・」
飛鳥が値段を見て絶句した。
「この置物、高いよ・・・。5500円もするじゃない」
置物にしては、高い。
もちろん何でも屋をしているとはいえ、も高校生だ。
当然この金額は出ない。
「・・・いいなぁ・・・」
は後ろを何度も振り返りながらも、莉璃と飛鳥の後をついて店を出た。
「・・・・・・ね、莉璃」
そんなの様子を見ながら、ふと飛鳥が何か思い立ったように莉璃に呟いた。
飛鳥の企てを聞いた莉璃は、嬉しそうに微笑んだ。
「・・・うん、絶対喜ぶよ!」
そんな二人の様子を知らないは、歩きながらも、まだ後ろを振り返っていた。
それから、はいつもの毎日を送っていた。
学校に行き、そしていつものように話もしていた。
「永倉屋」で困っている人を助けたりもした。
でも、あの置物は忘れられなかった。
それから1週間、は嬉しそうにスキップしながら、あのときの雑貨屋に向かっていた。
毎月振り込まれる小遣いを使うのは初めてだ。
それほど欲しかったらしい、はとても嬉しそうに向かっていった
「・・・あれぇ?」
しかし、あった場所にその置物はなく、『SOLD OUT』と書かれた紙があった。
「・・・嘘でしょ・・・」
あまりのショックに、言葉も出てこなかった。
あの時見ていた光景をもう見ることはない。
涙を流すことはなかったけど、の心の中は大雨だろう。
それから、さっきとは打って変わってはとぼとぼと帰っていった。
かなりショックだっただろう、あの置物はが一目惚れをしたほど綺麗だったのだから。
が一目惚れをするなんて、滅多に無い。
それほど貴重なものだったのだ。
どうやって帰ったのか、彼女自身覚えていない。
「ただいまぁ・・・」
家に帰るとリコが心配そうに鳴いた。
そっと撫で、彼女は静かに着替えるために2階に上がって行った。
やはり、いつものような元気は無い。
着替えようと思ったは、ふとベッドに備えついている棚を見た。
不自然に開いているスペースに目が行く。
そこに買う予定だった置物が置かれるはずだったのに、今はぽっかりと空いている。
「・・・・・・誰か、良い人が買ったのかな」
着替えたは重い足を引きずりながらリビングに向かった。
「よっ」
「・・・へ?」
リビングのソファにいたのは、志摩だった。
いつの間に入ってきたのかは聞かないでおくとして、は愛想することもなく
「志摩くん・・・何の用?生憎今は一人でいたいのよ」
「あっそ。こっちはいいもん持ってきてやったのに、いいのか?」
ニヤリと笑う志摩が少し気味悪く、は少し後ずさった。
「ほら」
投げられた箱を受け取り、は訝しげに思いながらも包みを開けた。
「・・・・・・・・これ、」
箱の中に入っていたのは、が欲しがっていた置物だった。
同じように爛々と星が光り、月が出ていた。
とても幻想的な置物が、とても欲しかった置物が、の手の中にある。
「なんで・・・・・・?」
志摩は笑ったまま、言った。
「なんでって、欲しかったんだろ?」
「え・・・?」
「莉璃と飛鳥から聞いたんだよ。で、お前もうすぐ誕生日らしいからな。プレゼント!」
泣きそうになったけど、堪えた。
腕の中で、きらきらと星が光っている。
「・・・・・・・・ありがとう・・・・」
はあの時と同じように、それ以上に嬉しくその置物を眺めた。
そして、志摩の方を向いて、笑顔で言った。
「志摩くん、ありがとう!」
あの日から、のベッドの上にあの置物がある。
星空の置物は、いつも光り続けていた。
それを、今もは嬉しそうに眺めていた。
気付いていないが、費えない志摩の想いを受け止めるように、は見ていた。