お風呂に入ってきたは、髪の毛を拭きながら部屋に入ってきた。
「お、メール着てる」
 髪の毛を拭く手を止め、パソコンの前に座る。
 マウスを動かし、新着メールを開いた。






謎の仮面]の正体を破れ!!






「なになに?あ、御用だ」
 御用と言うのはの言葉で、依頼を表している。
 何でも屋をしている、『永倉屋』の依頼だ。

『From:萱野 一誠 Subject:依頼について』
 そう書いてあった。
「萱野さん??萱野 一誠・・・何処かで聞いたことあったっけ・・・」
 聞き覚えのある名前に怪訝に思いながら、はメールを開く。
「・・・・・・はぁっ!?」
 内容を読んだは思わず立ち上がった。
 ガタッと椅子は後ろに行き、ガタンと大きな音を立てて後ろの本棚にぶつかった。
 内容はこう書かれていた。


 永倉屋に一つ依頼をお願いします。
 私は香蘭学園高等学校の校長をしているのだが、最近ある事件が起きているのでその犯人を捕まえて欲しい。
 その事件というのだが、実は1ヶ月前から校内に誰か男が出歩いていて、
 女子更衣室から授業中の生徒の制服を盗み出したり、下校中の生徒を尾行したり、執拗なことをしてくるのです。
 だが、犯人はなかなかつかめなくて、学校としても公にすると犯人に逃げられてしまう可能性があります。
 そこで、前回誘拐事件を解決していただいた永倉屋に捕まえて欲しいのです。
 身勝手な言い分なのは分かっています。しかし、いつ生徒に手を下すか分かりません。
 良い返事を期待しています。


「萱野 一誠・・・そりゃ、聞いたことがあるわ」
 ニヤッと笑ったが、ソレは苦笑だった。
 香蘭学園高校…前に女生徒誘拐監禁事件があった学校で、が通っている学校。
 その学校長からの依頼だったのだ。

「・・・・し、志摩くん香ちゃん!!!」
 急いで内容を志摩と香に送っただった・・・。
 二人と相談した結果、依頼を受けることにした。
 丁重なメールを送り、どうするかを考えようと思ったとき、
「ん?メール」
 まさか、また校長!?とか思って顔を強張らせると、それは安心の顔に戻った。
「志摩くんじゃん・・・」
 開き、内容を読む。

 From:志摩 義経 Subject:Re3.依頼について
 じゃあ、俺と香ちゃんはお前の家で作戦立てるから、校長に会って話つけといてくれ。
 くれぐれも、向こうに呑まれないようにな!!生徒としてじゃなくて仕事としていけよ!

「・・・なんで分かるんだろ?」
 まさに今、呑まれていたところだった。
 呑まれていたことは伏せて、OKの返事を返し、はパソコンを閉じた。





 翌日、はいつ言おうかと考えていたが、気付いたときにはもうホームルームが始まっていた。
「じゃ、これだけだ。授業の用意しとけよー」
 担任はそういうと、教室を出て行った。
 教室内はざわついている。
 いましかないかもしれない。

「莉璃、飛鳥!」
 近くにいた二人はん?と振り返った。
「私次サボり!!保健室に行ってくるね!」
「えっ!?」
「なんで!?の好きな国語じゃん!!」
 二人は目を見開いて驚いているが、今は説明をしている暇は無い。
「ちょっとね。あ、そだ!!」
 行こうとしたが、再び戻って頭の上に“?”を乗せている二人に言った。

「ね、謎の仮面]について、リサーチかけてくれない?」
「え?」
「それって今有名の?」
 謎の仮面]・・・生徒の間ではそう呼ばれているが、その人物を捕まえることが依頼内容だ。
「うん。・・・えーと、制服を取られた少女から依頼があって」
 校長からなんて言ったら驚くよね、と思って嘘をついたのだが、二人はあまり気にはなってないようだ。
 ちなみに2人は永倉屋の存在を知っている。
「もちろん、任せてよ」
「私たちを誰だと思ってるわけ?」
 納得して、不適な笑みを残した。

 ・・・実は莉璃と飛鳥は報道部と新聞部に所属していたのだ。
 実はこの3人、気付けば結構怖いメンバー。(報道部・新聞部・何でも屋)

「ありがとっ!」
 微笑んで、急いで教室を後にした。
って仕事熱心よね」
「私たちも頑張らなきゃ。のためだもんね!」
 二人は、早速聞き込み調査に当たった。



 教室を後にしたは、全速力で走り出した。
 髪を伸ばしていたときは左右の腿に当たって結構邪魔だったのだが今はスッキリしている。
 気にしないで走るは、ゆっくり歩く担任にすぐ追いついた。
「先生!!」
「ん?」
 振り向いた担任はを見るなり、顔を輝かせた。
「おぉ、永倉。お前相変わらずテストの成績良いなぁ。得意の歴史、国語は学年トッ・・・」
「それよりっ!!」
 遮るに少し吃驚したのか、「ど、どうした?」なんてどもりながら聞いてきた。
 しかしは血相を変えて叫ぶ。
「校長先生に謁見させてください!!」
「・・・・・校長?」
 一瞬担任は怪訝に思ったが、ふと真っ青な表情に変わっていった。
「ま、まさか!?」
「・・・へ?」
「お、お前・・・イタリアに行くのか!?その報告かっ!?」
「い、いや・・・」
「本当に行くのか!?」
 今やは両肩を担任に持たれ、がくがくと振られる。

「い、いやだから違いますっ・・・先生酔う〜〜〜」
 がくがくとされ続け、はパニックに陥りそうだ。
「お?そうなのか??あ、あぁすまん!」
 ぱっと離すと、は後ろへよろけた。
「だったらなんだ?」
「え?」
 ふと、御用という文字が浮かんだ・・・が、
「ちょっと・・・ありまして」
 不自然に聞こえるだろうが、にはそう言うほかない。

 しかし担任は・・・敢えて何も聞かないのか、
「・・・仕方ないなぁ・・・ついてこい」
 と、ゆっくりだった速度を上げ、廊下を歩いていった。
「は、はい!」
 はあっけに取られた顔を戻し、担任の後を小走りでついて行った。

 職員室に入り、そのまま隣の部屋に入る。
 すると、そこから階段が伸びていた。
 そこを昇り、ドアの前に来て担任はノックをした。
「はい、どちら様かな?」
「槌田です。校長先生、うちのクラスの生徒が会いたいと言ってるんですが」
 校長・・・萱野のことだ。
 優しそうな口調だ。
「そうか・・・入りなさい。」
 声を聴いた担任は、に向かって合図を送った。
 頷き、一言。
「失礼します。」


 担任は心配そうにしながらも帰り、部屋にはと萱野の二人になった。
「で、どういった用件だね?」
 優しい笑顔が、安心感を持たせて・・・くれる。
 そう思ったの脳裏に、ふと志摩の顔が浮かんだ。
『呑まれるなって!!』

 ・・・そうだった。
 キッと、仕事をする目つきに変えた。



「萱野 一誠さんですね」

 彼女はニッと微笑み、茅野を見た。

「どーも、永倉屋です」