「、今日遊んで帰らない?」
学校も終わり、莉璃と飛鳥が私の席に集まってきた。
「いいけど、何するの?」
たまには仕事ばっかじゃなく、気晴らしに友達と遊ばなきゃね。
莉璃と飛鳥はにやっと笑って、腕を掴んだ。
「な、なによ?」
「逃げない?」
「何で逃げたくなるの」
「「お化け屋敷だからよ」」
「・・・・・・嘘でしょう?」
帰りたい・・・私は心底思った。
嫌がる私を引きずって、莉璃と飛鳥が連れてきたのは本格的なお化け屋敷。
独特の冷気と言い、外装の不気味さと言い、入る前から気が滅入ってしまった。
・・・へっ!?
永倉 は棍術の使い手のくせにお化けが怖いって!?
ち、違うわよっ!!怖くなんかないわっ!!
お化けも、その上に見える白い何かも!!
こ、怖くなんか・・・ない・・・(涙目)
「チケット買って来たよー!」
「よし、入るよ!」
「やだ・・・」
私の言葉を聞いた莉璃はムッとして、
「あのが、お化けが怖いくらいでお化け屋敷に入らないなんてことは・・・」
「ないっ!!!絶対ないっ!!!」
挑発に乗ると良い思いはしない。
分かっているのに、罵声を浴びせられるとムカついて言ってしまう。
そんな私の性格を知ってる莉璃は、ニコーッと恐ろしい笑みをして、
「よし、じゃあ入ろう♪」
「ひゃああ・・・・・・」
私を引っ張って入り口の飛鳥の下まで行った。
こ、怖い・・・さっきから身体の震えが止まらない。
入ると、なんか暗くてひんやりした空気を感じる。
最初は何もない・・・と思っていると、横の襖が急に開いて恐ろしいお化けの格好した人が出てきた。
「っひゃああ誰っ!!??」
分かってる・・・ヤラセだってのは分かってる!!でも怖いものは怖い!!!
「、なんでこんなにお化けが怖いんだか」
中の様子で詰まんないと判断した飛鳥は、そう莉璃に言ってる。
「さぁ・・・?ほんとに見えてるからじゃない?」
「本人の自覚は無いのにね」
「うわぁっ!!!ひ、人が浮いてるっっ!!!」
無理矢理先頭に立たせているため、私の反応は丸分かり。
むしろ、私の反応を楽しんでるでしょう・・・莉璃、飛鳥。
何もないところでも叫んでいる。
・・・でも、本当にいるんだってば!!!!
舞台は屋敷の中から茂みに変わった。
そこからいろんなものが出てきたけど、私はそれら全てに悲鳴を上げてしまった。
「っきゃあっ!!!」
そして、最後に出てきた綺麗な女の人のお化けと化け猫にも、不覚ながら悲鳴を上げた。
「・・・?」
「・・・へ?」
お、お化けの知り合いなんかいないわよっ!?
「ホントだ。よっ、」
ん?
あ、あれ・・・・・・?
「志摩くん?で、こっちは香ちゃん・・・死んだの?」
冗談のつもりだったのに、志摩から思いっきり頭を叩かれてしまった。
痛さのあまり、頭を押さえてうずくまる。
香が隣を睨んだが、志摩は笑いながら「ツッコミだ」と答えている。
「で、お前、どうしたんだ?」
「い、いや・・・莉璃と飛鳥に連れてこられたのよ・・・って、あれ!?」
振り向けば二人がいない!!!
「ふ、二人はっ!?!」
「向こうに行ってたよ」
香ちゃんは何事もない様子で出口の方を指差した。
あっ!!二人とも、置いていったなぁ!!!
「・・・で、二人はなんでお化け役なんかしてるの?」
「あぁ、よろず屋の依頼だ。は学校があるだろ?」
なるほど、御用ね。
すると、向こうから話し声が聞こえた。
「お、客が来た」
「は友達追いかけたら?」
「う、うん・・・・・・」
でも、出口はかなり先。
ひ、一人では無理かな・・・到底。
「・・・私も茂みに隠れてる」
その言葉に志摩くんはきょとんとして首を傾げた。
「何でだよ?」
「えっ・・・いや・・・あの・・・」
すると、志摩くんはにやりと微笑んだ。
そう、あの莉璃と同じ微笑だ。
「まさか、お化けが怖いのか?」
「そ、そんなことないわよっ!!!!」
しかし突如聞こえた女の人の悲鳴に、つられても悲鳴を上げてしまった。
ニヤニヤしてる、志摩くんと。
意外だなって思ってる、香ちゃん。
「・・・・・・こ、怖いです・・・」
正直に答えるほかに道は無いみたい。
だから、一人で行けなんて言わないで――っ!!!
「志摩さん、を置いててもいいんじゃない?これ以上進めないと思うし」
いろんな音にビクッと肩が震える私を見て、心配そうに香ちゃんは言ってくれた。
有難う・・・香ちゃんが神様みたいだよぉ・・・
すると志摩くんも、
「そうだな。の意外な弱点も知ったことだし、こいつの声も結構怖そうに聞こえるだろ」
「いいのっ!?」
「あぁ」
よかった・・・
でも、莉璃と飛鳥には何かしらの刑を与えてやろうと固く誓った。
このあと、なんとスタッフの人からオレンジジュースをもらったんだ!
なにはともあれ、よかったよかった!
後日談のことなんだけど、二人の置き去りはわざとだったらしい。
もちろん、ガツンと殴っといたけどね♪