『志摩義経のピッキングテクニック』・・・読みましたか?
 そこで、不覚にも永倉 は自分がつけていた日記を志摩に見られてしまっていました。
 今日はそのときの志摩の様子、更にの私生活や邸宅の中、書いていた日記の内容を大公開!!






勝訴=志摩  ストリップ=彼女の日常






「じゃあ香ちゃん、俺はの部屋に行ってくるから」
 志摩の言葉に香はガシッと腕を掴む。
「イヤ、志摩さん。勝手に家に入ったのだって犯罪なのにもっと大罪背負う気?」
 確かにもっともな意見だが、ここは志摩が有利になっておきたい。
「アイツの弱みは握っておかなきゃな」
 フフフフ・・・と、恐ろしい笑みをして、志摩はそう言った。
「香ちゃんも来るか?」
「遠慮しとく」
「即答かよ」
 香は志摩の腕を離したが、一つ忠告を。
「下着とかは盗まないよーに」
「するかボケっっ!!!!!」
 一発香の頭を殴り、志摩はリビングを出て行った。
「まったく、のこととなるとこうなんだから・・・」
 頭を抑えてそう呟いた香の言葉は、幸いにも志摩の耳に届くことは無かった。



 リビングを出た志摩は、エントランスホールにある螺旋階段を登って2階に辿り着いた。
 1つ問題なのは・・・
「いや、お前は来なくていいぞ?」
 鼻で鳴くリコがついて螺旋階段を登ってきたことだ。

 2階の廊下も、1階同様広い。
 ゴールデンレトリバーのリコと横に並んで歩いても、意外とスペースがあることに驚いた。
「さて、の部屋は何処だ・・・?」
 階段を上って左側の廊下を行くと、直角に曲がる廊下が見える。
 奥に一つ部屋があるみたいだ。しかし、そこにピアノが置かれていることは後に分かる。

 突き当りを曲がり、5つ部屋を通り過ぎると、さっきと同じ光景だ。
 同じ壁の奥にピアノルームと同じような部屋がもう一つ見える。バスルームらしい。
 更に両側に5つずつ部屋があり、また同じ光景がある。
 曲がって、5つ部屋を通り過ぎると、志摩はまた直角に曲がる廊下を曲がった。
 さっき、螺旋階段を登ってきた廊下だ。
 よく見ると、壁に4つのドアがある。

「・・・なんだ、この部屋数は・・・」
 さすが邸宅と言ったところだ。唖然としたが、部屋の検討はついていた。
 実は不覚にも、の部屋だという証拠、『's Room』という立て札がぶら下がっていた。
 しかし、志摩にとって全く予想できなかったことが起きた。

「・・・・・・どっちだぁ?」

 左側にある部屋の5つのうち、2つ・・・ドアの前にぶら下がっている。
 さすがお嬢様、部屋を二つ占領しているということだ。
 他にも2部屋のドア、そして中央に『Dress Room』がある。
 大方、兄の部屋と家族分の服が中央の部屋に収納されているのだろう。
 ということは、反対側は両親の部屋だろうか。

「どっちか入ってみるか」
 志摩は一番端の部屋のドアを開けた。
 ・・・いや、正確には開けようとした。
 ガチッと言う乾いた音が聞こえ、引っかかって開かなかった。
 こいつ、鍵かけてやがる。
 志摩は舌を打つ。
 そう、いつもは鍵をかけずに学校に向かうだが、今日はたまたまイヤな予感がしたのか、
 しっかりと2つの部屋に鍵をかけていったのだ。

 しかし、を負かすには止むを得ない。
 志摩が取り出したのは一つのヘアピン。
 フフフと恐ろしい笑い声をあげ、数分後、カチッという音が聞こえた。
「父さんから教わってたんだよなー」と、不敵な笑顔を見せた。
 ついでに隣の部屋も開けておき、まずは一番端の部屋へ潜入した。
「あ?」
 志摩が開けた部屋には、大きなベッドがあった。
 しかしベッドとクローゼット、あとベッドについているいろんなものが置けるミニテーブル以外くらいだ。
 逆に、机や仕事をする上で必須アイテムのパソコンが見当たらない。
「もしかして寝室か?」
 ベッドは大きく、ダブルほどのサイズを一人で使っているのかと思うと半ば怒りすら湧いてきそうだ。
 しかしそれ以上に、ベッドの先にある開くタイプの窓が大きく感じた。
 ドアを閉めようとすると、リコがスルッと部屋に入っていった。
「ん?」
 再び開けてみると、ベッドの上に上がって気持ちよさそうに眠り始めた。

 リコが前足を引っ掛ければドアはすぐに開く、そういった形のノブだ。
 このまま閉めていても大丈夫だろう。
 志摩はそっと閉め、敢えて部屋の鍵は閉めなかった。

「ということは、こっちが本命か・・・」
 付けているのなら、の日記などが読めるか。
 そんなことを考えながら、志摩はドアを開けた。

 部屋の中は、結構シンプルだった。
 白と赤で統一され、結構変わった家具がある。
 らしい、スッキリしている中にも独特感がある部屋だ。
 よく考えれば、先ほどもベッドも白と赤で統一されていたはずだ。
 人形類は寝室の端にあったテーブルの上に並べられていて、こっちのデスクルームにはあまりない。

 端に机があり、パソコンが置いてあるため、少し長くなっている。
 引き出しなどは一切無い、シンプルな机だ。
 机の上には珍しい、可愛らしく装飾されてるデスクトップパソコンとノートパソコンがある。
 アップル社のパソコンではないのに、凝ってるとは。
 なんて思いながら、机の上をよく見る。

 学校の教材や、大きい荷物は天井から取り付けてある戸棚についているみたいだ。
 きっとの身長だと机の上に登らないと届かないだろう、と志摩は納得する。
 筆記用具や小さいノートなどは机の上にあった引き出しの中にある。
 と言うことは、日記もこの中か。
「・・・・・・妙に片付いている割に、見つからないな」
 引き出しの中に沢山のノートはあるものの、『Diary』と書かれたノートは見当たらない。
 この期に及んでだが、プライバシーも一応あるため、他のノート類は覗かないようにしていたのだが・・・。
 果たして、数多あるノート類の中にあるのだろうか?

 とりあえず、次に部屋の中を仰ぎ見た。
 中央は広く、大きなテーブルがある。
 今は両親がいないためリビングに誘導するが、きっと友達が来たらここの部屋に案内していたのだろう。
 冬は炬燵が置かれそうだ。

 そして、正面には大きな窓がまたしても存在している。
 横にはオーディオ機器があり、テレビやDVD・ビデオレコーダーもある。
 そこに並んでいるCDは、結構洋楽が多い。
 幅広い曲を聴いているのだろう。
 そりゃ、そうか。自分でも作ったりしていたのだから。
 隣にある本棚には半分が漫画、半分が小説となっている。
 一角にあるファイル集には、詩や曲が書いてあるらしい。(そう背面に書いていた)

のヤツ、日記はつけないのか?」
 なんて思って、弱みを探そうとしていた志摩はふと、パソコンに目が行った。
 休止中になっていたデスクトップパソコンを起動させてみると、やっと志摩の目当てのものが見つかった。
「お、あったあった」
 デスクトップに貼り付けていたノートパッドのタイトルが、『Diary』とある。
 それをダブルクリックすると、パッと大きく写った。
「おぉっ!?」
 このページは7月分だったらしく、少ないところもあるが毎日きちっと書かれている。
 志摩はつらつらと読んでいき、それぞれ百面相あるのか疑われるほどいろんな表情をしていった。



 日付...7月1日(木)
 天気...曇り
 内容...今日は体育があった・・・最悪。雨降ってくれればよかったのになぁ。
    永倉屋とよろず屋にも御用が無いし、毎日暇なんだよね。面白いこと無いかなー。
    まだ7月初日なのに、めちゃくちゃ暑い・・・
    外に出たくないな・・・。夏休みは家の中にいよーっと。
    でも、家の中に居たらクーラー病になっちゃうかな。
    莉璃や飛鳥誘って買い物に出かけよう。

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 日付...7月6日(火)
 天気...雨
 内容...実は、今日思ったんだけど、志摩くんって小さいよね。
    18歳でなんであんなに小さいんだろ?ふと、思った。
    私より少し大きいくらいって、なんか可哀想・・・。
    ムカつくから別にいいんだけどね、その高さでも。イジれるし。
    ただ、あの小ささのせいか、本人の天性なのか知らないけど、たまに可愛く思うわけよ。
    ・・・可笑しいよね!!天変地異が起きるかも!!・・・雨だからかな?
    変なの。ワケわかんないわ、あの人は。

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 日付...7月19日(月)
 天気...晴れ…つか、快晴すぎ
 内容...今日は久々!よろず屋の御用だあ!!
    学校も休みだし早速張り切っていったんだけど、なんと尾行だけ。
    その結果を御用人に教えて、仕事は終了。
    快晴過ぎる太陽に負け、どこかに非難することにしたんだっけ。
    で、志摩くんを初めて私の家に招待したんだけど、
    ・・・そりゃ、ちょっと大きい家だけど、そんなに吃驚することないじゃないって程吃驚してた!
    ほんと、すごい驚きようだった。
    リコに最初警戒されてたんだけど、やがて仲良くなったし・・・まぁよかったのかな?
    ・・・香ちゃんを招待しても、あれほど吃驚するのかな?まぁ、志摩くんだけだろうね。

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 日付...7月21日(水)
 天気...晴れ
 内容...莉璃と飛鳥と学校で話してたんだけど、香ちゃんって細い!!
    飛鳥が持ってきてたのは雑誌。そこに香ちゃんもとい“キョウ”が載ってたんだけど、
    香ちゃんすっごい細いなぁ〜!!って思った。男の人なのに、ちょっと羨ましい。
    ちょっと棍の訓練をしながらダイエットでもしようかなー・・・お腹にお肉ついてきたかも。
    二の腕は棍の練習ですぐ痩せるんだけど、お腹は腹筋鍛えなきゃ。
    莉璃と飛鳥も「キョウって細いねー!!ちょっと痩せなきゃ」って言ってた。
    細いのによく言うよー、ホント!でも、他人事じゃない。私も頑張って痩せなきゃ!!

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「・・・なんか、いろんなことが書いてあったな・・・。
 でも、6日のはなんだっ!!?俺ってそんなに・・・小さいけど」
 少し項垂れ、志摩はパソコンを閉じる。
「でも、弱み発見!」
 しかしその方の喜びのせいか、また嬉しそうに笑った。

 が帰ってきたときに、『香に日記の内容をバラす』と言っていた志摩の言葉の真相・・・それは、21日の日記のことだろう。
 でも、6日の日記を言えば、きっと香は笑う。


「・・・香ちゃんには黙っててやるか」

 まだ帰ってきていなかったは、志摩の言葉を聞くはずがなかった。