「ジェリーさんっ!!ケーキ作ってくださいっ♪」

 そういうと、おたまを持ったジェリーさんは肯定の返事をしてガッツポーズを見せてくれる。
ちゃんのために腕を振るっちゃうわよ〜っ!」
 そう言ってくれるジェリーさんに飛びっきりの笑顔を見せ、私は食堂を出て行った。





Cherish ――― Italian holiday






「アレン〜〜〜アレンアレンアレーン!!!」

 甲高い声を響かせて、私は叫び続けた。
 随分遠くの、豆粒ほどにしか見えない姿もこれには気付いたみたい。
 クルッと振り向いたのが解った、速度を上げて、そのまま・・・

「ほぁちゃあっ!!!」
「ぐはぁぁっ!!!」


 ・・・飛び蹴りを食らわせてやった。
 あ、壁に激突しちゃった。痛そうだけど、生きてるよね?

 追い討ちをかけるように倒れたアレンの上に乗っかって、あくまで笑顔で訊いてみた。
「アレン、このあと暇?」
「・・・・・・とりあえず退けてくださいよ・・・」
「だ〜めっ!」
 仰向けで口から少し血のようなものを見せて、アレンは怯えた表情を見せた。
 普通の笑顔だったんだけど、アレンには『断ろうもんなら鎌で首チョンボやでぇっ!!』って思えたらしく。
 下敷きになったまま、素直に首を縦に振ってくれた。
 そこで、ようやく退ける私もちょっと悪どいかな。

 ゲホッと血を吐き出し、ようやくアレンが立ち上がることが出来た。
「それで、何するんですか?」

 きょとんとしてそれを訊いてくるか。
 まぁ、アレンは違うから仕方ないのかな。
 でも少し悔しいから捻くれた答えを返してやった。
「まぁまぁ。一緒にケーキでも食べましょうよ!」
「え、ケーキ?」
 良いですけど、と言ったアレンはちょっと嬉しそう。


「それにしても、みんな忙しいのよね」
「え?」
「だってリナリーちゃんはコムイさんの手伝いで忙しいし、ラビは見つかんないし。
 神田は任務で居ないし、他の人はあんま仲良くないし・・・アレンだけなの!!」
 だから見つかってよかった!!


 なんか照れた表情をしたアレンだけど、今度は笑顔を持ってきた。
「じゃあ、一緒に食べましょう」
「本当!?やったぁ!!」
「それでケーキは何処ですか?」
「ケーキはねぇ、」
 “食堂でジェリーさんに作ってもらった”と言う言葉は、他の言葉で遮られた。



「オレも食う〜!!」
「「・・・はっ??」」



 さて、誰の声でしょう。
 “A.リナリーちゃん”  “B.コムイさん”
 正解は呆然としたアレンの口から出された。

「ラビ、いつからそこにいたんですか?」

 正解は隠れ項目である“C.ラビ”だった。
 ラビは廊下の壁についてる大きなランプの上にしゃがみ込んでいた。
 さすがラビ、壊すことなく乗ってるわ。



、オレも食う!」
「そう?やったぁっ!!」
 アレンほどいつからいたのか気にしてなかった私は素直に喜んだ。
 だっていつものことじゃない。いつの間にかいることなんてさ。

 3人かぁ。でも、3人もいる!

、どうしたんです?」
「何笑ってんだー?」

 気付けば、アレンとラビが不思議そうに見てた。
 敢えて何も言わなかったけどね。





 ジェリーさんから受け取ったケーキは予想以上の大きさだった。
 それでもやっぱり嬉しいものよね。
 人数分以上のお皿とフォークを借り、向かったのは私の部屋。

「さて、皆さんの手に渡りましたね?」
 飲み物を渡されたラビがぼやく。
「皆さんって、2人しか居ないさ」
「いいの!雰囲気なの!」

 全く、ラビは解ってないんだから。
 アレンは解ってるから何も言わないんだよね〜・・・あれ?引きつった笑いを見せてない?大丈夫?


 さて、と2人を静止させる。


「ラビ、アレン。今日は何の日でしょう?」
「「今日?」」

 アレンとラビが考えてる・・・相談までして。
 そして、2人の出した答えが。

「・・・の誕生日?」
「お、おめでとうございます。」





 しばしの間があった。





「んなわけあるかぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!」
 私の誕生日はまだ先な気がするし!!!!
 思いっきり叫んでやると、彼らなりに驚いたみたい。

 はぁ〜・・・ケーキを一口ほおばった。

「6月2日・・・というか、今日はイタリア創設記念日なんだ!」
「「・・・はぁ?」」

 いや〜、実は私も知ったの昨日なんだけどね。
 知ったっていうか、記憶を失くしてる所為かな?忘れてたんだよね。
 リーバーさんに教えてもらったんだよねー。
 やっぱ(これでも)イタリア人なんだから、イタリア共和国創設記念日に祝わなきゃね。

 でも、国籍が違うアレンとラビがきょとんとする気持ちもわかる。
 まぁそんなこと後々わかったんだけどね。

「てなわけで、お祝いしましょー!!」




 2人は目を見合わせて、
『なぁアレン、酔ってる?』
『いや、シラフだと思いますが、どうします?』
『どうするってなぁ・・・オレらイタリア人じゃねぇし』
『でもが悲しみますっていうか、鎌で首チョンボの刑に処されると思いますよ』
『・・・よし、のためさ』
『・・・そうですね。(怖いんだ、この人)
 なんて会話をアイコンタクトだけで行ったみたい。私は知らなかったけど。

 こうして、イタリアの創設記念日を私たちは楽しんだ。
 ・・・と言っても、ケーキを食べながら他愛ない話をしただけなんだけど。


 因みに、それでもまだ残ったケーキはリナリーちゃんたちに配ったんだ。

 とっても楽しい記念日だった!多分一番ねっ!!