「、ご飯持ってきた?」
友達の七朝 莉璃と逸目 飛鳥がの席に集まる。
「うん。一応ね」
の手には、お手製の弁当が握られていた。
莉璃と飛鳥も手には弁当がある。
「じゃあさ、食べて帰らない?」
「うん、そうしよう」
も頷き、飛鳥も頷いた。
今日は午前中で終わる。
しかし、弁当を持ってきている生徒が多いらしく、のクラスも半分が弁当をつついていた。
「「「いただきまーす!!」」」と、弁当に箸を付けたそのとき・・・
の鞄から聞こえるのは、機械音。
今新しい、曲が流れる携帯だと分かる。
「はいはい?」
この音は・・・と思いつつ、は電話を取り出した。
ディスプレイに映ったのは、『志摩義経』
「誰?」
「まさかあのに彼氏!?」
「ち、違うよっ!!勘弁してっ!!」
大きく首を振って、ご飯を口に運びながら、メールを開いた。
メールには、こう書かれていた。
『From:志摩 義経 Subject:依頼について
よぉ、!仕事の依頼が入ったぜ!水瀬 真咲さんから、妹の捜索願いだ。
一週間前から帰ってこないんだけど、両親は気にすることないんだとさ。
「学校の方に頼んでいる」と言ってるらしいんだ。
気になったから依頼をしたらしい。今日は香ちゃんがいないから、俺らでやるぞ。学校は何時ごろ終わるんだ?』
「・・・訳が解らない・・・?」
の頭の中に、『?』が浮かんでいる。
ちなみに、香は今海外に撮影に行っていて、参加できない。(勿論と志摩はお土産を頼んでいる。)
二人でやるのは別に良いのだが、肝心の依頼内容がさっぱり理解できないではないか。
「ちょっとごめん、電話していい?」
携帯を耳に当てながら、は友達二人に聞いた。
案の定、二人は
「いいけど、彼氏?」
「もぅ、教えてくれても良いのにー!」
「だから、違うって!!・・・友達よ」
二人は仕事のことは知らない。
仕事仲間と言いそうになったは、内心焦ってしまった。
騒ぐ二人を放って、電話を志摩に掛ける。
携帯を持っていたのだろうか、1コールですぐ出た。
『どうした?』
「どうしたもこうしたも、御用の意味がさっぱりわかんないんだけど」
『だから、水瀬 美咲さんを探すんだって』
捜索人の名前を今初めて聞いたんだけど、と愚痴を零す。
「つまり、両親は学校に頼んでるって言って美咲さんが帰ってこないことに違和感を感じていないけど、
一週間も帰ってきていないからお姉さんは心配してるわけね。ってことは、その学校が怪しいわねぇ」
『あぁ、そうだ・・・っておまえ、授業はどうしたんだ?』
機械を通じて、志摩の怪訝な声が届く。
「今日は午前中で終わり。でもご飯食べてる。それより、美咲さんの学校は何処だったの?」
『ん?香蘭学園ってところだ』
・・・香蘭?あれ?うちの学校も・・・
「それ、ここじゃん!!!」
『ここ?もしかして・・・お前が通ってる学校か?』
「そうよ・・・」
『じゃあ、校門まで行ってやるよ』
志摩から、あり得ない言葉が返ってきた。
その言葉には怪訝そうな顔をして、莉璃と飛鳥も話している内容に怪訝がっている。
「・・・なんで?」
『その学校に関係があるんだろ?じゃあ俺が行った方がいいじゃねぇか』
「あっ、そうか」
2・3回頷き、は二人の友達を見る。
ニヤニヤしている。
やはり彼氏だと思っているのだろうか。
「じゃあ、1時に校門前ね。はいはーい」
小声でそう言ったが、莉璃と飛鳥の耳にはしっかりと聞こえていた。
「・・・なぁに?」
地獄耳に怖いものはないのだろうか。とでも言いたそうなの目だ。
「なんでもないよ?」
「校門前に待ち合わせて、デートだもんね!」
「違うってば!!!」
「なに、永倉って彼氏いたの?」
ふと、後ろで聞こえた声に振り向くと、そこにいたのはクラスメイトの男の子。
「椎野くんまで言うの!?違うってば・・・」
椎野と呼ばれた男は、の否定の多さに少し安堵感を覚えていた。
しかし、それを見逃さなかったのは莉璃だ。
「あら、椎野。今ホッとしたでしょ」
「なっ!七朝うるせぇ!!」
そう言って、男の子は教室を出て行った。
「なんでホッとしたの?」
聞いたのはだ。
飛鳥は知らないの?といった眼で見たが、
「まぁ、は鈍感だもんね」
「でも、椎野はあんたにお熱らしいよ?」
は、へ?と素っ頓狂な声を上げてしまったが
「やだなぁ莉璃!飛鳥まであるわけないじゃん!」
なんて否定までしてしまった。
哀れなり。
ご飯を食べ終わると、丁度良い時間になっていた。
「じゃ、先に帰るね!」
弁当箱をしまい、携帯を片手には教室を出て行った。
「・・・ねぇ莉璃」
「・・・多分、考えてることは一緒だと思う。飛鳥、行くよ!」
二人はの後を付けるべく、そそくさと弁当箱を片付けだした。
その頃、は小走りで下駄箱まで来ていた。
ローラーブレードに履き替え、ジャッと軽快な音を響かせると下校中の生徒がなにか注目している。
勿論、その人物は志摩だ。
少し恥ずかしそうに頬を赤らめている。
「志摩くん!」
志摩の名前を叫ぶと、本人は気付いたらしく顔を上げた。
「おせぇぞ!」
「まだ5分も経ってないじゃない」
起用に志摩の前で止まり、は携帯を見ながらそう言った。
志摩は、はぁ〜と溜息をつくと、を引っ張っていった。
「うわっ、ちょっ、こけるってば!」
「ここは目立つ。もっと離れるぞ」
ローラーブレードなため、転びそうになりながらも一生懸命バランスを保ち、は志摩の後をついて行った。
「飛鳥、向こうにいるよ」
そのころ、今までの彼女らの出来事を見ていた莉璃と飛鳥は、校門のところでを見ていた。
「へぇ〜あの人がさっきメールしてた人?」
「らしいね。確か、「志摩くん」って呼んでた」
楽しそうに飛鳥はメモ帳を出す。
なんだかこっちは探偵ごっこをしているみたいだ。
しかし何故か気付くこともなく、は校舎を見る。
「水瀬 美咲さん・・・多分、先輩なんだろうなぁ」
「で、学校では何か変わったことはないのか?」
志摩も校舎を見ながら聞く。
しかしは首を横に振った。
「ううん。でも、研修とかも何も聞いてないし、預かるなんてあり得ないよ」
ここ最近、研修や旅行はない。
そのため、預かるのは学校内となるのだが、それでは・・・あり得ないことが多い。
「・・・そういえば、失踪事件のようなことはあるみたい」
校舎を歩いていると、結構『○○が音信不通』とか、そう言った類の話が多い。
学校側は何事もないように接しているのだが、隠しているのか・・・はたまた実際に関与しているか。
「・・・誰かの命令でやったとか?教師、或いは生徒の仕業だと思う」
の目は校舎の隣に泊まっている駐車場に向いた。
白い車の中、黒のワンボックスカーがただ一台止まっていて目立っている。
「とりあえず、少し見張るか」
「賛成ー」
「飛鳥、たちの声聞こえる?」
「ん〜・・・ちょっと聞こえないわ。でも、なんか深刻そうな話してるみたいよ」
探偵ごっこ中の莉璃と飛鳥は、未だ校門の前で見張っている。
「何処かに移動視する様子はないみたいよ、莉璃。どうする?」
「ん〜・・・現状維持!」
と言ったときだ。
莉璃の肩にポンッと手が置かれ、声が聞こえた。
「こら、キミ達。居残り補習を忘れていないかい?」
「「へ?」」
振り返ると、少し中年で、頼りない先生・・・小西が立っていた。
先ほどから、校門の方が騒がしい。
しかも、知ってる声がする。
「ん?」
がふと校門を見ると、なんと帰ったはずの莉璃と飛鳥が先生と言い合っている。
「・・・・まさかね」
徐々に顔が蒼白になる。
「?」
「・・・志摩くん。私の勘なんだけど、犯人解った」
「はぁ?」
は、目を校門に向けたまま、淡々と話し始めた。
「いい、志摩くん。校舎の隣の駐車場に黒い車が止まってるの。
あれが小西先生の車だから、そこのトランクに入ってて。
多分一回校舎の中に連れて行くと思うから、私はそっちについていく」
「あ?おい!!」
「犯人間違えてたらごめんね」
志摩の返事を聞くよりも先に、一方的に謝ったはすぐさま走り出した。
ジャッ、ジャッ、とローラーブレードの音が響く。
「先生!」
叫ぶと、三人が一斉に振り向く。
小西の表情はわからないが、莉璃と飛鳥は明らかに真っ青になっていた。
「莉璃と飛鳥、どうしたんですか?」
「あぁ、永倉さんか。七朝さんと逸目さんは居残り補習があったんだよ」
「そんなのないってば!!」
「見逃してよ〜!!」
二人はグッと身を引くが、小西の力には勝てない。
ズルズルと引きずって校舎に向かう。
なるほど、時間を潰させるための手口と思えば納得も出来る。
それならこっちだってと、はにっこり微笑んだ。
「じゃあ、私もついていこうかなー!」
「永倉さんも?」
確信した。
少し、嬉しそうな顔をしたな、コイツ。
「そうか。じゃあキミも来たらいい」
と、二人の腕を離して先に向かっていった。
「こっちから乗ってやるわ」
「え?なんか言った?」
「ううん。ほら、行くよ飛鳥」
しかし、飛鳥は動かない。
「私たち補習なんてないよ?」
莉璃も頷いた。
「・・・とりあえず、受けとこうよ。ね?」
ここで逃げてもらってもいいんだけど、それだと後に二人がどんな目に遭うかわからない。
が微笑むと、やっと納得してくれたようで二人は歩き出した。
「ところで、志摩くんって人はいいの?」
莉璃の言葉に今度はが止まる。
「・・・見てたの?」
「「うん」」
フルフルと身を震わすが、やがてはぁ〜っとため息をついた。
「まぁいいけど。志摩くんはいーの」
そういって、ローラーブレードで走り出した。
が友達と行ったあと、一人志摩はその様子を見ていた。
「・・・あの男が犯人なのか・・・?」
そう判断したら、志摩も行動が早い。
が言ったとおり、駐車場に止まっている唯一の黒い車に向かい、その前で待っていることにした。
「のヤツ、何考えているんだ?」
「で、私はこっちの法則を使ったほうが良いと考えたわけよ」
教室に、の声が聞こえる。
その考えに、莉璃、飛鳥、小西はおぉ〜っと感動していた。
「なるほど、そっちの方が明らかに早い」
「すごーい!!」
「先生をも唸らせた・・・」
は胸を張って「でしょー!すごい?」なんて言っている。
「さて、よく頑張ったね。今日は僕が送ってあげるから帰る支度をしなさい」
小西の言葉に莉璃と飛鳥は
「えっ!?いいの先生!?」
「マジで?太っ腹〜」
なんて喜んでいたがは内心で唇を吊り上げた。
なるほど、学校側は関係なくてこいつが連れ込んでいるんだ。
やっぱり・・・志摩くんを張らせてて正解ね。
「先生送って〜!!」
そう思うや否や、も恐ろしい。わざと送ってもらおうとするんだから。
「ハイハイ」
嬉しそうな顔を隠して、小西はそう言った。
志摩の携帯のメロディが鳴った。
からだ。
もうすぐ車に来るらしい。
「よし、じゃあ入っておくか」
の推測は正しかったようだ。
志摩はニッと笑い、トランクを開けてその中に身を隠した。
薄っすらトランクを開けていると、5分も立たない間に、4人の姿が見えた。
来た、とばかりにトランクの蓋を閉める。
「先生、私たち3人で後ろにのりたい!!」
「はいはい、いいよ」
小西はそう言って後部座席のドアを開けた。
「やったー!」
飛鳥、、莉璃の順番で中に入る。
「じゃあ出発しますよ」
内心、やったと思っているのだろうか。
小西の車が、女子高生を監禁している場へと向かって行った―――・・・