♪」
 ご機嫌の呼びかけを、てっきりラビかと思ったくらい。
 でも違った。・・・え、音符とかつけてたよね?





toy -玩具-




「何?ラ・・・」
 そこまで言って、振り返る。そしてヤバイと思って再び笑顔に戻した。
「・・・アレン」

 そう、私を呼んだのはラビじゃなくてアレンだった。
 語尾に音符をつけるところから、そう判断したんだけど・・・それは間違いみたい。
 アレンは少しむっとして言った。

「今、ラビと間違えました?」
「そんなことないよ〜」
 ヤバイ、ばれる。
 なんだかんだ言って、アレンって独占欲強いんだよね(汗)


 まぁいいやと思ったのか、アレンの表情が和らいだ。


♪ちょっと目を瞑っててください♪」
「・・・キスはナシね?」
 此処は談話室。
 思いっきり他のエクソシストも居るんだから、それだけは勘弁。
 前に素直に瞑ったときにされたことは覚えてんだから。
 
 それでもアレンは満面の笑みで、「わかりました」って言ってくれた。

 じゃあ安心か、と私の単純な思想で眼を閉じる。

 なんだろう?
 頭に何か違和感があった。
 ・・・でも、目を閉じてるからわかんない。

「・・・、髪の毛を解いても良いですよね?」
「うん、いいよ」
 ってゆーかもう解いてるじゃんアレン!
 私には選択権というものは与えてくれないの!?

 左右の髪を解かれ、上に何かが乗ったような気がした。



「はい、いいですよ♪」
 そう言われて素直に目を開けた。

 ・・・あれ?アレンを始め、談話室に居るみんなが私を見てる気が・・・する。

「うん、やっぱりなら似合うと思った♪」
 至極ご機嫌のアレンは微笑んでそう言った。
 これは褒め言葉・・・だよね?
 でも、私には何がなんだかわかんなかった。

「ねぇアレン、何したの?」
 アレンは笑顔のまま、手元に持ってた鏡をそのまま見せてくれた。

、とっても似合ってますよ」
 そう聞こえ、そして視界は私を見つめた。・・・いや、私の頭上だった。

「なっ・・・な!?」

 頭の上に、カチューシャが乗っている。
 ただのカチューシャなら良いけど、その上には動物の耳だってついていた。

「バニーガールみたいですねー♪」
「・・・アレン、なに?これ」
「ラビの部屋にあったんですよ」

 可愛いですね〜なんてほんわかした表情で見られてるところ・・・悪いけど。
 何から突っ込んでいいんだろ?
 ラビの部屋にうさ耳があったこと?それとも持ってきたアレン?それとも被せたこと?
 
 頭の上のうさ耳がズルッと滑って落ちた。

 親切にも乗せてくれたアレンに向かって、唯一のツッコミ。

「な、なんでうさぎ?」
 一番適切でないツッコミだとは思うけど、それ以外に言い様がなかった。
 だけどアレンは返してくれる。
は犬耳かうさぎだと思ったんですけど、赤眼だから」
「えぇっ!?選択肢があったの!?」

 ら、ラビ!?なんで耳ばっか持ってんの!?・・・じゃなくて。

「可愛いですよ?」
 なんて覗き込まれると、ますます恥ずかしくなってしまう・・・。

「ねぇ、外したい」
「それは無理です♪」
 即答ですか・・・

 談話室で、たくさんの人間と一匹のうさぎ。

 たくさんの注目を浴びてしまってた私は、心の中で涙を流した。


 もう絶対アレンの前で目は瞑らない!!








「アレン、取っちゃダメなら部屋に戻ってもいい?」
 ってゆーか部屋に入っちゃえばこっちのもんよ。
 アレンの視線だってないし、本でも読んで時間を潰すわ。
 返答を待ってたら、アレンが笑顔を見せた。
「そうですね、じゃあ僕の部屋にどうぞ♪」
「・・・へ?いや、自分の部屋に・・・」
「うさぎは孤独だと死んじゃうんですよ?僕が居てあげます」

 ・・・本気で言ってんの?
 もちろん違うことくらい解ってた。
 アレンの笑顔がとても嫌だ・・・って直感で思えたんだもん。

「さ、行きましょう!」
「えっ!や、やっぱ談話室で」
「遠慮しないで、さぁ!」
「へっ!?ちょっ、やだ〜〜〜!!!」

 腕を掴まれ、じたばたしてももう遅かった・・・

 ズルズルと連れて行かれた私を見ていた同じエクソシストたちは、何を思ったんだろう(涙)