あ、そうだった。
忘れてたや・・・あまりに今が楽しくて。
もうそんなに経ったんだね。
食堂に行くと、もう大分賑わいを見せていた。
「・・・嘘」
ジェリーさんに頼んじゃったけど、取り消しはもう効かないよね。
ざわざわと賑わってる食堂は、もう座るところがなさそう。
生憎知ってる人が居ないし・・・前言撤回。
一人、居た。
だけど、居たのは出来ればお世話になりたくないやつだった。
「ちゃんお待たせしたわよ〜〜っ♪」
「あ、有難うございます・・・」
ジェリーさんから美味しいご飯を受け取る。
・・・もう選択肢がないみたい。
私は意を決して向かった。
「・・・此処、良い?」
ドキドキと鼓動を早まらせながら言うと、お世話になりたくないやつ・・・神田は顔を上げた。
・・・ってゆーか、この人今日も天ぷら?
たまにご飯食べてるところを見るけど、大抵天ぷらか蕎麦しか食べてないような・・・って、それは良いや。
「別に」
ボソッと言うと、再び食事に目を向けた。
・・・うーん、これは良いのかな?
まぁ座るところもないし・・・座っちゃえ!!
私は思い切って神田の前に座った。
・・・それにしても、座ってからまだ何分も経ってないのに、大分人が減ったなぁ。
ちっ、待っとけばよかった。
なんて本気で思うんだから、私も相当神田の傍が居辛いみたい。
なんだろう、神田って近寄りがたいというか、怖いんだよね。
だから初めて会ったときから私はこの人に笑いかけることはない。・・・ほら、今だって。
私はパスタを、神田は天ぷらをただ黙って食べてるしね。
「・・・チビ」
「へっ!?」
何々今呼んだ?!・・・ってゆーかその呼び方止めて欲しいなぁ。アレンの気持ちが解る気がする。
「お前、俺のことが」
そこまで聴こえたけど、それ以上は解らなかった。
「っ!!!」
「わうっ!」
ギューッと抱き締められたと思ったら、バシャッと上から何かがかかった。
・・・麺?
「ユウと食ってんのかー?オレも混ぜて!」
「・・・ラビ、もっとまともな登場は出来ないの?」
抱きついてきた拍子にお盆を投げたのかな・・・じゃないと私の頭に熱〜いラーメンがかかることはないし。
「お?わりィな、!」
「別に良いけど・・・」
豪快という言葉が、コレほどまでに似合う人は居ないよね。
あーあ、それよりも熱いしビショビショだし・・・最低、ラーメンのヤツ。・・・あ、ラビだ。
お風呂に入ろうと思い、席を立とうとしたんだけど。
ガタッと音を立てて先に立ち上がったのは神田のほうだった。
「じゃあな、チビ」
「・・・うん・・・」
そういえば、神田ってさっき何か言いかけなかった?
いや、なんなのか訊けないけど。だって怖いもん、あの目力。
何だったんだろう?「俺の事が」・・・好きなのか?とか?まさかね。
自分で考えて軽く笑ってしまった。
あ゛!!今神田のヤツ、またチビって言った!?まあいいけど。
「ラビ、ラーメンぶちまけちゃったけどご飯は良いの?」
「んー?またあとでと食べるさ」
「本当?じゃーいいやっ!」
実はあんまりパスタ食べれてなかったのよ。
半分でラーメンまみれになったんだから。・・・あ、奢ってもらおうかなーラビに。
とにかく食堂の後片付けはジェリーさんたちに任せて、私は何故かラビと大浴場に向かった。
「じゃ、入ってくるから」
「おーいってらっしゃい」
・・・なんで着いてくるんだろう。
別にラビにラーメンはかかってなかったんだから、不思議極まりないんだけど。まぁいっか。
とにかく麺の気持ち悪さと決別するために、私は即行で浴場へと向かった。
「あちゃ、誰もいない。」
そりゃそうよね。
まだお昼だし、こんな時間に入る方がどうかしてるかもしれない。
だけどお湯は常に温いのよねー・・・不思議。
思いっきり身体から麺を落とし、綺麗に洗って湯船に浸かった。
「・・・あ、そういえば今日コムイさんのところに向かわなきゃ」
月に一回、コムイさんの元に向かう約束をしてるんだ。
でも忘れるくらい毎日が楽しいのよね。
・・・うーん、忘れないようにしなくちゃね。
30分ほど、湯船に浸かって考えてしまった。
これからコムイさんに話さないといけないことを、必死で思い出してたんだよね。
ようやく出てきた私は、忠犬のようにずっと浴場前でラビが待っていたのに驚いてしまった。